第1話 パートナー
狩人高校入学のための修行終わりに俺は1つの疑問を相棒に問いかけた。
「なぁ、相棒」
「ん?」
相棒が話を聞けるように少し間を空けて聞いた。
「俺達は、ゼロを絶滅させるまで相棒だよな?」
俺は、心配なのだ。ゼロが絶滅すれば俺達の関係がどうなってしまうのか。
そんな心配をしていない相棒は即答だった。
「バーカ、絶滅してもずっと相棒だよ。だって、僕達親友だろ。」
その言葉を聞いて俺は心のそこから安心した。こいつは、俺が持っていた疑問はずっと
前から答えを出していたらしい。俺もこの場の空気に流され答えた。
「そうだな!ずっと一緒だ!」
この言葉は相棒と分かち合える最高の言葉だ。
「……だから……。」
相棒の様子が少し変だと感じはしたが気のせいだろうと思い、返事をした。
「ん?」
返事をした時には明らかに相棒と違う匂いがした。こんな異臭は初めてだ。
「一緒の……立場に……ナレ。」
俺は相棒のはずの相手に敵意を抱きつつ、返事をした。
「なに、言っているんだよ。冗談なんてらしく……」
俺の目の前にいたのは、相棒が散々憎んでいた黒い獣だと確信にいたった。しかし、将
来『黒い獣』を切るための相棒の姿は右手にも隣にもいない。
俺は、理解した。
俺の相棒はずっと前から”死んでいた”
目の前のこの『黒い獣』こそが、相棒だ。
せめて、親友として俺がこの手で終わらせてやろう。
お前が深夜、横で寝ている俺をゼロにしなかったのは、お前自身の唯一死んだ後の感情
だったんだろう。
「聖路!今までありがとう!そして、来世でまたお前の親友で居られることを願うよ!」
俺は、自分の左手を慣れない手つきで片手剣の半分くらいの大きさの刀に変化させ、相
棒の心臓に残りの右手でその刀を突き刺した。
この時、俺は初めて『黒い獣』つまり『ゼロ』を討伐した。
再び相棒は見覚えのある容姿に戻り、必死に言葉を振り絞り告げた
「あり……がとうは……僕の方……だよ。勇輝。必ず……ゼロを……」
これが、相棒自身の最期の言葉だった。俺はこの先、相棒が言いたかった言葉を知って
いる。ゼロを絶滅してくれだ。それを、理解した頃
相棒は、俺の手により。この世での旅を終わらせた……。
必ず、俺がゼロを必ず絶滅させる。そう俺はこの時生半可な親友と仲良く過ごすための
決心ではなく、本当にゼロを絶滅させるための決心をした。
「んっ……。」
あぁ、またこの夢だ。
俺、五十嵐 勇輝は狩人高校の試験当日に親友であり初代相棒を失った日の鮮明な夢を
見てしまった。
あの事件以来、人間と組むのを拒んでいる。
理由は簡単だ。人間はゼロに噛まれれば人間としての死を迎えるが動物ならそのような
ことは起こらない。なぜなら、ゼロは人間以外に害をなさないから。
今の『相棒たち』は、猫,犬,狼,鳥,蛇の5匹だ。幸い、母が生物学者のため飼育法
はわかる。
その中で、俺は相棒たちの調節を料理でしなければならない。
炭水化物は重量
タンパク質は会心率
ビタミンは属性値
脂質は火力
無機質はリーチ
これもまた運よく父は料理人のため調理法、栄養管理についてもわかる。
狩人という職に入るためには狩人高校に何としても入らなくてはいけない。
そんな、運命が決まる当日にあんな夢を見るなんて何かの前振れのようだ……。
気をまぎらすために、ゼロに関する生態について復習がてらまとめよう。
1つ、ゼロは人にしか害はない。噛まれてしまうと感染する。
2つ、感染した人間はゼロの姿と人の姿のどちらにでもなれる。
3つ、人間の姿のゼロに噛まれても害はない。(なぜわかるのかは知らん
4つ、B-NRにより作られた武器でないと、ゼロの肉質は通らないということ。(以下略
5つ、B-NRにより武器になっている人間には噛まれても効果はないということ。(……。
6つ、ゼロは1年に10人以上の人間を感染させないと、そのゼロ自身が消滅するとい
うこと(うん
さて、復習が終わったことですし受験会場に行こう。
高校行きのバスの圧力はひどかった。
「(不安なら修行しとけよ。)」
狩人高校の受験方法は狩人志望がいわゆる実技試験。武器志望がパラメーター試験。(さ
っき説明した、五大栄養素をステータス化し基準値以上なら合格)の二つがある。
俺は、狩人志望なので実技試験だ。と、言っても対人戦だ。
学校が用意した木刀などの殺傷性が0に近いもので、学校の教員と舞踏会場(半径20
メートルの円)1対1で教員と対人戦をし、教員が直々に公平に審査する。
教員に武器を当てた者は今までにいない。
そんな、説明用のプリントを読んでいる間に俺の番が回ってきた。
「No,026 五十嵐 勇輝。会場に上がりなさい。」
俺は、今までの修行の結果を披露するだけだ。と木刀を手にし、会場に足を踏み入れた。
「はい、五十嵐 勇輝です。宜しくお願いします。」
ピッーと甲高いホイッスルとともに試験が開始したと同時に俺は前傾低い姿勢をとり右
足で地面を蹴り教員に向かい切りつけた疾きこと風のいや光の如く。
俺が停止した時、勢いのあまり手を滑らし落とした木刀が地面に落ちる音がした。これ
は試験失格だなと確信した時、俺ではない”誰かが”会場で倒れた音がした。
「……ん?」
振り返ると開いたまま目が閉じていない教員が横に倒れ教員が持っているはずの木刀が
遠くに落ちている光景が目にはいった。
「……当たったの?」
「し、試験終了。NO,026 五十嵐 勇輝 合格。」
動揺を隠せていない、アナウンスが報告を告げた。
あたりは、誰もいないくらい静かになっていた。
「(まぁ、当の本人も教員に当たるとは思ってなかったけどね。)」
「次の方~」と、耳に入ったので俺はすぐさま会場を降り、合格書をもらい家に帰った。
そう、ここからが親友との約束を果たすための一歩だった。
入学当日
この学校には、入学式はないらしい。なんて、めちゃくちゃな……とは、少し思った。
制服を購入してもらい初めて着るが、もはや……なんか……うん戦闘服だね……これ。
あとあと聞いたが俺、主席で入学らしい。
「(対応に困るから聞きたくなかった。)」
俺は、1組と発表を受けた。
1-1の教室に入るともう全員なのか?約10人前後の生徒が集まっていた。
約5分後。このクラスの担任らしき男教員が前に立った。
「静かにしろ~。ホームルーム始めっぞ。とっ、自己紹介がまだだったな。俺はこのクラ
スの担任になった長谷川だ。宜しく頼むぞ。この教室は基本的にホームルームと休憩時間
以外は滅多に使用しないとだけは言っておく。さて、みんなも自己紹介宜しく。じゃあ、
出席番号順で頼む。」
席的に俺からだろうと察し軽い自己紹介をした。ここから20分くらいクラスメートの
自己紹介が続いた。
「お~し終わったな。明日から実技授業始めっから今日中にパートナーがいない奴は適当
に決めとけよ~。今日は解散!」
おそらく、パートナーとは人間でなくてもいいだろう。鳥のワッシーにでも相手しても
らうか、あいつなら人に怯えないし逆に怖がられないだろう。蛇連れてきたら女子に殺さ
れそう……。と、考え事をしながら帰路を急いでいた。
「待って!五十嵐くん!」
自己紹介で、聞いた気がする声が、階段を降りようとしていた俺を呼び止めた。
振り返ると、太陽の明るさをそのまま髪に表したくらいに橙色な髪が特徴のツインテー
ルの小さなよu……少女が立っていた。
「えーと、何?(女子と話すのは苦手なんだよな)」
手早く終わらせたいため内容だけを聞くことにした。
「私、願 叶。明日のためにパートナーを探しているの。組んでくれないかな?」
あのさ、上目使いは犯罪じゃね?
「いや、俺パートナーいるからさ……。」
「誰なの?」
即答で目をキラキラさせながら聞いてきた。
「と……鳥。」
一瞬固まったよu……少女はできるだけ傷つけないように説明してくれた。
「えっと……。一応、実技授業パートナー人間のみだよ。」
「そうなか。なら、了承する。」
正直、俺は最近現パートナーに不満が少しある。
そもそも、なぜ狩人が主に人間と組むことを推奨されるかというと人間と、人間以外の
生物では五大栄養素によるステータスの変動が大きく違う。
簡潔にその差をいうと2倍くらい……。だから、将来人間のパートナーを探す末路が見
える。
なら今、目の前に佇むよu……(以下略)を始め将来のパートナーを探す第一歩とするの
も悪くないと俺は考えた。
そして、その言葉を聞いた幼女(諦めた)は悪い小悪魔の笑みを見せた。
「実は、私基準値ギリギリなんだ!宜しく!いや~優しい人がいてよかった。」
……っは!気づいた頃には自分の発言の意味の重みを理解したのがもう遅かった。
「あの~せめて、食管理は俺にさせてもらっていい?」
「それって、つまり同居wOK!」
おい幼女!戸惑う,嫌がるが普通だろ女子としてどうなの?
「嫌いなものでもきちんと食べてもらうからな!まぁ、不味いとは決して言わせない料理
を出すけどな」
すると、幼女は悲しい目で「え~!!」と叫びながら俺の家へと向かった。
こうして、俺は少し残念なパートナー(仮)を手に入れた。