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出会い
人は変われると思いますか?
あの人と私の距離はとても遠く、でも凄く近い
私が、先生に出会ったのは十八歳の春だった。チェックのシャツに白衣を羽織って現れた若い医師。背の高さと整えられた髭が印象的だった。
学校に行きたくなくなって、そして生きたくなくなった私は食事も満足にとれなくなった。体重が二十キロほど減っただろうか。 明るく過ごしてきた中学時代とは変わり、泣きながら自分の身を痛め付けるようになった。
心配した母が、連れて行ったのは県外の大きな病院だった。父に嫌われていたせいで、男性が苦手だった私は、先生に対してかたくなに反抗的な態度をとった。
思い出せば勉強は出来たけれど、自意識が強く、恥ずかしくなるほど尖っていた。私はやけくそで、こんな患者は手に負えないと投げ出してくれたらいいと思っていた。どこに行きたいのかさえ分からない、風に流されて揺れる柳のように頼りなかった。
初めて警戒を解き、先生にかけた言葉は質問だった。
「先生、いつか過去を越えることは出来るのでしょうか?」
心の底では救って欲しかったのかもしれない。




