表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界が平和に戻るなら。  作者: 柏木 慶永
13/15

第12話 狩人祭2日目 その1 

 昨日と同じように、太陽の眩い光が、俺に朝を伝えてくる。

 体感温度から判断するに心地の良い日差し,温度の一日になるだろう。

 うん……?俺は、何かに抱きついているような体型になっていることに気がつく。

「(抱き枕なんて買った記憶が無いぞ……?しかも、俺と同じくらい。こんなの、いくらす

んだよ。)」

 きっと、寝ぼけているのだろう……それにしては、生暖かい……生物?

 俺は、懐かしい香りが目の前にある事を感じる。

 …………懐かしい……香り?いや、昨日どこかで匂った気がする香りだぞ。

 まぁ、とにかく起きるとしよう。

 今思えば、別に目を開ければ確認できるじゃないか。

 今抱きついているものに不信を抱きながら、覚悟を決め、目を開ける。

 ……姉さん??

 あまりの驚きに、反射的に手を離し、体を起こし、眼の前にいる姉さんらしきものの、

顔を確認する。

 そこに居たのは、にやけてはいるが間違いなく姉さんだった。

「なんで、ここにいるんだよ。」

「いや~!勇輝の寝顔を見たいなぁ~と、思って、お仕事が終わって見に来たというわけ

だよ~。」

「仮に、その理論が通じたとして。なぜ、この状況になった。あと、鍵はどうした。」

 姉さんは、俺の部屋にある机に指をさす。

 目を凝らし、寝ぼけた目で机の上を睨むと、そこには役割を成し遂げれない形をした小

さなクリップが2つあった。

「あれで、開けたよ~」

 軽く犯罪なんですがそれは……。

「で、なんでこんな状況へと至った。」

 姉さんは、照れ隠しをするように、頭の後ろに右手を回し、自分を撫でる。

「いやぁ~、勇輝の寝顔を見ていたら、寝ている勇輝の手が私を抱きしめてきて~、こう

なったのだぁ~!もぉ~、一緒に寝たいのなら連絡さえしてくれれば、どこに居ても行く

のにぃ~!」

 このアホなら、しかねないのが怖い。

「姉さん。俺が、外部からの影響がない限り、寝相が非常によく、動かないの……忘れた?」

 姉さんは、絶対に持ってこないといけない忘れたものを、思い出したように、絶望的な

顔になる。

「私としたことがぁー!勇輝の特徴を忘れるなんてー!妻として失格だぁ~!」

 妻というキーワードを引き抜いても、俺は姉さんに対しかなりお怒りだ。てなわけで。

「覚悟。」

 俺は、ベッドから出て、右手で拳を作り、今放つ事のできる全力を打つ体制に入る。

「ちょ……それは、流石に防げない……」

 姉さん。お前は俺の怒りの心に触れた。それが、お前が裁かれる意味だ。

 中2臭いフレーズを、心の中で唱え、姉さんの腹に拳を打ち込む。

「ボケがぁ!」

 姉さんは、気絶する。

「さて。願、起こすか。」

 今日も、平和?な、一日が始まる。

 願を、起こしてき、気絶した姉さんを、リビングのクッションに寝かす。

 そして、朝食と昼の弁当を同時進行で作る。

「七絆さん、完全に気絶しているけど、何があったの?」

「まぁ、ちっとな。安心しろ、あと10分もすれば起きる。」

 願は、姉さんを心配し、姉さんに歩み寄る。

「……息をしてない!」

「嘘つけ、打ちどころは考えて打ったぞ。」

 死よりきついような場所には打ち込んだことは、黙っておこう。

「『打った』って、勇輝くん、七絆さんには容赦ないんだね。暴力反対!」

「口で言ってもわからない姉さんが悪い。あと、本気で打たないと、俺が死ぬ。この世は、

弱肉強食なんだ。」

「勇輝くん、絶対に意味食い違えてるよ……それ。」

 そんな会話をしている間に、朝食と弁当が完成した。

 そして、テーブルに朝食を置くと、姉さんの、鼻が僅かに動く。

「やったぁ~!久々に勇輝の手作りだぁ~!いただっきまぁ~す!」

 姉さんは、怪物レベルの速さで椅子に座り食べようとする。

「待てっ!」

「ガルルルルゥ!!」

 お前は、人間……なのか?

「姉さん。いつから姉さんの分があると思ったんだ。」

 姉さんは、かなり落ち込む。

 気のせいかも知れないが、アホ毛も艶やかさが落ちている。

「ノォォォォォォ!妻が、夫の手作り料理を食べられないなんて!」

「勇輝くん!流石にそれは意地悪だよ!こんなんでも一応、勇輝くんのお姉さんなんだ

よ!」

 願は、真面目に怒る。が、気のせいだろうか……こんなんでも一応?

 姉さんと、アホ毛は元気を取り戻す。(姉さんとアホ毛は、同一人物というよりも、アホ

毛は姉さんの一部です。)

「ありがとー!願ちゃん!大好き!」

 本当に、自分に悪影響の言葉のみ聞こえないのは、見習いたい。

「嘘だって。ちゃんと準備してるから待ってろ。」

「やったぁ!わざわざ深夜に侵入した甲斐があった!ちなみに、お弁当は?」

 こいつ、あれだけのことをしておいて、弁当までもらう気だったのか。

「材料の問題上、4人前作るのは無理だった。」

「4人前もいらないじゃん!3人前でいいんだよ?」

 やべぇ……姉さんになんて言おう。時雨にもお弁当作ってること。

 とにかく、ごまかしておこう。

「あ、そうだったな。3人前作るのは無理だったんだ。」

 その言葉を聞いた瞬間、願の顔の雲行きが悪くなる。

「じゃあ、霞ちゃんのぶん……どうするの?」

 頼むから、こんな時くらいは空気を読んでくれ。

「霞……ちゃん?」

 姉さんの目は、昨日と同じように輝きが消えていく。

 どう言えば良いんだよ。

 これ以上誤魔化せば、自分の首を締め付けることになると悟った俺は、正直に話すこと

にした。

「その、霞ちゃんって、人に弁当を一度作ったら、好評だったから作ることになったんだ。」

 姉さんは、涙目になる。

「じゃあ、その霞ちゃんと妻!どっちが大事なの?」

 なんてベタなセリフだ。あと何度も言うが、お前が妻とかセットで宝くじの1等がつい

ていても嫌だ。

「そりゃあ、時雨……霞に決まってんだろ。」

 そりゃあ、約束しているんだから。

 姉さんは、もともと壊れかけている人格ではあったが、完全に崩壊を告げた。

「ユウキガ……ウワキヲシタ……ユルサナイ……」

「実のお姉さんよりも霞ちゃんが大事……やっぱり、勇輝くん、霞ちゃんみたいなのが好

きなの?」

 ついでに、願も壊れた。

「……もう勘弁してくれ。」

 そこから、なんとか両者のめちゃくちゃな誤解を解き、朝食を済ませ登校の準備を済ま

せ、やっとのこと学校に向かう。

 もう、今で昨日の半分くらいの疲労が溜まっている。俺、頑張れ。

「まぁ、弁当無しは一応わかった!から、そのかわり勇輝の全てを貰うね♪」

 クソッ!姉さん翻訳にはまだ長けている俺の自慢の耳が壊れた。

「あ、どうぞ♪どうぞ♪」

 お前もお前で、止めるどころかなぜ渡そうとしているんだ願よ。

「姉さんから見て、俺の価値は1食と同じなのか(困惑)」

「当たり前だよぉ~!私を昔みたいに愛していない勇輝なんて、全く価値ないよぉ!」

 昔から微塵も貴様など愛したことはないぞ。いや、意外と冗談なく。

「昔は、七絆さんが大好きだったんだ。勇輝くんって!本当に、女ったらしなんだね!」

 なんの事実もないのに、誤解されるなんて溜まったものではないな。

「なわけあるか。こんな常時爆発しているような爆弾に愛を注ぐなど、薬物乱用してでも

するか。」

「勇輝くん。なんか、その例え、危ないよ。」

そんな、馬鹿みたいな会話をしていると、学校に着いた。

 本当に姉さんと会話すると疲れる。

 あと、願は酔った時の記憶は残るんだな。需要はないかも知れないが覚えておくとしよ

う。

「姉さん。俺ら教室行くから、じゃあな。」

 軽く、手を振る。

「おけぇ~!また会いに行く!」

 正直、今日はもう見たくない。

「じゃあ、七絆さん。失礼します。」

「うん!じゃあね!願ちゃん!」

 俺は、化物の姉さんを撒き、教室に向かった。

 俺は、完全に安心し教室の扉を開ける。

 いつもと同じ、社会に乗っていた情報が正しければ大昔の教室の構造と同じような教室。

 木の香が、俺を安心させてくれる……はずだった。

 教室に入った途端、大量のクラッカーの音がなる。

 中は、かなりカラフルに彩られていた。

「「「「「狩人高校序列2位の昇格!おめでとう!!」」」」」

「そして、五十嵐!てっぺんを取れ!」

 あ、説明を忘れていたが、学校が認める対人戦は、公式戦と呼ばれる。

 公式戦では、順位付けがされる。

 つまり、公式戦で戦うまでは順位なし。

 公式戦で勝つと、その相手が元いた順位に入り込め、入り込んだ所からその相手より下

の順位に居た全ての生徒の順位が1つずつ下がる。

 つまり、昨日戦った先輩は元2位だったので、そこに俺が入った。

 そして、昨日の先輩は3位になったわけだ。ついでに言うなら、俺が2位に入ったこと

で、響先輩以外の全ての公式戦エントリー者は一つ下がったわけだ。

 まぁ、それ以上に新聞にデカデカと俺が飛びながら願を投げている写真と、『狩人界に新

たな星が現る?!』が、個人的に一番2位になったことより驚いた。

「はい、祝は終了!狩人祭の準備するぞ!」

 先生、雑っ!!

「五十嵐!雑だと思ったら1位になれ!その時は、大いに祝ってやろう!」

 あ、期待を添えての行動なのか……?

「さて!準備すっか!」

 迅速に準備をし、模擬店の部の準備が完了した。

「あ、御剣。午前中、試合あるから頼んだ。」

 御剣は、昨日の行列を思い出し、僅かに青ざめる。

「お、おう。できるだけ早く頼む。」

 お前……。

「その心配はない。」

 昨日は居なかった、刹那がいきなり発言をする。

「刹那。昨日どこにいたんだ?」

 刹那の目は泳ぎだす。

「まぁ、どっかの誰かに忘れられてました。」

 うん。コレ以上聞いてはいけない気がする。

「だから、言う。うなぎの仕入れをしていたと。」

「あ、ありがとう。」

 刹那の目は相変わらず泳いでいる。

「えっと、模擬店は任せて良いのか?」

「任せて。お店の余ったうなぎはよく蒲焼にするから。」

 なら、なんとかなるか。

「じゃあ、そろそろ行ってくる。行くぞ、願。」

「うん!純恋ちゃん頑張って!」

「任せて。まぁ、設定上頑張らなくてもなんとかなるんだけどね。」

 刹那……昨日のうちに何があったんだ。

 俺は、朝の怠けた体を運動のできる状態まで起こしつつ、会場へと向かった。

「そういえば、昨日のあの蜘蛛の巣のようなヒビの入った会場はどうなったんだろうな。」

 昨日、なぜ疑問にならなかったのか自分で昨日の自分に聞きたいくらいだ。

「勇輝くんも、知らないことあるんだね。狩人に関しては全部知ってるんだと思ってた。」

 こいつからは、俺は辞書にでも見えるのだろうか。

「ちなみに、私は知ってるよ。」

 願は、小悪魔的笑みを浮かべる。

「知りたいなら、午前の部だけ回る権利をください!」

 それが、狙いか……まぁ、いてもいなくても、大して変わらんだろう。

「いいだろう。そのかわり、きちんと教えろよ。」

 願は、ポーカーフェイスを頑張っている?が、そうとう喜んでいる様子だ。

「わかった!えっとね……あの会場には特殊な石が使われててね!月の光を浴びることに

よって、元の形に戻るんだって!どうやって、その石を作りかたは企業秘密なんだって!」

 まぁ、願にしては、まともな情報だな。

「で、その情報。どこ情報?」

 願は、生徒手帳の裏表紙を俺に提示する。しかし、そこには何も書かれていない。

「これを、あたためると……」

 すると、徐々に字が浮かびに上る。

 そうすると、さっき願が言ってたような文が浮かび上がる。

「よく気づいたな。」

「えへへぇ~、うっかり水に落としちゃった時にドライヤーで乾かしてたら、見つけたん

だぁ。」

 いや、そうでもしないと見つからんだろ、この情報。

てか、結構ためになりそうな情報をそんな大人気店の隠しメニューみたいに隠さなくても

いいじゃないか、狩人高校生徒手帳さん。

「意外と、この学校こんな隠れた情報があるかもしれんな。今後暇な時探してみるとしよ

う。」

 願は、見た目通りの子供のように好奇心を爆発させた。

「なにそれ!面白そう!私もついてく!」

 見つからなくて、駄々をこねる願が見えるのはなぜだろう。

「好きにしろ。」

 ふと、俺は時計を確認する。

 試合開始まで、大体10分ま……こうしてる場合じゃねぇ!

「願!急ぐぞ!」

「勇輝くんが焦ってる!」

 そんなこと言っている場合か、(ツインテ)ぶち抜くぞ。

 その後、猛ダッシュで会場に向かい、即座にアーマーを身にまとい、フィールドに入っ

た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ