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先生と私  作者: 綿花音和
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隔離された世界で

 入院も二週間経過すると、自分の生活ペースがつかめてくる。私は食事をまだ十分とはいえないが、三回取るようになった。入浴も介助なしで入り、洗髪と身体を洗うのも当然のことになった。決まりごともたくさんあったが、病院での生活は心地良かった。


「こんなに静かな気持ちで、過ごせるのは初めてです」

 と同室のお姉さんたちに漏らしたら、

「ウッピーは入院出来て、本当に良かったんだね」

 彼女らは、沈んだ表情だったけれど優しく受け止めてくれた。

 

 同室のお姉さんは、細やかで几帳面な人ばかりだった。ぼーっと眺めているときは一見元気にみえた。しばらくして自分に余裕が出来、彼女らと接することが増えると印象が変わってゆく。常に汚れが気になる人に、大切なものをなくしたかどうかが気になって仕方ない人。

 彼女らも病人だった。それぞれ生活の仕方や習慣にこだわりがあって日常の暮らしを行うことすら難しいようだった。むしろ鬱病の私は、生活することには苦労はほとんどなかった。

 

 強迫神経症の患者同士で生活していると、たまにお互いの観念が干渉し合いすごしにくくなることもあるそうだ。ウッピーがいることで防波堤になるんだと、お姉さんたちは言っていた。優しい彼女らの、役に立っているのなら嬉しいと感じた。 

 逆に私は生活面に問題はなかった。ただ考え方に妙な癖があり、物事を捉える感覚は極端に偏りがあって生きづらさを感じていた。

 長谷川先生と相談し、休養の次の段階として生きづらさの改善のため、『認知療法』をすることになった。療法と言ってもそんなに特別なことではなかった。日々入院生活で感じた、辛かったことや気になったことをノートに書いて先生と振り返るというものだ。


 自由に使える時間は読書や病院の敷地内を音楽を聴きながら散歩して過ごした。その頃は、中島なかじまらもさんに遠藤えんどう周作しゅうさくさん、川上かわかみ弘美ひろみさんの本を読んだ。その他にも病院の和室にある漫画などを読んで心が和らいだ。特に川上弘美さんの『センセイの鞄』は部屋で大流行した。病院という閉じた世界で迷いながらも、ささやかに私は幸せだった。





 

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