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気が付いたらJKがいっぱいいるのでこれから彼女のことはカグヤと呼ぼう

前回のあらすじ


特に大したことはなかったよね?。





人物紹介


萩山レンジ(ニート) 恋愛に関しては繊細な心の持ち主。まぁ、思春期の童貞なんてこんなもんでしょ。


田中 かつてはMr.Xとしてニート達と死闘(笑)を繰り広げた人物。いまではただの連絡係となっているおっさん。


天城ショウタ(ショタ) 全てを茶番で終わらせるというニートと同じ志を持つ7歳児。いまは実験サンプルとしてモルモットな日々を過ごす。


モトコ(パツキン) 兎歩高校の副生徒会長。実は係長の娘だったりする。


月宮カグヤ(JK) ニートの幼馴染。島では明るい性格の女子高生だったが…。


タケシ え?感染者?。なんの話?。

田中「もしもし?ニート」


9月11日、その日は朝から田中さんから連絡があった。


朝から田中さんからの電話で目が覚めたニートは眠そうな声で電話に応答した。


ニート「モーニングコールなんて頼んでないぞ、Mr.X」


田中「いまさらMr.Xとか呼ぶなよ。島にいた時に呼べよ」


タケシ「サナエェ…サナエェ…」


部屋の隅で今日も朝からタケシはブツブツ呟いていた。


ニート「それで、何の用なんだ?」


田中「実は大変なことが分かったんだ」


ニート「大変なこと?…もしかして、Mr.Xって名前にネーミングセンスが無いことにいまさら気が付いたのか?」


田中「なんの話してるんだよ?。Mr.Xかっこいいだろ」


ニート「で、なにが分かったんだ?」


田中「心して聞け。実はな…お前が今いる兎歩町にJKが…月宮カグヤの家があるのだ」


ニート「え?知ってるけど?」


田中「…え?知ってるの?」


ニート「そりゃあね。だって俺、最初のデスゲームに参加する7歳までこの町で住んでたもん」


田中「知ってるならなんで会いに行かないんだ?。それとも会いに行ったけど、家にはいなかったのか?」


ニート「いや、その…なんて言うかな…。あんまり会う気になれないんだよね…」


田中「なんで?」


ニート「だってさ…カグヤは記憶無いんだろ?。だから俺のことも忘れちゃってるしさ…会ってなにを話せばいいのか分かんないんだよね…」


田中「会いたくないのか?」


ニート「いや、そういうわけじゃないけど…。相手が忘れてて、自分だけが覚えてるって辛いじゃん」


田中「そうは言っても、島の時は立場が逆だっただろ?。ニートはJKのこと忘れてたけど、JKはニートのことを覚えていた。そんな状況でもJKはお前とちゃんと向き合って、そしてお前はそんな彼女に恋をした。JKはそこまでやりきったんだ、だったらお前もそこまでやったらどうだ?」


ニート「うっ…田中さんに正論を言われるとは…」


田中「まぁ、あとはお前次第だな。それはそうと、いまからショタ君に電話を代わるぞ」


しばらくした後、電話からショタの声が聞こえて来た。


ショタ「もしもし?お兄ちゃん」


ニート「おぉ、元気か?ショウタ」


ショタ「うん、僕は大丈夫だよ。それより、お兄ちゃんの方はどうなのさ?」


ニート「んー…まぁ、ボチボチ養ってもらってるよ」


ショタ「はははっ、お兄ちゃんらしいね。で、カグヤお姉ちゃんのことなんだけどさ…カグヤお姉ちゃんにとってお兄ちゃんはヒーローなんだから、ちゃんと助けてあげないとダメだよ?」


ニート「ヒーロー?。なんのことだよ?」


ショタ「島にいる時に、カグヤお姉ちゃんがお兄ちゃんのことそう言ってたからさ」


ニート「そんなに期待されてもなぁ…」


ショタ「それに、幼馴染で、年も同じで、島で一緒に暮らして、あそこまで散々フラグ建てて…これで付き合うまで行かなかったらもう二度と彼女できないと思うよ?」


ニート「やめろよ、7歳児に本気で心配されたらさすがの俺でも立ち上がれなくなるだろ」


ショタ「とにかく行ってあげて。お姉ちゃん、きっと待ってるよ」


ニート「…分かった。とりあえず会いに行ってみるよ」


ショタ「うん。それじゃあ、田中さんに代わるよ」


ショタがそう言うと、携帯からは再び田中さんの声が聞こえて来た。


田中「そういえば、もう一つ伝えなきゃいけないことがある」


ニート「なんだ?」


田中「実はこの町に政府から殺し屋が派遣されたのだ」


ニート「殺し屋?」


田中「たまたま流れてきた噂程度の情報しか知らないのだが…その殺し屋はCBKSの感染者を全て殺すために派遣されたらしい」


ニート「感染者を全て殺す?」


田中「そうだ。そうすればパンデミックもなにもないだろ?」


ニート「いやいや、なにも殺すことはないだろ?。せめて捕まえて政府で隔離するとか出来ないのかよ?」


田中「いちいち幽閉なんてしていたら何人の人の感染者を面倒見ることになるか分からない。それに兎歩町は完全に見捨てるというのが政府の方針でな…それならいっそ殺した方が合理的と言えば合理的なのだろう」


ニート「それならいっそミサイルでも打ち込めばいいのに…」


田中「流石にそこまで大胆なことは出来ないからな。政府にも体裁というものは必要だ」


ニート「それもそうか…。それで、その殺し屋についての情報は他に何かないのか?」


田中「殺し屋のコードネームは『テイラーD』」


ニート「『テイラーD』?」


田中「なんでも仕事の度に姿や名前を変え、ターゲットに近づく謎の殺し屋だそうだ」


ニート「へぇ。…そんなやつ俺にどうしろってんだよ?」


田中「全てを茶番で終わらせることがお前の目的だろ?。だからなんとかこれも茶番に変えられないか?」


ニート「無茶言うなよ。せめてもう少し殺し屋の正体のヒントをくれよ」


田中「それなのだがな…以前『テイラーD』が偽っていた名前が分かったんだ」


ニート「以前ってことは今は名前が違うんだろ?。そんなの聞いてなにかヒントになるのか?」


田中「まぁ、聞くだけ聞け。『テイラーD』が以前使っていた名前は…平間和也」


ニート「平間和也?。どっかで聞いたことあるような…」


田中「いや、分かれよ。一緒に島で暮らしていたやつの名前だろ?」


ニート「え?。じゃあ平間和也ってもしかして…」


田中「そう、お前たちがイケメンと呼んでいたやつが『テイラーD』だ」


ニート「オイオイオイオイ…流石にそれは出来すぎてるだろ…」


田中「だが、事実は事実だ」


ニート「あのイケメンが殺し屋?本当なのか?」


田中「いや、それは確かなことではない…だが、平間和也を名乗っていたのは確かなことだ」


ニート「…どちらにせよ、イケメンはその件に関わっているってことだな」


田中「そういうことだ」


ニート「…もしあのイケメンがその『テイラーD』だった場合、イケメンの顔を知っている俺なら正体が暴けるのか?」


田中「どうだろうな?。少なくとも『テイラーD』は変装のプロ、果たして見てわかる程度の変装なのかどうか…」


ニート「っていうか、感染者の特定、『テイラーD』による感染者の殺害の阻止、カグヤとの関係…俺はなにから手を付ければいいんだよ?」


田中「まぁ、その…頑張ってくれ。とりあえず、今できることから始めたらどうだ?」


ニート「今できることっていうと…カグヤの件か?」


田中「そういうことだな」


ニート「この町の未来がかかってるというのに、呑気に恋愛に勤しんでる場合なのかな?」


田中「そういう言い訳をしてJKと会いたくないだけだろ?。どっちにしろ、今のお前にはそれしか出来ないんだからとりあえず会いに行けよ」


ニート「もういっそのこと、間をとって部屋に引きこもって漫画を読むのはどうだろうか?」


田中「いいから行けよ」


タケシ「サナエェ…サナエェ…」







結局、田中さんの説得によって町に繰り出したニートは昔の記憶を頼りにカグヤの家に向かう…が、月日が流れて町が変わったせいか、それとも二度に渡る記憶消去の経験のせいか、ニートは何度も道に迷ってしまった。


ニート「さてさて、まさか生まれ故郷で道に迷うことになるとは…時の流れというのは残酷なものだな」


車の通りがほとんどない交差点に立ち尽くしたニート。


そんなニートに後ろから声をかけてきた人物がいた。


パツキン「なにやってんの?ニート」


兎歩高校の副生徒会長を務めているパツキンであった。


ニート「おお!パツキンじゃないか!?。いいところに来た!!」


パツキン「どうした?」


ニート「実は…その…月宮カグヤって人を知ってるか?」


パツキン「ん?。もしかしてニートも月宮さんを探してたりする?」


ニート「え?。どういうこと?」


パツキン「実は月宮さんは私と同じクラスの人なんだけどさ、兎歩町に住んでいるのに最近学校に来てないんだよね。もしかしたら、こんな状況でも学校やってるのを知らないのかもしれないから家までそれを伝えに行くつもりなんだよね」


ニート「おお!好都合じゃないか!。俺も同行させてくれ」


パツキン「いいけど、月宮さん家にいないかもしれないよ?」


ニート「どういうこと?」


パツキン「実は10日前くらいにも一度月宮さんの家に行ったことあるだけど、その時は家にいなかったんだよね。ちょっと外に出てただけなのか、そもそも兎歩町にいないのかはわからないけど、確認のために私はもう一回訪問することにしたんだよ」


ニート「へぇ、偉いな、パツキンのくせに」


パツキン「まぁ、副会長だからね。…で、ニートは月宮さんとどういう関係なの?」


ニート「一応、幼馴染」


パツキン「へぇ、そうなんだ。じゃあ月宮さんと仲良いんだ」


ニート「ま、まぁ…仲良いかな」


パツキン「月宮さんってどんな人なの?。あんまり話したことないから知らないんだよね」


ニート「どんな人って…普通に明るくて良い奴だと思うけど…」


パツキン「へぇ、そうなんだ、意外だね」


ニート「…意外?」


パツキン「月宮さん、学校だといつも1人でさ…なんていうか、人付き合いを避けてる感じがあって近寄り難かったんだよね」


ニート「カグヤが?近寄り難い?」


パツキン「少なくとも、私の印象はそうだよ。…人見知りだったりするのかな?」


ニート「うーん…そうは思えないけど…」


パツキン「私も何回か話しかけてみたんだけどさ、いつも冷たくあしらわれてさ…。でも幼馴染のニートが一緒なら、この機会に仲良くなれるかもね」


そうこうしているうちにある集合住宅の前にたどり着いた2人。


それはニートも見覚えがある建物であった。


パツキン「ここだね」


かつて毎朝のようにカグヤを迎えに行っていた懐かしい建物を目の前に、ニートは懐古心と緊張に包まれた。


自分のことなど覚えているはずのない幼馴染との再会を前にニートは思わず固まってしまった。


そんなニートを尻目にパツキンは躊躇いもなくカグヤの家のインターホンを鳴らした。


ニート「ちょっ…心の準備くらいさせてくれよ」


パツキン「幼馴染に会うのになんで心の準備がいるのさ?」


ニート「いろいろあるんだよ、いろいろ」


パツキン「まぁ、どっちにしろいないようね」


インターホンを鳴らしても家の中からは物音もなく、人気が感じられなかった。


パツキン「やっぱり兎歩町にいないのかな…」


ニート「どうやらそのようだな。…よかった」


パツキン「よかったの?」


ニート「この兎歩町の事件に巻き込まれてないのなら何よりだ」


ニートがそう言いながら安堵の息を吐いていると、そこに一匹の大型犬が近づいて来た。


パツキン「おお!犬だ!」


人懐っこいのか、その大型犬は警戒心もなくニートに近づいて、クンクンと念入りに匂いを嗅いだ。


ニート「お前…もしかしてスカーレットか?」


ニートの質問を肯定するかのようにその犬は『ワン!』と吠えた。


それを聞いたニートは犬の前に座り込み、右手を差し出して口を開いた。


ニート「スカーレット、『アイアンクロー』!!」


スカーレット「ワン!」


ニートの差し出した右手にスカーレットの左前脚がポンっと乗せられた。(要するにただのお手)


ニート「スカーレット、『黄金の右手』!!」


スカーレット「ワン!」


今度はニートの差し出した左手に右前脚がポンっと乗せられた。(ただのおかわり)


ニート「スカーレット、『西郷を待つハチ公の構え』!!」


スカーレット「ワン!」


ただのお座りです。


ニート「スカーレット、『くっ、殺せ…のポーズ』!!」


スカーレット「ワン!」


ただの伏せです。


ニート「『働きたくないでござる』!!」


スカーレット「ワン!」


スカーレットはゴロンと転がって腹を見せた。


ニート「『文明開化』!!」


スカーレット「ワン!」


スカーレットは二本足で立ち上がった。(チンチン)


ニート「『3回回ってワン』!!」


スカーレット「ワン!」


スカーレットは二本足立ち上がったまま、その場でくるくると回りだした。


ニート「間違い!お前はスカーレットだ!!」


スカーレット「ワン!」


ニートはスカーレットとの感動の再会に思わずスカーレットを抱き締め、頭をこれでもかと何度も撫でた。


ニート「おお、よしよし、スカーレットよ。会いたかったぞ、我が家の姉の玩具と化した愛しき駄犬よ」


パツキン「それ褒めてるの?」


ニート「ベタ褒めだ」


一通りスカーレットを撫で回した後、スカーレットはニートの腕をするりと抜け、カグヤの家の玄関の扉を自慢のアイアンクローでガリガリと引っ掻き始めた。


ニート「…もしかして、中にカグヤがいるのか?」


スカーレット「ワン!」


ニート「そうか…いるんだな、カグヤ」


ニートは小さくそう呟くと、玄関の扉のドアノブに手をかけた。


どうやら扉には鍵がかかっていないようで、ニートがドアノブを引くと扉はゆっくりと開いた。


部屋中のカーテンが閉められているせいか、昼間だというのに真っ暗なその部屋の隅で1人膝を抱えて座り込んでいる彼女がニートの目に入って来た。


以前と比べて随分と痩せ細った彼女は小さな声で玄関から現れたニートに尋ねた。


カグヤ「…誰?」


記憶が無くなったカグヤからすれば当然の質問に、それを分かっていたはずのニートは思わず動揺してしまった。


ニート「俺は…俺は君の…」


なんと答えればいいか分からず、ニートは言葉に詰まってしまった。


そして、少し時間をかけてから寂しそうにこう答えた。


ニート「俺は…君のヒーロー…かな?」

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