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先生と私  作者: 綿花音和
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デイケア初日を終えて

 開店すれば入院中の人、外来の患者さん、沢山お客さんが『アムール』にくつろぎにやって来る。デイケア棟の広間に用意された喫茶空間で邪魔にならないように、私はみんなの働きぶりを見ていた。各々が担当の仕事に取り組んでいる姿は、緊張感もあったが楽しそうで、生き生きとしていた。特にレジ係の人は、全てのメニューの代金を覚えていた。看護師さんは立ち合っていたが、てきぱきとお客さんを待たせないで会計をしていた。

 

 今まで入院していて、自分は障がいがあっても他の患者とは違う。健常者にどこかで近いと思っていた。病棟にはお化粧が極端に派手な人、服装の趣味がおかしいと感じられる人もいた。病院内でなければ、敬遠するだろう。そう考える私は、貧しい心の持ち主だった。

 高校を退学した劣等生の自分も、自信を取り戻しつつあった。居心地のいい病棟で、だんだん妙なプライドが育ってしまったように思う。


 デイケアに行って、障がいが自分より重そうな人もいたが、持ち場をきちんと守る姿を目の当たりにし、馬鹿げた勘違いをしていたんだと感じた。

 帰りのミーティングでは、一日の感想と体調を述べ終了となった。

「今日はありがとう。また、来週会おうね」

 千里ちゃんに伝えると、

「うん! 楽しみにしてるからね」

 と返事をしてくれた。私は彼女の姿が小さくなるまで手を振っていた。同じ年頃の友だちなんて出来ないと思っていた。クラスメートから見えない棘を刺されて、同世代の女性に近づくのも怖かったからだ。彼女が声を掛けてくれたのは、信じられない特別なことだった。 


「小野田さん、初めてのデイケアの喫茶活動はどうでしたか?」 

 平田先生が尋ねてくる。私たちは、デイケア棟から病棟に戻るため一緒に歩きながら、話をした。

「参加者がそれぞれの仕事に凄く真剣で、びっくりしました。メニューの食品やお菓子も多く本格的でとても難しそうだと思いました」

「あなたがいる病棟とは雰囲気が違って驚いたでしょう。混乱したり動揺したりしませんでしたか?」

「直接お話する機会も少なかったので見た目の印象になりますが、症状が重そうな方もいらっしゃいましたね」 

「デイケアで過ごす時間は、小野田さんが自分の障がいと向き合ったり、他者との関わりを学ぶのに必要なものです。有意義に過ごせるようにサポートしますから」

「ありがとうございます」 

「お疲れさま、一人で抱え込まないでくださいね」

 病棟で別れる際、励ましてくれた。

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