その11。
年末が近くなった小春日和の午後、僕は課長にミーティング・ルームに呼ばれた。
何か失敗をしただろうかと思いながら部屋に入ると、課長は言った。
「これ、見てくれる」
課長は、モニター画面を指し示した。
モニターには、受付ロボの監視画面の映像が映っていた。
我が社の受付には、人ではなく受付ロボットが設置されている。来社した人はそのロボの案内を受ける。
「今日の午後一時過ぎの映像なんだけど」
画面はロボの目から見た訪問者の姿である。少々ぽっちゃりした若い女性が映っている。襟が大きなピンクベージュのコートを着て、茶色の髪を肩の上でクルンとさせていた。
僕は、その女性に見覚えがなかった。
女性は、ロボのカメラにスマートフォンの画面を差し出し見せた。
「この、Fー90713Aの担当者さんと面会お願いします」
「え……」
僕はまさかと思った。
モニターからロボの声が聞こえる。
「担当者の部署と名前をフルネームでお願いします」
「えっと……、名前はわからないんですけど」
「お約束はしていますか」
「はい」
「では、担当者の部署と名前をフルネームでお願いします」
「……」
しばらくすると警備員が現れ彼女を連れ去り、映像は終わった。
「ロボが登録されているブラックリストと照合して総務に緊急連絡してきたらしい」
「……ルカ、ですか」
課長は頷いた。
僕はルカの顔を思い出そうとしたが、たった一度か二度、身分証明書の写真を見たくらいで覚えているはずがなかった。
「え、警察に捕まったんじゃなかったんですか」
「起訴猶予だったらしいよ。またやったらアウトだろうけどね」
「で、この後、彼女は」
「警備員さんが、社員との面会には事前にアポイントを取ってから来てください、と追い返したそうだけど、もしかしたら、そっちにメールとか来るかもしれない」
「そんな、どうしたらいいんですか」
「まあ、マニュアル通りに断ればいいよ。一応、何かあったらこっちにも報告して」
「わかりました」
ルカが僕に会いに来たということらしい。何のために。




