第3話 タイムアタック
朝。目がさめると、俺は体全体に重い重量感と、全方位からの殺意を感じた。
「エサ……やるの忘れてたな……ちょ、ちょっと待っt……」
俺は、現パートナーズ願を除く。武器になるペット、略してBP(バトルポイントではな
い)に、数十秒の間、袋叩きにされた。
その後、自分の負傷した場所を応急処置し、それぞれに伸ばしたいステータス(栄養分)を主にし
た料理をBPに一匹一匹に食べさせた。
そして、俺は幼女が起きていないことに気づき、起こしに行くことにした。
「昨日、散々ぴょこぴょこさせていた耳を鷲掴みにして起こすか。それが、
一番犯罪に遠のく起こし方だろう?」
そんな、悪意に満ちた独り言を言いながら願の部屋に入った。
予想とは背き、いや、当たり前か。願の耳はなく、枕に耳のなる明るい太陽色の髪が広
がっていた。女の子の髪は、女の子の中では命みたいなもんだ。と、聞いたことがある……
いくら幼女(高校生)でも、髪はさすがに大切か。
願は、寝相はよく綺麗に寝ていr……?
「すぅ……すぅ……」
「(あまりにも、呼吸のリズムが一定すぎる。起きているな。これ……いじるか♪)」
さて、どういじるか。見た目はさて置き、中身は高校生なんだよなぁ。女子高校生……
自撮り………写真……思いついた。
考えをまとめると、俺はポケットから携帯端末を取り出し、カメラアプリを起動し、寝
ている(仮)願の寝顔にカメラを向けシャッター音を鳴らせた。
すると、幼女は即座にベッドから出て来た。
「なんで、写真撮ったの!(怒)」
「いや~将来モテるだろうから、その時の相手に対しての天使にでもなろうかと(棒)」
さすがの幼女でも、嘘は見抜けるらしく少しプンスカした顔で問いかけて来た。
「で、本当はなんのために撮ったのかな?勇輝くん?」
もう、ごまかしはきかないだろう。お手上げだ。
「ピーマン食べない時の脅し道具に使うのと、狸寝入りのパートナーを起こすためにと
……」
「そこまでしなくても、あんなに美味しい料理を作ってくれるような人の料理なら苦手な
ものでも食べるよ!」
「ほう、言ったな?言ったぞ?」
あと、地味に性別が逆ならば、ドラマにでも出そうな発言をサラッというなよ。
「さてと、さっきは撮って悪かったよ(消すとは言っていない)。さぁ、朝飯できてるぞ。」
BPのエサと一緒に、幼女の分の飯と昼の弁当も用意しておいた。
朝は、卵とレタスとハムときゅうりをサンドした、サンドイッチだ。あと、牛乳。
幼女が、牛乳が飲めることにホッとした自分に、その感覚は10年くらい早いだろうと、
自分に盛大なツッコミをしながら朝食を済ませた。
そして、さすがに2日目に遅刻はしないように急いで着替え、学校へと向かった。
学校に着くと、クラスメートのちょうど半分。つまり、6人が先に学校に来ていた。
さてと、男女混合のペアは……そりゃ、普通いませんよねぇ。
人間同士の狩人と武器の場合、動物をパートナーにしている場合と違って、会話ができ
る。
そのため、同性と組んだ方が一部を除いて多い。その、一部の例が恋人,夫婦,親友。
てな訳で、2/3が恋愛関係なので……まぁ、勘違いするなという方が難しい。だが、6人
中6人に注目されるのは……非常に気まずい。
そんなことを気にしない幼女は、のんきに俺に問いかけて来た。
「ねぇねぇ、勇輝くん。なんでこんなに、注目されているの?」
この幼女は、天然を超えてアホだな。
「え~とですね、願さん?パートナーにするのは普通、同性なわけでしてね?」
どうやら幼女は、今の解説で何も理解してないらしい。
「勇輝くん?なんで敬語なの?いつもは、タメ語口調なのに?」
もう、このアホをなんとかしてくれ、さっきから”勇輝くん”に反応している6人さん。
俺は諦めて、席に着いた。
すると、いかにも元野球少年じみた男子がこちらへ向かって来た。
「なぁ、五十嵐……だっけ。お前ら付き合ってたの?あ、俺は佐々木。で、こっちが俺の
パートナーの芽城。」
芽城と呼ばれた高身長の男はこちらに会釈をした。
やっぱ、きかれますよね。
「えっと、俺は動物と組んでいるんだけど、授業ではいけないと聞いて、願と組むことに
なったからから……恋人でもなんでもないよ。」
佐々木は、理解が良いのと人への信頼感は強いタイプらしく、俺の事情を即座に理解し
てくれた。
「なんだ、そうゆうことだったのか。色々、勘違いしていて悪かったな。お前とならうま
くやっていけそうだ。3年間よろしくな!」
佐々木は、大きな手を差し出して来た。俺は、その手を握った。
「あぁ、こちらこそよろしく頼む。佐々木!」
「私からも、よろしくお願いいたします。」
と、芽城が隣から手を差し出して来た。イメージにはしてはいたがイケボじゃねぇか。
「あぁ、よろしく。芽城!」
彼らも自分の席に着き、なぜかはわからないが精神統一をしていた。すごい絵だなw
願も、願でクラスの女子に囲まれていた。
「(頼むから、変な噂が出ないようにしてくれよ。神様。)」
そんな神頼みをし、俺は、今晩の飯のレシピを考えていた。
俺が、レシピを考え終える頃には、クラスメート全員が揃いホームルームが始められる
ような状態になっていた。
まぁ、変な噂がちょこちょこ流れていたのは、気にしたら負けなのだろう。
ドア越しに長谷川先生らしき影が現れ、ドアを開けた。
「おっはよ~う!席につけ。ホームルーム始めっぞ……いうまでもなく、みんな座ってる
んだな。意識が高くてよろしい!」
確かに、全員席に着いているのは意識が高いと思う。
「今日のホームルームは出席確認は……するまでもなく全員揃っているな。じゃあ、授業
は狩人と武器を一組として二組で一つのグループとして合計3つのグループに分かれてく
れ。これは、実践に近づけた授業をするためだ。慎重に組んでくれよ。制限時間は7分。
よろしく!」
その言葉を聞いた生徒たちは、それぞれ仲の良いもの同士?で組んでいった。
「(しまった。昨日、即座に帰るのは失敗だったな。)」
まぁ、余りは人数上出るだろう。そこと申し訳ないが組ませてもらうことにしよう。
「なぁ、願。俺らは、余ったところと組む。でいいか?昨日のうちに、ある程度知り合っ
ておいた方が良かったのだろうが……まぁ、仕方ないだろう……!?」
願の隣には、メガネのいかにもしっかり者感を出している女子と、おどおどしているか
弱そうな女子が並んでいた。
「願さん?その、隣にいる方々はどちら様で?」
「あぁ、勇輝くんには紹介してなかったね。こっちのしっかりしているのが純恋ちゃんで、
おどおどしているのが霞ちゃん。あ、でも霞ちゃんは人見知りなだけだからいずれ普通に
なるから気にしないで。」
うん、なんとなく察しが着いたけど一応聞いておこう。
「で、えっと。どのようなご用件で?」
その言葉を待っているかのように、幼女は目をキラキラさせながら説明しだした。
「聞いて驚かないでね。なんと、この2人が組んでくれるんだって!やったね!勇輝くん!」
女てすげぇー(棒)と、本気で思ったのはいつぶりだろうか……と、いけない。
「狩人の五十嵐 勇輝だ。聞いているかもしれないが今、組む相手がいなくて困っていた
んだ。よろしく頼む二人とも!」
だめだ、情熱少年佐々木の口調にかぶっている気がするのは、気にしないでおこう。
「武器の刹那 純恋。武器種は斧。よろしく。五十嵐くん」
意外に静かなんだな。この子が武器ってことは、霞さんは狩人か……逆な気がする。し
かも、斧って……大丈夫かな?
「か……狩人のし……時雨 霞です。よろしくお願いしミャス!か、噛んじゃった……」
こっちは、気長にまともに会話できる時を待とう。うん。
あと、噛み方可愛い(確信)
7分も経たないうちに、3つのグループが出来上がっていた。
「さて、組み終わったな。一年専用体育館に10分後に集合な。あと、今日の授業は全ク
ラス合同のタイムアタックでプチ団体戦するから!まぁ、普通の学校でいう実力試験だ。
頑張れ。今日のホームルーム終了。」
「え?」
そんなのは、前日に話すものでは?と、周りを見回すと、知らなかったのは俺だけのよ
うだ。そこから考えるに、昨日のホームルーム後に連絡されていて、その時には、俺が教
室を出ていたのだろう。
「(まぁ、いいか。こんなハプニングにも対応してこそ一人前の狩人への第一歩。てもんよ。)」
正直、不安ではある。が、するしかないと決心し、一年専用体育館へ向かった。