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先生と私  作者: 綿花音和
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先生との面談

 私は、ぼんやり窓からの景色を見ていた。木々の葉は、赤や黄色にすっかり染まっていて、秋だなと実感する。健一さんは、側にいないんだ。まだピンとこなかった。時間を持て余し、しばらく開いていなかった文庫本を読んでみる。内容が頭に入ってこない。


 長谷川先生が、面談をする為に病室に私を呼びに来た。面談室へ一緒に歩いていく。先生は歩幅を合わせてくれた。小さな優しさがありがたかった。面談室の鍵を開け、先生がパソコンの端末を立ち上げる。私は向かいの椅子に座わった。


「早速だけれど、今後の治療方針について説明していいかい」

 先生は、いつも通りの淡々とした口調で言った。

「これから私は、何に対して努力すればいいのでしょうか?」

 今まで、自分の価値観や考え方のずれを認識することに、力点を置いてきた。それは一定の成果をあげていて、生活しやすくなった。


「デイケアの喫茶活動に週一回を目標に参加するのが、最初のステップだね。病棟の外部の人と接するし、人間関係が広がると思うよ。それに小野田さんなりの、人との距離のとり方を学べるはずだ」

 先生は、しっかり顔を見てゆっくり話してくれた。

「私大丈夫かな」

「僕には、小野田さんが入院まもなくの頃にくらべいい変化をしたと思える。だから新しい課題に移るんだよ」

「新しい課題」

「もちろんデイケアには作業療法士さんも配属されているし、外来担当のドクターもいるよ。困ったら、一人で頑張る必要はない。デイケアの活動目的は、慣れない環境で、その場で与えられた課題を行う忍耐力を養うことんなんだ」

「やってみます」

 先生は頷き、それから表情を緩めた。

「三ヶ田さんの見送り、お疲れさま。きっと二人はお互いに、いい関係をこれからも築けるんじゃないかな」

「遠距離恋愛になるんです。正直実感も湧いていません」

「あなたたちはお似合いだと思う。節度を守って愛情を深めていく様子は微笑ましかった。だから応援している」

 その言葉に励まされた。


 具体的な活動の内容については担当してくれる作業療法士さんから、後日説明があるとのこと。今後は決まった時間に、デイケアに行かないといけない。不安は多いが、治療から逃げない。だって、私はもう一人ではないから。





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