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先生と私  作者: 綿花音和
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課題Ⅳ

 ウエイトレス見習いとして、活動しだして一ヶ月が経った。お客様への挨拶ははっきり歓迎の思いを込めて伝えられるようになっていた。小さくても新しいスキルが身に付くのはとても嬉しい。

「小野田さん、思い切りいらっしゃいませの声出せるようになったと思います。よかった」

 宮崎さんに、褒められた。宮崎さんは口数は多くないけれど、必要なことははっきりと言ってくれる。

「ありがとうございます。やっと一段階進めたのかな。でも今度は注文を取るの大変で、もっと慣れないと」

「注文を取るのは、接客が初めてなら難しいのが当たり前だから焦らなくていいと思います」 

 先輩の言葉に頷く。気合いを入れて、年若い女性客二人組にオーダーを取りに行く。

「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」

「ケーキセット二つ」

「飲み物は何になさいますか」

「コーヒーとオレンジジュースをお願い」

「かしこまりました。お待ちください」

 一礼しメモをとり、キッチンの入口に立っている喫茶作業補助の看護師さんの元まで辿り着く。注文内容を伝えると、気が抜けてしゃがみ込みそうになる。

「小野田さん、大丈夫?」

「緊張しちゃって」

 看護師さんの言葉に苦笑いを浮かべる。メンバーさんが、盛り付けたケーキの皿と飲み物をトレイに乗せてくれた。深呼吸してお客さんの元へ運ぶ。手を震わせながらも配膳完了。

「わぁ、美味しそう」

「うん、ケーキってテンション上がるよね」

 楽しそうに話すお客さんを見ると、きついけど作業してよかったと思う。

 隣の宮崎さんは、食器を下げ、テーブルを丁寧に拭いて座席を整えている。彼の仕事ぶりは丁寧できれいだなと思う。人とくらべて落ち込む機会は減った。接客の仕事を始めてから特にそうなった気がする。私は、オーダーと配膳を繰り返し作業のリズムを掴もうとする。目の前の仕事をだけを意識する。


 夢中になって作業し気付いたら、最後のお客さんも食事を終えた。『ありがとうございました』と宮崎さんと一緒に見送った。

「宮崎さん、お疲れさまです」

「お疲れさまです、小野田さん」

 額の汗をハンカチで拭きながら、お互いを労う。宮崎さんは年の近い男性のグループへ戻って行った。

 帰りのミーティング、千里ちゃんと隣合い座わり、たわいない話をする。緊張が解けていく。今回も無事に終えられた。作業中は緊張が続き苦しみもあるが、外で働くための準備をしていると実感できる。自分を包んでいた不安が静まっていく。経験値を積む、行動でしか得られないものもあるんだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 幸さんが弱さも含めて自分というものを前向きに受け止めている様子に胸を打たれました。 とても冷静に自分を見れるようになった幸さんに成長を感じます。 [一言] 以前の方が生きやすかった、でも戻…
[一言] 文章がとても安定してきたように思います。読んでいて不思議な安心感があります。 主人公が徐々に自らを取り戻し、前を向いて生きようとする姿に、改めて胸を打たれました。
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