第二色
なんだかんだで結局三日も早く出しちゃいました
努力ってなんだろう。
努力するのって当たり前なのか?努力できるのってそんなに皆できることなのか?
たとえ大きな壁にぶつかっても努力できるのは何でだ?
僕は努力という言葉が嫌いだ。
ある者は才能があるやつに勝つのは努力しかないと言う。
ある者は努力しただけ結果が出ると言う。
じゃあ、努力する理由は?
そう聞けばきっと、「好きだから」、「負けるのが悔しいから」と言うだろう。
じゃあ、それが嫌いなものでそれでもやらなければならなかったら?
それでも努力するやつはいるだろう。だって、それがやらなければならないとわかっているから。
努力するというのは一種の才能なんだと思う。誰もができるなんてあまいものじゃないことは本人達ではわからないだろう。
そう、僕がなんと言おうと本人達は平気な顔で「努力しない言い訳だろ」と言うはずだ。
でも、違う。自分の心に聞いて見てくれ。努力を、もしそいつにしかできないことを誰かに強要さらたら?自分達はそういうことをしているとわかっているだろうか?
まぁ、こんなことを僕一人が言ってもどうにもならないのはわかってる。でも、言葉にせずにはいられなかったんだ。
翌日。
僕は、教室でいつものように授業を聞いていた。授業が終わって昼休みになり、これまたいつものように悠樹の所へ行こうと教室から出た時。
「俊璃」
教室から僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
振り替えると、クラスメイトの沼田一弥が立っていた。
一弥は、学校内でも指折りのイケメンで、身長165cmと小柄だががっしりとした体つきをしている。爽やかな雰囲気とは裏腹に大胆な性格とのギャップでかなりモテている。
そんな一弥だが、実は僕の数少ない友達の一人だったりする。
「何?」
「一緒に飯食わないか?」
「あー」
どうしようか迷う。単純に悠樹と一弥と僕の三人で食べればいいのだが、そうはいかない。
悠樹が一弥のことを苦手としているからだ。何故かはわからないが、あまり気が合わないらしい。
「あ、ごめん、何か用事ある?」
一弥が何か察したように聞いてくる。
「いや、何にもないよ。一緒に食べよう」
結局、一弥と食べることにした。
悠樹には悪いが、後で説明しよう。
二人で教室の窓側の机をくっつけて、向かい合うように座る。
「で、何かあったの?」
購買で買ってきたパンの袋を開けながら訪ねる。
「いや…………うん」
「どっちさ」
曖昧な返事が返ってきて少し戸惑う。
「実は…さ」
「うん」
相づちをうつ。
「俊璃ってこの学校のある人に関する噂聞いたことある?」
「いいや、僕友達少ないから、そいうのは……ね」
「あ、ごめん」
一弥がハッとして謝ってくる。
「別に謝ることでは……。で、噂って?」
「ああ」
一弥が思い出したように語り始める。
「うちの学校の図書室あるだろ?あそこに……………」
「えっ」
放課後。
僕は昨日の約束通り悠樹と一緒に、図書室に来た。
理由はもちろん、先輩を一目見るためだ。
しかし、残念ながら今日は図書室に来ていないようである。
少し、気落ちしながらも勉強を始める。
この図書室には、僕と悠樹以外は誰もいないようだ。
そんなこともあって、僕は昼休みのことを悠樹に相談したくなった。
「なあ、悠樹」
急に話しかけたからだろうか、少し驚いた顔をして僕の方を向く。
「昼休みさ、行けなくてごめんな」
ああ、と頷き、
「特に約束してたわけでもないし、かまわない」
と言ってすぐに勉強に戻る。
「実はさ、昼休み、一弥と一緒だったんだ」
悠樹は、一弥を苦手というだけで嫌ってはいない。
「そっか」
「そこでさ、一弥にある噂を聞いたんだ」
「噂ね」
悠樹が勉強をしながら適当に相づちをうってくる。
「その噂ってのがさ…………先輩についてなんだよ」
そう言った瞬間、悠樹が興味を持ったように僕の方を向いた。
「先輩って?」
悠樹が尋ねてくる。
「昨日の図書室の女の人だよ」
ふんと頷く。
「で、その先輩のどういう噂を聞いたんだ?」
悠樹が珍しく話しかけてくる。
それに対して、少々戸惑いつつも、
「それがさ…………………。」
「うちの学校の図書室あるだろ?あそこに超美人な先輩がいるの知ってるか」
一弥が勢いよく喋り始めた。
綺麗な女の子とは、先輩のことだろうか。
「……多分見たことがある」
「その先輩、2年生で本名が宮城栞菜っていうらしいんだが、うちの学校では超がつくほどの有名人なんだ」
意気揚々とドヤ顔で言う一弥に少しイラッとする。
「それで?」
「有名な理由は簡単、美人だからだ。で、そんな先輩の噂ってのがな……………」
後半になるにつれてどんどん、声のトーンが下がっていく。
「男癖がかなり悪いらしい」
最後は、意気消沈。落ち込んだようにがっくりと首を落とした。
でも、そんなことは気にしない。僕はとにかく、その噂の真意が気になった。
「はっ?男癖が悪いってどういうことだ?」
「それがな。噂によると、先輩は結構自分勝手な性格らしくて、容姿は良いからって手当たり次第に男に手を出しているらしい」
冗談だろ。僕が思っていた人物象と違い過ぎて、少し笑えた。
「なぁ、俊璃」
「……何?」
一弥は真面目な顔をして聞いてきた。
「なんで先輩の話にそんな動揺してるんだ?」
その言葉で気付く。僕は、動揺していたんだと。今まであまり人に感心を持つことがなかった自分が先輩を気にしている。そう思うと何故だか訳がわからなくなってきた。
「……なんでだ?」
僕は俯きながら、呟く。
「はは……」
一弥が乾いた声で笑った。
さっきから、少々苛ついていた僕は冗談半分で言ってみた。
「お前こそ、なんでそんな女の話してんだよ」
「……俺?」
鳩が豆鉄砲をくらったような顔を顔とは、この事か。一弥のきょとんと顔が面白くて、つい、にやける。
「俊璃ってこんな喋るやつだっけ?」
「気分によっては、な。てか、話題をそらすな」
よほど、何かあるのか。普段大胆なだけにちょっと興味が湧く。
「仕方ない、か。バラすなよ……って、相手がいないな」
そう言って笑う。
言うなよ、僕のメンタルが……悠樹にバラしてやる。
「あのな」
さっきよりも真剣な顔をした一弥が喋る。
「入学式の日、ちょっと色々あって学校に残ってたんだ」
「色々って?」
こうなったら根掘り葉掘り聞いてやる。
「告白」
色々と言うからもっと言いずらいことかと思ったのに、堂々と言いやがったコイツ。
忘れてたがここは教室だ。そんなとこで告白なんて言うから物好きな女子たちが一斉にこっちを向いた。
居心地が悪くなるので、もう余計なことは言わないでおこう。
「それで?」
「帰ろうとしたらさ、いたんだ。先輩が。しかも、誰かを必死に追いかけてる感じで」
それってもしかして。
「その時、一瞬だけど目があったんだ。凄く綺麗だった」
一弥が思い出すように窓を見る。
「それでさ………好きになったみたい」
「えっ」
どうでしたでしょうか?
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