第4話 可能性?運?
体育館に着くと、2組と思われる3グループと女教員が待っていた。
女教員が死に物狂いな様子と、長谷川先生がウキウキな様子を見ると、このプチ団体戦
は 先生からしては、かなり重要な物なのだろう。……まさか、給料に関することだった
ら……嫌、ないないよりにもよって先生が……ありえなくもないから怖いんだよな、この
学校。
「お待たせしました!2組のみんな!では、只今より実力テスト兼タイムアタック制団体
戦を始める!中学で学んだ知識と自主的に研究したであろう立回りを大いに披露してく
れ!では、今からクラス内で先鋒,中堅,大将を決めてくれ。て、いってもやることは変
わらないんだけどな。じゃあ、10分で決めてくれ。」
中学で習ったことが正しいのなら、狩人高校の生徒が実力を示す方法は2つある。
1つは、さっきから先生が口にしている、タイムアタック制。
タイムアタック制は、最先端AIと、変幻自在のスライムを融合させた日本が誇るロボ
ット『鳩-Hato-』がゼロの容姿になり、より完璧に近いゼロの動きをAIが判断し動く、
鳩は一定の負傷となるダメージを与えると元の容姿になる。鳩は、スライムからできてい
るため破壊不可能らしい。
この破壊時間を競うものだ。団体戦の場合、このタイムを合計し競う。
そしてもう一つは、入試試験にしたものと似ている対人制だ。
対人制は、1対1で半径20メートルの円状の会場で先に武器を当てたものが勝ちにな
る。
しかし、ゼロすら貫通するB-NR武器を本体に当てたらシャレにならないので初撃のみ
B-NRによる攻撃を防げる見た目や重さがほとんど軍ふk……制服のような服を着る。そ
の服は、初撃を受けてしまうと色を大きく変えてしまう。これで、審判が判断し勝敗を決
める。なぜこのような便利な服があるのかというと、狩人同士での誤切を防ぐためらしい。
なぜ、初撃だけなのかは……技術的問題らしい。ちなみに、ゼロ対策アーマも作ろうと
はしたらしいが1つ作るのに5つくらいの国を買えるくらいの経費がかかるため不可能ら
しい。
話戻って、俺たちのクラスは現在ぎこちない状況になっている。
先鋒は、佐々木グループと嶺岸というガタイのいい人グループがいくことにすんなり決
まったのだが、今は大将の譲り合いになっている。まあ、当然だな。真ん中と、最後では
プレッシャーが全くというほど違うから。
俺は、どっちでもいいのだが時雨が耐えれそうにないんだよな。
そんな時、先生は急かすように残り2分と告げた。
「なぁ、五十嵐。お前、実力的に大将一択だろ?なんで行かないんだよ。見たぜ、お前の
試験当日。あれは、天才がなせる技だったぜ?なあ!頼むよ!」
周りは、大して驚いてはいないのだが……なるほど。佐々木と同じように試験会場にい
たやつがあの奇跡の口伝え。つまり、噂にして大体が知っているわけか。あれは、たまた
まなんだが……でも。
ん?……願の200万って無駄なんじゃ……もったいなっ!て、そんな場合じゃないな。
「佐々木は、相変わらずアツイな。」
これは、時雨を説得するしかないな。
「なあ、時雨。緊張してしまってミスしてしまうなら、俺が全力でカバーする。お前に恥
なんか絶対にかかせない。俺に、全部を任せてもらっていい。俺と一緒に大将をしてくれ
ないか?」
なんか、パーティーのダンスを誘う時とかで言いそうな言葉だな……これ。
時雨は、みんなが見ている前で一生懸命自分の意思を言葉にしてくれた。
「う、うん。私……足引っ張るかもし、しれないけどが、がんばりゅ!うぅ……また噛ん
じゃった。」
なんだ、この可愛い生き物は……いかんいかん。
「ああ、任せてくれ。無理させてすまない。あと、ありがとう。」
後ろから、自分よりも優しく接していることを憎んでいる視線を感じるが、無視してお
こう。
「作戦会議終了~!じゃあ、先鋒の生徒以外は上の観客席に移動してくれ!」
そういや、鳩を見るのは何気に初めてだな。楽しみだ。
「ねえ!勇輝くん!なんで、霞ちゃんには優しいの?もしかして、五十嵐くんあんな感じ
なのが好みなの?」
幼女は機嫌を損なっている。
「俺は、パートナーには厳しいだけだ。むしろ、願には優しく接している方だぞ。」
自信満々に言うと結構恥ずかしいものだな。
「う~ん?それは、パパと同じようにちゃんとした大人……じゃなくて、武器になってほ
しいから?だったら、五十嵐くん……私を家族同然で接している。てこと!!」
多分この幼女が顔を赤らめているのは恋愛の方の意味の家族だからだろう。ただ、俺か
ら見ればピーマンを食べられないわがままな娘か妹だ。
「あ、うんそうだよ。よくわかったな。まぁ、俺から見ればお前はわがままな兄妹のよう
なもんだなw」
幼女はかなりお怒りだ。これ以上はやめておこう。
さてさて、鳩が出てきt……名前通りじゃねぇか。
出てきたのは、2体の見た目が完全に鳩のロボットだ。これが、ゼロへと姿を変えると
は……はっきり言って想像できない。
「先鋒 前へ!」
先生の声も鳩ロボの見た目せいで緊張感が出てこない。
「では……始めっ!」
先生の声と同時に、鳩は黒い獣へと変化した。
1組の先鋒の前には、頭に角が2本生えている黒い獣。2組には、尻尾が多数ある黒い
獣が現れた。
[豆知識3]
ゼロにはバランス,俊敏,豪腕,体力の4つのタイプがある。
そして、見分ける方法は角と尻尾に関係する。
バランスは、1本の角 1本の尻尾
俊敏は、角なし 尻尾なし
豪腕は、角2本 1本の尻尾
体力は、角がなく 多数の尻尾
そして、特徴がタイプによって大きく変わる。
バランスタイプは、名前通り素早さ,腕力,体力が全て劣らず尖らずバランス的。
豪腕タイプは、自慢の腕力を、最大限に使い岩などを豪速球で投げ気絶させた後に噛む
又は、地面を叩き揺らすなどし、ふらつかせたところを掴み噛む。しかし、足は遅い。
俊敏タイプは、素早い動きで噛みつきに来る。しかし、体力が非常に低いので相当なこ
とがない限り、どんな武器でも一撃で討伐可能だ。
体力タイプは、バランスタイプより素早さも腕力も劣っているが飛び抜けて体力がある。
体力タイプを、瞬殺するのは至難の技だ。
つまり、1組の先鋒には豪腕タイプ。2組には体力タイプ。圧倒的に有利だ。これは、
運がいい。
さてと、疑問だったが佐々木は太刀使いなのか……違和感がなさすぎてなんとも言いえ
んな。
で、もう片方は、嶺岸だったか。嶺岸は、大剣使い。こちらもこちらで、ガタイの良さ
と大剣が見事にマッチしている。
しかも、チームワークも良く大剣は必ず遅い動きになってしまうが、そこをデメリット
とさせないかのように太刀が気を惹き位置調節し、そこを大剣が叩き討伐完了。結局、ゼ
ロはほとんど何もできず鳩に戻った。タイム掲示板に示されていたのは22秒。
「何が、大将一択だよ。お前たちの方が、チームワークで勝っているよ。」
佐々木は、こちらにグッジョブサインを出していた。
なるほど、チームワークには自信があったから”実力的”なんて言葉を使っていたのか。
一本取られたな。
2組は、佐々木たちが倒した40秒後にゼロを鳩に戻した。
これは……勝てるかな?いかんいかん、こんなこと言ったら絶対に次のグループか俺が
やらかす。
「中堅の生徒は、観客席から降りてきなさい。」
こっちの、中堅は見た目そんなに強くない女子組だけど……大丈夫なのだろうか。
そして、1,2組の中堅が体育館に降りて、準備を完了させた。
「では……中堅。始め!」
1組では、俊敏タイプ。2組では、体力タイプ。これはまた運がいい……と思われてい
たのだが。
想定外のことに、俊敏タイプの速さについていけず、噛まれてしまったのだ。
噛まれた時のタイムは120秒らしく、2組は55秒かかり討伐したため1組は142秒で
2組は117秒。絶望的だ。2組に勝つためには25秒も何タイプが出ても討伐しなくては
いけない。女子組はみんなに泣きながら頭を下げて帰ってきた。
再び運が良く相手が体力タイプを引けば勝機はあるのだが、3連続では単純計算1/48
まあ、ないだろう。つまり、勝機はないに等しい上自分たちが体力タイプを引いてしま
うこともあるだろう。
「では、最後。大将!降りてきなさい!」
どうにせよ、全力でするしかないか!それに、これで負けたら女子が責められそうだ。
「ねえ、勇輝くん。なんとしても勝って!あの子たち話したことはほとんどないけどでも、
あのままなのはかわいそうだよ!」
願は、勝つことよりもあの女子を助けることのが、大事らしい。この幼女は見た目より
大人なのだと本心で思った。
「もとより、全力でする予定だ。まあ、勝てるかは知らん。」
願は、耳が下に行き、今にも泣きそうになっていた。
「わかった!絶対勝つから泣かないでくれ!」
てか、こいつの感情と耳は比例しているのかよ!
勝つと約束を聞き安心した幼女は薙刀へと変化した。
隣には、準備万端の時雨がいた。なんというか、違和感の塊だな。主に、斧
「では、大将戦。始め!」
よし、運がいい!体力タイプではない。隣も、俊敏タイプ……これは、隣がグダること
を願って討伐するしかないな。
願の、リーチと属性が死んでいるのはわかっている。なら、工夫するしかないだろ。
俺は、薙刀を槍のように構えた。
「(まあ、運試しになるが奴が動く前に当てる)」
俺は、ゼロの心臓めがけ光速で突進した。
「(運に頼るのはどうかと思うが……当たれ!)」
俺は、完全に貫いた自信がある。
その後、後ろの大きな獣が出している影がだんだんと、小さくなった。
「(討伐は、なんとかできた。問題は、タイムだ。)」
タイム掲示板に示されたタイムは、口を開けさせるものだった。
{タイム 2秒}
いやいやいや、自分が叩き出した本当のタイムだとしても頭おかしい。いや、事実なの
だとしても認められないものがあるぞ。
1組の全員。いや、隣にいる4人以外はみんな口を開け驚いていただろう。勝ったのは
いいんだけど……どうやったらこんなタイム出せたの?
狩人高校最速記録でも10秒切ってなかったぞ?
この日、俺は狩人高校に歴史を刻んでしまった。無意識でこうなったのが大変悔しいの
は黙っておこう。
そして、こんな思考を無理やり動かしている間に、隣のゼロは討伐された。タイムは、
31秒。
はい、そうです。隣がグダッては、決していないのに勝てちゃいました。
俺は、この現実を無理やりなんとか受け止め、全員集合をまった。
「はい!まぁ~…………普通にすごい奇跡が起こり、1組が勝ちました。午前の授業兼テ
ストは終了!昼飯!きちんと食うんだぞ!では、解散!」
先生、プチ団体戦が本当はテストだったの隠せてないよ。
「五十嵐!それと、願!ちょっと残ってくれ!」
そりゃ呼ばれるわな……怒られるはないだろうけど、ちょっと怖い。
全員が体育館を出たことを確認した先生は、会話を始めた。
「えーと、五十嵐……あれは、狙っているのか?確か、試験当日も確か瞬殺だったらしい
じゃないか。」
普通そう見えるだろうな。返す言葉もないな、これに関しては。
「信じ難いとは思われますが、偶然なんです。まさか、初めて実戦で願を使い特別得意で
もない薙刀であんなことが起こるなんて……正直、自分自身が一番驚いています。」
どうやら、先生は信用してくれたらしい。そんな様子をしている。
「そうか……これからも、その……見えない才能に磨きをかけてくれ。」
ありがとう。先生、信じてくれて。あんたには感謝しても感謝しきれないよ。
「これからも、精進いたします。」
「あと、願。お前のワイロ入学は知っている。が、いいパートナーを持ったな。」
願は、半分安心した表情で自信満々に返事した。
「はい、今はまだ仮ですけど、本当にいいパートナーを見つけました!」
そして、さっきの比例説は本物らしい。その証拠に、耳(以下略)が、かなり上に向い
ている。
「(お前の、耳は犬の尻尾と同じか!)」
こんなツッコミになるのも今なら仕方ない気がした。
「話は、以上だ。呼び止めて悪かったな。」
さて、教室に戻り昼飯にするとしよう。ゆっくり食べられることを願う。




