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つまり末永く養ってくれるってことですか?  作者: なおほゆよ
学園じゃないラブコメ編
37/57

そして全ては茶番となる

前回のあらすじ


ニート「世界に俺を、養わせてやるよ」


これを言わせたくてこの続編を書いたんだよなぁ…。

ニート「世界に俺を、養わせてやるよ」


血にまみれた右手を天に掲げて堂々と突拍子もないことを宣言するニートを前に、カグヤ達はただただ呆然としていた。


ニートの言っていることははっきり言って無茶苦茶だ。


具体的な考えも、方法も多分ニートの頭の中にはない。


誰がどう考えたって不可能な机上の空論でしかない。


しかし、なぜだろうか?。カグヤ達の心の『もしかしたらニートなら…』という期待を拭うことはできなかった。


カグヤ「と、とりあえず…止血しようよ」


ニートの突拍子もない発言にどう返事したら良いか分からなかったカグヤは、とりあえずニートの右手からポタポタと滴り落ちる血を止めることを提案した。


しかし、止血をしようにも包帯もなにも持っていなかったため、カグヤが一人でオロオロしていると、倉庫の入り口の方から犯罪者とスカーレットがやって来た。


犯罪者「どうやら間に合ったようだな」


スカーレット「ワン!」


詳しい状況は分からなかったが、ニートの右手の出血を見兼ねた犯罪者は自分の着ている服の一部を破り、それを使って応急手当をした。


ニート「いてて…」


犯罪者「安心しろ、傷は浅い。一週間もすれば治るさ」


犯罪者の応急手当によってニートは事なきを得た。


犯罪者「とりあえず…この程度で済んだのもこの犬のおかげだな」


スカーレット「ワン!」


一度は飼い主の元から去ったスカーレットだが、それは他の誰かを助けに呼ぶためであった。


犯罪者「それで、今はどういう状況なんだ?」


右手を負傷したニート、血まみれのナイフを片手にオロオロしているカグヤ、涙を流してその場に膝から崩れ落ちているイケメンことスミレ、椅子に縛り付けられている腐女子。


さすがの犯罪者もこの状況を見ただけでは事の顛末を察することは出来なかった。


ニート「イケメンとカグヤを二人とも守るため、デスゲームを俺たちの手で続ける事になった」


犯罪者「…は?」


腐女子「デスゲームが終わらなければ、イケメンが任務に失敗することもないし、カグヤも殺される必要なんかないってことよ」


ニートの説明では訳のわからなかった犯罪者に椅子に縛られたまま、腐女子は補足を加えた。


犯罪者「デスゲームを続けるか…。なるほど、ニートらしい発想だな」


スミレ「…本気で言ってるの?」


ニート「なにがだ?」


スミレ「この国に…いや、この世界にケンカを売ってまで、本気でこのデスゲームを続けようっていうの?」


ニート「もちろん」


スミレ「どうして…私一人を守るためにどうしてそこまで…」


ニート「そりゃあ…仲間だからな」


ニートは傷ついていない左手をスミレに差し出してそういった。


そんなニートの手をスミレは涙を流しながら黙って握り締めた。


犯罪者「お前のやろうとしてることは分かった。だが具体的にはどうするんだ?。今回のデスゲームのお相手はどこぞのチョロインとは違うんだぞ?」


ニート「それについてなんだがな、前回のデスゲームはみんなで掴んだ勝利だ。だから、島のみんなの力を借りたいと思ってる」


犯罪者「島のみんなの力ね…」


ニート「どうにかして島のみんなをこの町に集めたい」


犯罪者「そうは言ってもな…」


その時、ニートの懐にある黒い携帯電話の着信音が鳴り響いた。


着信相手は御察しの通り、チョロインからであった。


ニート「もしもし?チョロイン。ちょうど良いところに電話してくれたね」


田中「ふっふっふっ…ついに…ついに発見したぞ…」


携帯からはチョロインの疲労に満ちた不気味な笑い声が聞こえて来た。


ニート「声が元気無いけど、大丈夫か?」


田中「ふっふっふっ…徹夜7日目にして…ようやくだ…ようやく発見したぞ…」


ニート「徹夜7日目とか…死ぬ気か?」


田中「聞いて驚け、とうとう、とうとう発見したのだ!CBKSの治療法がな!!」


ニート「…なに?」


田中「ふっふっふ、驚いたか?驚いただろう?。ワシだってその気になれば治療法の一つや二つくらいポンポンと発見できるのだ!ハッハッハッハッハッハ!!!!。…これで…これでようやくデスゲームを…由紀を救える…」


徹夜7日目ともなるとテンションの管理がずさんになってしまうのか、田中さんの声のトーンは上がったり下がったりを繰り返していた。


田中「そもそもCBKSの感染者はな、強い恐怖心を感じると脳の自己防衛本能を刺激する特殊な電波のようなものを放出するようになり、さらにその電波を受けた者が感染者となり、感染が広まって…」


ニート「そんなことより、そこにショウタっているか?」


得意げにCBKSについて語り出した田中さんを無視して、ニートはショタが田中さんの近くにいないかを聞いて来た。


田中「んなっ!?。この世紀の大発見を『そんなこと』扱いするとはどういうことだ!?」


ニート「ショウタと話がしたいんだよ、電話代わってくれないか?」


田中「むぅ〜、こんな時でもショタ君と話したくなるのは仕方がないからな…代わってやろう」


自分の世紀の功績を聞いてくれないことに不満があるのか、田中さんはブツブツとなにか文句を言いながら近くにいたショタに電話を代わった。


ショタ「もしもし?元気にしてる?ニートのお兄ちゃん」


ニート「おう、右手は死んだけどな。ショウタの方こそ元気そうでなりよりだ」


ショタ「それで、僕に何か用?」


ニート「実はな…」


ニートが事の顛末とこれからのことを一通り説明すると、ショタはケタケタと笑いだした。


ショタ「ハハハハハ!!!!さすがニートのお兄ちゃんだね!!」


田中「どうかしたのか?」


会話の内容が聞こえない田中さんは突然笑いだしたショタを見て会話の内容が気になったようだ。


ショタ「なんでもないよ。大丈夫だよ、田中のおじちゃん」


それだけ田中さんに伝えて、ショタはさっさとニートとの通話に戻ってしまった。


7日も徹夜してようやく治療法を発見したというのに会話の蚊帳の外にいる田中さんはそのことにプンプンと腹を立てつつ、ショタとニートの会話に小耳を立てていた。


ショタ「それでそれを実行するとなると、まずアレは邪魔になるよね?。…ああ、うん、大丈夫大丈夫、こっちでなんとかするから心配しないで。…うん、うん、それも大丈夫、僕に考えがあるから。…うん、壁の外にいる仲間は僕に任せて」


残念ながらニートがなにを言っているかは聞こえなかったため、会話の内容は田中さんにはよく分からなかった。


ショタ「ねぇ、田中のおじちゃん。発見した治療法ってどこにまとめてあるの?」


田中「ふっふっふ、今までの実験データと治療法はここにあるワシのノートに全部まとまってあるぞ」


携帯片手に聞いてくるショタの質問に得意げに答える田中さん。


ショタ「バックアップとか、コピーとかは無いの?」


田中「バックアップとコピーは今から助手に頼んでやってもらうつもりだぞ。ワシは機械苦手だからそういうのは不得意でな…」


ショタ「ふーん、そっか…」


田中「他に何か聞きたいことは無いかな?」


まるで孫を甘やかしたくて仕方が無いおじいちゃんのようにショタに接する田中さん。


ショタ「それじゃあ、僕でも田中のおじちゃんくらいの大人の人を運べるような台車ってないかな?」


田中「ワシを運べるような台車?。わかった、おじさんに任せなさい」


ショタのお願いに胸を張って答える田中さんは意気揚々と台車を探し出して、ショタの元へと運んで行った。


ショタ「ありがとう。それと、僕でも田中のおじちゃんを気絶させられるような鈍器って無いかな?」


田中「ワシを気絶させられるような鈍器?。わかった、おじちゃんに任せなさい」


ショタのお願いを叶えたくて仕方が無い田中さんは深く考えずに意気揚々とシャベルを持って来た。


ショタ「ありがとう、田中のおじちゃん!!」


田中「他に!何か他にやって欲しいことは無いかな!?」


ショタ「うん!。それじゃあ…少し寝てて貰っていい?」


田中「…へ?」


反応する間もなく、シャベルで頭を殴られた田中さんの意識はそこで途絶えてしまったとさ…。








田中「ベ、ベジタリアン……はっ!ここは!?」


気絶した田中さんが目を覚ますと、何か見覚えのある機械仕掛けの椅子のようなものに座って縛られていることに気がついた。


少しして田中さんはその機械仕掛けの椅子の装置がかつてニート達の記憶を消去した機械であることに気がついた。


田中「こ、これは…『私の頭の中の消しゴム君 2号』!!」


ショタ「この機械、そんな名前だったんだね」


田中「ショタ君!?これは一体どういうことなんだ!?」


訳も分からぬまま椅子に縛られた田中さんはなんとかそこから抜け出そうと抵抗しながら問いただした。


ニート「ようやくお目覚めかね?田中総一君」


ショタが持っていた黒い携帯電話からニートの声が聞こえて来た。


それはまるで、かつてニートが島で目覚めた時、Mr.Xとして初めて会話した時の田中さんのように…。


田中「ニート!?これは一体どういうつもりなんだ!?」


ニート「まぁまぁ、落ち着いて聞いてくれ、田中総一君。実は我々はな、いま兎歩町で行われているこのデスゲームをあえて続けることにしたんだ」


田中「…は?」


ニート「で、そのためにはCBKSの治療法っていうのは我々にとって非常に邪魔な存在となってしまうわけですよ」


田中「…は?」


話が全く分からない田中さんの頭の上にはハテナマークが大量に量産されていた。


ニート「ですから…CBKSの治療法が書かれた田中さんのノートと、その内容を知っている田中さんの記憶、まとめてボッシュートさせてもらいます」


田中「…は?………………ファアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」


想像を絶する展開に田中さんの頭は爆発した。


田中「待て待て待て待て待て待て!!!!!!どうしてそうなった!?どうしてこうなった!?」


ニート「まぁまぁ、そうなったもんは仕方がない」


田中「お前達は自分達がやろうとしていることが分かっているのか!?。この発見によってどれだけの人の命が救えると思ってるんだ!?いままでの我々の努力の結晶を無為にするというのか!?」


ニート「まぁまぁ、パンデミックが広まりそうになったら田中さんのノートは返してあげるからさ。それまでは俺たちで預かっておくってことで」


田中「そこまでしてどうしてそんなことをするというのだ!?」


ニート「ふっふっふ、それはズバリ…養ってもらうためさ」


田中「クズニートオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」


ニート「最初から言ってただろ?俺は養ってもらうために兎歩町に来たんだって…」


田中「確かにそうだけど…そうだけど!!」


ニート「仕方ないだろ。…そうでもしないと、守れない仲間もいるんだからさ…」


田中「………」


ニートの最後の一言で田中さんは急に黙りこくってしまった。


ニート「どうしたんだ?田中さん」


田中「…誰かを救うために何かを犠牲にしようとしたのはワシも同じだからな。ワシにお前らにとやかく言う資格もない」


ニート「いいのか?」


田中「ああ。それに…お前らの記憶を消したのもワシだからな、文句を言う権利もないだろ」


ニート「確かに、それもそうだな」


田中「だがその代わりに一つ、お願いがある」


ニート「なんだ?」


田中「由紀を…頼む…」


ニート「…わかった」


その言葉に田中さんから初めて切実さを感じたニートは真剣に返事をした。


ショタ「ゴメンね、そろそろ急がないと警備に気が付かれちゃう」


田中「それもそうだな、早くやってくれ」


覚悟を決めた田中さんは男らしく堂々と構えていた。


田中「それにしても、終わらせられるはずのデスゲームを終わらせないだなんて…これじゃあ、ただの茶番じゃないか」


ニート「いいんだよ、ただの茶番で…」


田中「ははっ、それもそうだな。…守り抜けよ、ニート」


ニート「ああ」


ショタ「それじゃあ…さようなら、田中のおじちゃん」


それを最後に、田中さんの意識は途絶えてしまったとさ。



おまけ



腐女子「…そろそろ私を助けてくれないかな?」


結局、終始椅子に縛られたままの腐女子であった。

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