田中さんの追悼式〜星となかった田中〜
*お好きなBGMと共にお読みください。
目を閉じれば、瞼の裏のスクリーンにいつだってあなたの姿が投影されます。
楽しそうなあなた、仲良しなあなた、かわいそうなあなた。
その全てが鮮やかに、鮮明に、私達の脳裏に浮かんで来ます。
今思えば、私達は奇妙な関係でした。
Mr.…なんだったっけ?。
なんか壮絶にダサい厨二ネームと共に私達の目の前にあなたが現れた時から、この色褪せた世界が輝きを取り戻したかのように見えました。モノクロの世界に虹がかかった瞬間でした。
最初はツンツンしていたあなたも、次第にボロが出て甘っちょろくなり、最終的には私達には無くてはならないチョロインのポジションに就任されました。
そんなあなたに養ってもらって…私達は幸せでした。
あの島でのデスゲーム(笑)は本当に楽しかった。
チョロインのあなたのおかげで私達は仲良くなれた。
あなたの才能の欠片もないゲームマスターは本当にかわいそうだった。
それもこれも、全部あなたがいなければありえなかったことだった。
あなたが壮絶に、今世紀最大級に、地上最強クラスにゲームマスターの才能がなかったおかげで、私達はこんなにも幸せに暮らすことが出来ました。
あなたには感謝の言葉もなくて、思わず苦笑してしまうほど、感謝しております。
本当に…本当に(笑いを)ありがとう、田中さん。そして今更だけど、やっぱり『Mr.X』はダサいよ、田中さん。
でも…そんな田中さんも、もういない。
あの信じられないほど愉快なピエロ田中はもういない。
その喪失はあまりにも突然過ぎて、私達は信じることが出来ませんでした。
いや、信じたくはありませんでした。
笑われても笑われても、ダルマのように何度だって立ち上がってまた笑われる田中さんが…。
爆笑のサンドバックのように誰彼構わず笑われる田中さんが…。
息を吸うかのように周りを爆笑の渦に巻き込む田中さんが…。
あの…田中さんが…もういないだなんて…。
俺を知った瞬間から、私たちの目頭は暑くなり、目の奥の涙腺から…笑いが止まりませんでした。
声を震わし、お腹を抱えて…笑っても笑っても笑っても…この笑いを抑えることは出来ませんでた。
あなたがいなくなって…心にホッコリと穴が開いたように…笑いが止まりませんでした。
でも、私達も笑ってばかりではいけません。
田中さんがいなくなったという事実と真顔で向き合い、前に進んでいかなければいけません。
ですが、それを分かってても、田中さんがいなくなったという事実を目の前に、顔のにやけを抑えることが出来ませんでした。
田中さんがいなくなったことで、もう爆笑のスイッチの歯止めが効かなくなってしまったのです。
どうにかしてこの爆発のスイッチをオフにしないと私たちの生活に関わる。でも、田中さんはいない…そんなジレンマに苛まれたとき、私達は気が付いてしまったのです。
田中さんはいなくなってなんかいない、田中さんは星となって私たちを見守ってくれている、と…。
そう考えた瞬間、心にホッコリ空いた穴がすうっと埋まり顔から笑いが消えました。
ありがとう、田中さん。やっぱりあなたは星となって私達を見守ってくれていたんですね。
そう思い、ふと夜空を見上げると一等星よりも強く光り輝く見覚えのない星を見つけました。
それは田中さん、あなたです。
田中さんと入れ替わるように私たちの目の前に現れたその星を私達は『田中』と名付けました。
これでもうあなたがいない寂しさで笑ってしまうこともありません。
あなたのことを思い出し、ふと笑ってしまいそうになったら、私達は星空を見上げ、田中を探します。
ほら、空で田中が光ってる。
そう思うと、ほおが引きつり、顔がニッコリと、結局は笑ってしまいます。
そして夏になると、夜空に光り輝く夏の大三角の隣で、あなたは輝きを放つでしょう。
いずれはあなたも夏の大三角の仲間入りをして、夏の大四角となるでしょう。
デネブ、アルタイル、ベガ、田中…そう呼ばれる日も近いでしょう。
七夕になれば、天の川を隔てて寄り添う織姫と彦星、二人の橋渡しとなるデネブ、そして部外者の田中が日本中の空で見ることが出来るでしょう。
一年に一度だけ星空の中で盛大にリア充するカップルに挟まれて、ひとりぼっちの田中さんが何を思うのか…それは私たちには知る由もありません。
でもそう考えるとデネブって頑張ってるよね。
天の川を隔てた二人を会わせるために毎年橋渡しになってるデネブ。
デネブはなにが楽しくて毎年リア充に挟まれているのか?。
そろそろ謀反に走って、天の川の上でリア充している二人を川に突き落としても許されるんじゃないかな?。
いや、ほんとデネブって可哀想だよね。もしデネブが恋人いない歴=年齢の童貞とかだったら毎年毎年このリア充共の橋渡しになってなにを思ってるのかな?。
表面的には笑顔で橋渡ししてるかもしれないけど、内心は絶対に『リア充ビッグバンしろ』って思ってるよ。
っていうか、星の年齢ってもう何億年っていうレベルだよ?。
何億回もリア充がイチャイチャしてるのを見せつけられるんだよ?。
常人だったら気が狂うよね。もうベガを寝取っちゃえばいいのに…。
30年、童貞を貫いたら魔法使いになるってよく聞くから、それが何億年ってなるとなにになんだろ?。やっぱり神とかになるのかな?。
いや、ほんとデネブって良いやつだよね。
何億年も恋のキューピットしてんだよ?。俺だったらそのうち矢に毒でも塗っちゃうね。
もうほんとデネブがかわいそうだ。誰か付き合ってあげなよ。
とりあえずデネブとアルタイルとベガの中で友達になるとしたら間違いなくデネブだな。
絶対にこいついいやつだもん、俺には分かる。童貞は惹かれ合うものだからな。
実際のところアルタイルとベガもオフの日はなにしてるか分かんないよ?。
実はもう結婚してて、オフの日は子供と一緒に一家団欒しててもおかしくないからね。それで七夕になったら浮気相手に会いに行く。愛人は一年に一回くらいの頻度であったほうがバレにくいもんね。
はぁ〜、考えれば考えるほど織姫と彦星がクソビッチに見えてくるわぁ…。
結論、デネブはいいやつ。
…あれ?そもそもこれってなんの話だったっけ?。
そうだ、田中さんの追悼式だった。
とりあえず…アレだ、田中は死んだ、もういない。
さようなら、田中さん。
ニート「以上をもちまして、私達からの田中さんの追悼の言葉とさせていただきます」
田中「いや!そもそもワシ死んでないからな!?。っていうか、後半デネブの話しかしてねえじゃねえか!!」
腐女子「あ、でも、もう今後田中さんの出番は無いらしいよ?」
田中「マジで!?」
今回は本編はありません。前書きの前回のあらすじがメインです。
…うん、田中は死んだ、もういない。
ニート「でもほんとデネブって可哀想だよな」
カグヤ「でもこれからは田中さんもいるから、寂しくなんか無いよ」
田中「だから死んでないって!!」




