00 はじまり「二人の巡査と不自然なもの達」
人は何で作られているのか?
それを知った時、知った者はどうなるのか?
『人』と『もの』の違いとは何か?
考えてみると、妄想は膨らみます。そんな妄想の産物がコレ。
警告、警告である。
私はこの日記が読まれていることをただ願う。
これは、人類に対しての警告である――
奥多摩にある山。
有名でもなく、無名でもない―いや名前も無いのだろうか?―山。
別に私達にとってそれは単なる山であり、風景の一部。
ただ目に入るだけのものであった。
そしてそこには研究施設があるだけである。
それも、私達にとって、関係のない者にとって風景の一部にしかすぎない気に留めないもの。
「ここですかね?」
「間違いないだろうよっ・・・と、おいそこ段差あるから気を付けろ」
「あ、はい」
駐在所の先輩と一緒に私はその研究施設へと足を運んでいた。
その理由とは、駐在所近くに居を構える家族の奥方の言葉からだ。
旦那さんは例の研究施設に勤めており、その旦那と連絡がとれなくなった・・・と。
仕事がいそがしいのではないか?と私は言ったが、どうやらその研究施設とも連絡が取れないようであった。
試しに私も電話してみた。
確かに繋がらない
丁度、見回りから帰ってきた先輩に相談すると、うむ、と頷き今度私達が出向いてみると言い奥方に帰ってもらった。
先輩は言う。これも地域の付き合いだ。
翌日、私と先輩は研究施設へと向かうのであった。
「なんだ?こんなところに木が・・・」
先輩が足を止めた。
そこには木があった。
別に山の中に木があって問題があるわけでもない。
しかし、その立っている場所に問題があった。
私達が通っている場所は研究施設へと向かう舗装された道である。
車は通れない道幅―だから私達は徒歩なのだが―だが、アスファルトで道は固められている。
そんな道のど真ん中にその木は立っていた。
「おかしいですね。この木・・・結構年数経ってますし、ずっとここにあったのでしょうか?」
「馬鹿言え、普通は排除するだろ」
「しかし、実際にあるのですから――」
う〜む、と私達は唸る。
「とりあえず避けて通るぞ。着いて来い」
「はい」
先に進む先輩を追いかける。
そう時間を取らず、私達は目的の研究施設を目視するとこまで来た。丁度、見下ろせる場所だ。
そこで私達は見た。
「おいおい、嘘だろ・・・」
「木が・・・」
木が立っていた。
研究施設の屋根を破り、そこに存在していた。
その数は2本。
「どうももとからあった感じではなさそうですよ。先輩、ここに落ちている白い破片、多分屋根の破片です。それにほら、いたるところに同じようなものが」
「どういうこったい。なんでこんなところまで飛んできているんだよ。ここから研究施設までまだ離れてんだぞ?」
「かなりの勢いで突き破ったかと・・・」
「木が急成長したってか?いったい何の研究をしているんだよ」
「たしか、量子工学・・・でしたっけね?私は疎くてわからないのですが」
「ちっ、とりあえず行くぞ。中に人が居るかもしれん」
だが、人は居なかった。
電気は通っているらしく、入り口から入ると、明るいロビーが見ることができる。
そして――
「この岩は・・・」
そのロビーの中央、そこには大きさは私と同じくらい大きさがある岩があった。
「置物としては不自然ですね」
「あぁ、それに何か気味が悪い。まるで人の形をしている。見ろよ・・・外へ出ようと急いで走ったように俺は見える」
「先輩こっちにも岩が!?」
私は奥に向かっていると、同じような岩を発見した。さっきのよりは少し大きめである。
そしてこの岩もまたどこか人を感じさせる形である。
「なんなんだ、この場所は・・・」
怖い、と先輩はつぶやく。それは私も同じだった。
まるで自分の立つ地面がいきなり無くなった感触である。
「とりあえず、木があった場所に行こう」
「は、はい!」
場所はすぐにわかった。
その方向にはひとつの扉があったからだ。しかも開かれたままである。
先輩は顔だけ中に入ると、確認。ついてこい、と私に言う。
部屋に入ると、そこには2本の木と1つの岩があった。
「なんて光景だよ・・・インテリとしては最悪だ」
部屋の半分は木で埋まり、突き破ったであろう天井の破片がそこら中に散らばっていた。
気味が悪い、先輩はまた呟く。
困惑。
帰りたい。誰かと居たい。そんな気持ち。
「と、とりあえず帰るぞ!人が居なければ何もわからん。本庁に連絡を入れるんだ!」
先輩は私の返事を待たず、きびす返した。
「ま、待ってください!」
急ぐ、急ぐ――足は次第に速くなっていた。
そして外まで出た。
ふぅ、と息を吐いたのは私だろうか?それとも先輩だろうか・・・。
道中で見た1本の木、施設内にあった2本の木と3つの岩。
不自然なものが6つ。
それらはごく普通のものだ。
ごく普通にそこにあるものだった。
でも、何故そこにあったか私にはわからない。
いったいここで何があったのだろうか?
「先輩・・・」
「まずは降りよう、それからだ」
そう言うと、私たちは前を見た。
そこには人が居た。
丁度、その人も私達の気配に気付き顔を上げた。
少し痩せこけ、疲れている顔の男。
そして男は私達を見て、声を出した。
「あっ―――」
ついうっかりやってしまったような情けない声。
しかし、それを私達は聞いていたのかわからない。
何故なら、そこには1人の男と2本の木だけしかなかったのだから―――
今後の展開として、量子力学を勉強してる人にとったら「そりゃね〜よ」っていう内容になる・・・ならない?
自分でもわからない。