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世界が平和に戻るなら。  作者: 柏木 慶永
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第13話 狩人祭2日目 その2

 やべぇ、相手の情報がねぇ。

 まぁ、本来ゼロに情報は僅かにしかない。それの、訓練だとでも思うか。

 幸いというべきか、昨日の試合が自身になっている。

 昨日と違うのは右手に持っている武器が、願ではあるが片手剣であること。

 俺は、この試合で片手剣の感覚を思い出しつつ勝たなくてはいけない。

 そして、願のステータスが今は薙刀向けであるということ。そのうえ、普通の武器より

も、かなり劣っている。

 あれ……結構、きつくはないか?

 まぁ、とにかくやるしかない。最悪、相手には悪いが打ち込ませてもらう。

 姉さんにすら通じるんだ。ある程度の戦闘には使えるだろう。

 今の発言が、事実になるなら姉さんの耐久性はゼロより強くなr……あの人、何者なん

だよ。

「……五十嵐選手、片手剣使いでしたっけ?」

「いや、違いましたよ。しかし、武器は昨日と同じ願選手です。」

「わかりましたよ!五十嵐という名字、聞き覚えがあると思えば、五十嵐 七絆さんと同

じ。しかも、七絆さんは、人の武器種を変更することが可能です。しかし、七絆さんはそ

の能力を家族の要求以外では使用しないと宣言しています。このことから、五十嵐 勇輝

選手は、七絆さんの弟さんなのではないでしょうか?」

 よく、推理したな。正解。

「つまり、彼は本来片手剣使いだったと考えられます。本職武器とは、違う武器ですら、

あのクオリティ!この考えが正しければ、この試合、かなりの見ものですよ!」

 あんま、プレッシャーかけないで、本当に。

 会場は、2つの意味でざわつき始める。

 俺が、狩人界の姫的立ち位置の五十嵐 七絆の弟であること。

 そして、俺が片手剣使いであるということ。

「いったい、五十嵐選手は何度、我々を楽しませてくれるのでしょうか?目の話せない試

合が間もなく開始されます。」

 その、一言のあと、明らかに体育会系?のまるでカンフーでもするかの構えを取る、小

柄な素早そうな、制服を見る限り2年の拳使いの女の先輩が現れた。

「あ、お察しの通りカンフーだけど、ちゃんと日本人だから安心してね。」

 何に、不安要素があるんだ。

 でも、良かった。カンフーという情報だけでもかなりデカイ。

「では、今回も審判さんお願いします!」

 審判は、昨日と同じように軽くうなずく。

 そして、ホイッスルを鳴らす。

「アッタァ!」

 強気の掛け声と、拳が俺に飛び交う。

「(……昨日あの先輩を見たおかげか、相手の死角が多く見つけれる。)」

 今、即座にとどめを刺しても良いのだが、少しでも片手剣に慣れるチャンスだ。

 俺は、多少無理でも、全てを剣で流す。

「あまく見られちゃ、困るね!私は時間が経つたびに俊敏性が増す!後悔するよ!全力で

来なよ!」

 確かに、先程より明らかに、コンボの速さが増している。

 だが、最速は存在するだろう。対応しきってやる。

「もう、知らないかんね!」

 相手は、更に加速する。更に……更に……更に。

 5分ほどした頃か、相手の速度が一定になる。

 どうやら、コレが限界らしい。

 流石に、全てを剣で捌くのはキツイが出来ないわけではない。

「なんで?対応しきれてるなら、とどめを刺せばいいじゃない?」

 相手は、コンボを続けながら、会話を振る。

「昨日、片手剣に変わった上、片手剣を使うのは2ヶ月振り。要は、片手剣の感覚を忘れ

てんだ。」

 相手は、目を開き驚く。

「つまり、その武器の子で片手剣を使うのは、初めて……てこと?」

「はい、そうなりますね。」

「信じられない。私の、2年間の苦労を……たった5分で否定されるなんて……そんなの、

あんまり。」

 これ以上は、先輩の精神が持たないと判断した俺は、仕方なくとどめを刺すことにした。

 俺は、剣を強く握り、先輩へのせめてもの謝罪として、今出せる本気を出すとした。

 左手で、高速なコンボを止め、痛みに耐えながら、大きく一歩後ろに下がる。

 そして、前傾姿勢かつ重心を下におろし、前移動と回転移動を両立させ、剣を相手に叩

きつける。

 まぁ、大げさに言ってるが、噛み砕いて言えば、高速な一回転をしただけだ。

 ただ、普通の一回転とは違い、攻撃力が多少なりともある。

 審判は、再びホイッスルを鳴らす。

「試合終了!五十嵐選手の圧倒的実力差で攻撃を捌き余裕の勝利!!」

「もはや、Aブロックで彼を止めれるものが現れるのでしょうか!」

「午後からも、彼は再びここに現れますがこちらの試合も目が離せません!」

 え?午後もあんの?御剣にどう言おう……。

 まぁ、さっさと退場して、模擬店に戻りますか。

 俺は、手短にダウンを取り模擬店へ向かった。

「(はやく、午後も模擬店に少し顔を出せないのを、伝えないと。)」

「まって!」

 先程のカンフーの使い手の声が聞こえたので、仕方なく振り返る。

「どうして、そこまで強いの?私が、サボっていたなら、あの結果が出たなら納得がいく。

でも、私は、響先輩に勝つことを目標に練習に手を抜くことなくしてきた。なのに……ど

うして、一年生にすら……私は……歯が立たないの?私と、あなたで……何が違うの?」

 先輩は、悔し涙を浮かべながら懸命に自分の負けた理由を知りたがっている。

「強いて、挙げるなら、目標の違いですかね。自分は、狩人界の一番なんてどうでも構い

ません。ただ、一刻もゼロを……あの、憎き獣。親友を殺す運命を自分に押し付けた、黒

い獣を……この手で、絶滅させたい。その心、一心でこの学校に入る前から練習してきま

した。要は、気持ちの持ち方ですよ。」

 コレが、正解かは俺にも、誰にもわからない。ただ、俺は聖路を殺してしまったあの日

から、コンマ1秒すら、あの憎き獣を。俺が絶滅させる生物を考えないことはなかった。

「学園で一番になることしか考えていなかった私は勝てないわけだ。ありがとう、今後の

試合も、頑張ってね。」

 どうやら、納得した先輩は、涙を拭い、笑顔で接してくれた。

「あ!でも、次戦うことになったら、負けないから、覚悟してね。じゃね!」

 俺から言わせれば、先輩がトラウマにでもなり狩人人生を終えさせてしまうのでは無い

かと、心配していたのだが、その必要はなさそうだ。

 今から、あの先輩と再び戦うことが楽しみになってきた。

「やっべ、早く戻らないと。」

 さっきまで、隣にいたはずの願は、跡形残さず消えている。

 あいつ、どんだけ回りたかったんだ……。


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