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先生と私  作者: 綿花音和
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優しい人々

 予想外の出来事に不安になった。一人で抱えるのに耐えられず、病室で勇気を出して切り出した。

「東さんから、三ヶ田さんと付き合っているのって訊かれた」

 この発言を受け、お姉さん達は顔を合わせごにょごにょと話し合いを始めた。しばらくして、私のベッドの周りに集まってきた。控えめで淑やかなお姉さんは、

「そうだったんですね。ウッピーは年頃ですし、近頃は刺々しさが消えて雰囲気も可愛らしくなりましたからね。男性陣はほっておかないでしょうね」

 

 男勝りで飄々としたお姉さんからは、

「ウッピー、気付き始めたかな。あなたは自然体のときには、基本人から好かれるタイプなんだよ」

 

 最後に仲良くなった関西のお姉さんが、

「三ヶ田さんも含め、悲しいかな男は狼やからな。ウッピー、自分を大切にせなあかんで。自制心の強い狼もいれば、東さんみたいに直情的なのもいるからな。そろそろウッピーは卑下せんと自分の等身大の魅力に気付けるといいんやけどな」

 三人のお姉さんたちはそれぞれ諭すように、私に言い聞かせた。自分を認めるのは難しい。だが、心配してくれたこと、本心からの言葉だというのは理解出来た。その優しさが、怖さや不安を溶かしていった。


 ナースステーションで、水上さんに、これからどう人と距離をとればいいのか尋ねてみた。

「小野田さんそうね、活動範囲が広がれば楽しいこともあるけど、煩わしいこともあるからね。あなたは治療に真剣に向き合っているからね。周りへの関心は薄いだろうし、急に距離をつめられると不安になるだろうね。でも忘れないで欲しいな。この病棟の人は表現方法は違っていても基本的には優しい人々なのよ」

「ええ、それは。一ヶ月以上過ごして実感しています。苦手だと思ってしまった東さんも病棟で迷ったとき案内をていねいにしてくれましたし」

 素直に水上さんに同意する。自分のことが、少し大切に思えるようになったのも、病棟の人々が優しく私を尊重してくれたからに他ならない。

「そうね、小野田さんこの病棟にいる間に、異性も含めて人との距離の取り方に慣れることが出来るといいと思うな。心地いい距離をとれるようになる為には、大変なこともあると思うよ。でも練習しないと始まらないからね」

「なんだか話して前向きな気持ちが生まれてきました。ありがとうございます」

「いいよー。私は担当看護師なんだから、どんどん相談してくだっせ」

 彼女は、胸をドンっと叩いた。


 私に魅力なんてあるのかな。たいがいに醜いといわれてきたからなのか、漠然と自分は人を好きになってはいけないと思ってきたし、人から好意を持たれるなんて経験がなくて戸惑う。

 一方でこの頃、病棟の人は怖くなくなってきた。長谷川先生も、病室の皆も、三ヶ田さんも、東さんたちほかの患者さんも親切だった。



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