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平穏な町に現れたアイツ

前回のあらすじ


ようやく物語が動き出す…かも。



腐女子の発酵室で、ニートと腐女子は相変わらず好き勝手なことをやっていた。


ニートがベットに横になりながら漫画をペラペラめくっていると、原稿用紙に一心不乱にペンを走らせていた腐女子の手が止まり、原稿用紙に向き合ったまま、口を開いた。


腐女子「ねぇ、ニートの名前ってなんだったっけ?」


ニート「萩山レンジだけど?」


名前も覚えてないような相手を部屋に入れるのはどうなのかとか、そういう疑問はさておき、唐突な腐女子の質問に、ニートは漫画を読みながら返事をした。


腐女子「ふーん…レンジか…」


ニート「なんで名前聞いたの?」


腐女子「今書いてるBLのキャラの名前を考えてたからさ…参考程度に聞いてみただけ」


ニート「へぇ…ちなみにどんなキャラなの?」


腐女子「昔、『ピー』人の男どもから無理やり『ピー』を『ピー』されたせいで男性恐怖症になった男っていう設定」


ニート「ヤメロォォォォ!!!。そんなキャラに実在の人物の名前を当てはめるんじゃねぇ!!!!」


腐女子「そんなに嫌?」


ニート「お願いだからやめてください!!なんでもしますから!!」


腐女子「ふむ、そこまで懇願するとは…よほど嫌なんだろうな。それなら代わりに原稿用紙を買ってきてくれない?。もうすぐ無くなっちゃうんだよ」


ニート「それくらいなら構わないが…どこで売ってるんだ?」


腐女子「スマホで雑貨屋の場所を調べて…と言いたいところだが、いまは通信は使えないんだっけ…。ニートはよその町から来たんだから、あんまりこの町のこと知らないよね?」


ニート「いや、この町に住んでたことはあるからそれなりに知ってはいるけど…かなり昔の話だから、あんまり覚えてないんだよね」


腐女子「そうなんだ。だったら、今回は私も一緒に買いに行くよ。次からは一人で買えるようになってね」


ニート「なんで次に買いに行く機会があるんだよ?」


腐女子「ニートの同姓同名が『ピー』されるのは嫌でしょ?」


ニート「これ、ただの脅迫だろ?」


腐女子「で、行くの?」


ニート「そりゃあ行くよ。平行世界の萩山レンジの貞操を守るために…」


こうして、2人で出かけることになった。





兎歩町を歩く2人は、広場で数十人の人が集まっているのを目撃した。


ニート「…あれはなにをやってるんだろ?」


腐女子「なんなんだろうね?」


そんな2人に気が付いた制服姿の髪の毛が派手な金に染まったパツキン女子高生が2人のもとにやってきた。


パツキン「あれ?。腐女子も受け取りに来たの?」


腐女子「なんの話?モトコ」


どうやら2人は面識があるらしい。


パツキン「この広場で今から政府からヘリで物資が支給されるんだって。でも、そのまま支給したら取り合いになるだろうから、そうならないようにみんなに均等に物資を分けるために私達が動いてるの」


腐女子「私達?」


パツキン「うん。こんなわけわかんない状態でも、平和に暮らしたいって人が集まって、こういう場を取り仕切る団体が誕生したの。で、私もそれを手伝ってるわけ」


腐女子「へぇ、偉いじゃん」


パツキン「腐女子もどう?。どうせBL描くくらいしかやることないんだろうし、腐女子も手伝わない?」


腐女子「やることなんてBL描くことだけでいい」


パツキン「残念だな。そっちの君は?」


ニート「俺も遠慮するよ。養われることしかやる気無いし」


パツキン「ふーん、残念。それじゃあ、私も準備があるからこの辺で」


パツキンはそう言うと人場の群衆にまみれて、見えなくなった。


ニート「今のは知り合い?」


腐女子「同じ中学だった子。昔はよくつるんでた。高校が違うから最近は疎遠だったんだけど…そもそもあの子、家は兎歩町じゃなかったはずなんだよね…」


ニート「っていうことは…あのパツキンも家なき子なのか?」


腐女子「そういうことになるね」


その数分後、上空を舞うヘリから物資が投下され、パツキン達の団体により均等に物資が配当されていった。


その光景を見ていた腐女子は一言つぶやいた。


腐女子「平和だね」


ニート「そうだな。…俺が手を下すまでもなく、平和だ」


腐女子「これじゃあ、あんたがなんのために兎歩町に来たのかが分かんないわね」


ニート「だから、俺は養われに来たんだよ」


腐女子「ほんとなにしに来たんだよ?」


そんな会話をしていた2人の背後から一つの影が這い寄る。


会話と広場の光景に夢中になっていた2人が、その影に気がつくわけもなく、易々と背後を奪われ、そして…ニートに向かって、まるで襲いかかるように倒れ込んだ。


ニート「あ、10円見っけ」


だが、直前で足元に落ちていた10円を拾うため、屈んだニートは無意識のうちにそれを躱し、そいつはそのまま地面へ倒れた。


地面に追突した音によって、ようやくその存在に気が付いた腐女子が恐る恐る声をかけた。


腐女子「あ、あの…大丈夫ですか?」


腐女子の問いかけに、そいつは地面に倒れたまま、衰弱しきった声で返事を返した。


タケシ「み…水をくれ…」






パツキンに事情を説明して、腐女子は水と食料を貰って来て、それをタケシに餌付けした。


タケシは余程お腹が空いていたのか、一心不乱にそれを口に放り込んだ。


しかも、なぜか涙を流しながら…。


ニート「な、なんだこいつは…」


腐女子「なにかを食べられることが泣くほど嬉しかったのか?」


あまりの不審な行為に困惑2人をよそに、タケシは愚痴をこぼすように同じ言葉を繰り返していた。


タケシ「サナエぇ…サナエぇ…」


腐女子「…ニート、こいつの言葉を解読できる?」


ニート「ふむ…おそらくこいつは失恋でもしたんじゃないのか?。サナエってやつに振られたんだろ?」


タケシはニートの言葉が正解だと言わんばかりに激しく何度も首を縦に振った。


そしてその後、今度は別の言葉を繰り返し始めた。


タケシ「サイフぅ…サイフぅ…」


腐女子「…今度はサイフだってさ」


ニート「彼女にとって俺はサイフだったんだってことだろ?。悪い女に捕まったなぁ」


タケシはニートの言葉になにをいうわけでもなく、ただひたすらに涙を流しながら何度も頷いた。


腐女子「…よく今の言葉で解読出来たわね」


ニート「童貞はみんな、魂で繋がってるから、言葉にせずともその傷を分かち合えるのさ」


腐女子「へぇ、繋がりたくない絆ね。…でも、後でBLのネタにさせてもらうわ」


タケシ「タケシぃ…タケシぃ…」


ニート「なるほど、お前はタケシっていうのか。俺はニートで、こっちは腐女子だ」


タケシ「ニートぉ?…腐女子ぃ?」


まるで言葉を覚えたばかりのヒナのようなタケシ。


聞けば、タケシも行く当てが無いらしいので、とりあえず腐女子の家にタケシを連れて帰ってみた。


ニート「ただいま」


腐女子「ただいま」


母「お帰りなさい。…あら?今度はどなた?」


腐女子の母はタケシに気がつくと、2人に聞いてきた。


ニート「これはタケシだよ、さっき道で拾ってきた」


母「まあ!?タケシですって!?。ダメよ!元いた場所に返して来なさい!」


腐女子「えぇ?。なんでニートや犯罪者は良くて、タケシはダメなの?」


母「だってタケシよ?。ダメに決まってるじゃない」


ニート「ちゃんと躾もするし、お世話もするからタケシを飼わせてよ!お母さん」


母「ダメったらダメ!。どうせ途中でめんどくさくなって、お母さんが散歩に連れて行くことになるのよ!?」


腐女子「ちゃんと毎日、散歩も連れて行くから…お願い、お母さん」


母「…仕方ないわね。ちゃんと躾するのよ」


真の娘と偽りの息子の必死の説得により、母は観念して、タケシを飼うことを認めた。


腐女子「わーい!良かったね!タケシ」


ニート「やったね、タケシ!家族が増えるよ!」


喜ぶ2人に囲まれ、塩入家のペットとなったタケシは1人、釈然としない顔をしていたとさ。


おまけ


父「ただいま」


いつものように街を回って情報を集めていた父が家に帰り、リビングに脚を赴くと、そこには当然のごとく塩入家で晩ご飯を食べるニートに加えて、1人床でご飯を食べるタケシの姿があった。


父「お母さん、またなんか増えてない?」


母「そう?気のせいじゃない?」


父「え?でもここに…」


ニート「疲れて幻覚が見えてるんだよ、お父さん」


父「お父さんって言うな!」


腐女子「怒鳴ってばっかりいるとまた血圧上がっちゃうよ」


父「えぇ…。もう分かったよ、人が1人増えようが気にしないようにするよ。…でも、床でご飯を食べさせるっていうのもどうなの?。せめて彼も椅子に座って机で食べてもらおうよ」


1人だけ床で食事をしているタケシを気遣っての言葉であった。


母「でも、椅子が4つしかないから…その場合、あなたが床に這いつくばることになるけど、いいかしら?」


父「…この話は聞かなかったことにしてくれ」


あっさりタケシを見捨てる父であった。

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