イケメンがいない町
前回のあらすじ
イケメンは万死に値する。
キャラ紹介が必要そうな人
ボス CBKSに対抗すべく政府が設立した組織の指揮官的存在。
田中 ポンコツおじさんのイメージが強いが、実は研究者としては有能だったりする。
モブ島「イケメンはいねがぁ?イケメンはいねがぁ?」
モブ山「イケメンはゆ"る"ざん。処すべし処すべし」
まるで東北に生息する某ハゲが悪い子を探すかのごとく、周囲に目を光らせて歩くその集団の異形の衆が兎歩の町にはあった。
モブ田「イ"ケ"メ"ン"はぁ、親の仇より罪が重いぞぉ」
モブ木「イ"ケ"メ"ン"がぁ、存在することデェ、本来俺たちと結婚するはずだった女の子が奪われテェ、俺たちは彼女もぉ、奥さんモォ、子供モォ、全てを奪われたんだぞぉ」
ボブ沢「俺たちのぉ、未来の子の仇じゃぁ」
獲物を探すゾンビのように町を練り歩き、文字通り、血眼で憎きイケメンを探すモブ共。
そんなモブ共の近くで、よく見ると顔がパッとしない雰囲気イケメンっぽいリア男と微妙に可愛く無いリア子が非リアをこじらせたモブ共を他所にリア充していた。
リア男「リア子、俺の女のなれよ」
そう言ってリア子を壁に追い詰め、リア子の顔の近くの位置の壁に手をつき、リア男はリア子をじっと見つめながらリア子に迫った。
いわゆる壁ドンである。
リア子「リア男くん…」
いわゆるただしイケメンに限るアレにリア男をじっと見つめ返すリア子。
その時、イケメンを命を賭してでも一矢報いたい思いでいっぱいのモブ共の内、一匹のモブが何かを察したように顔を上げ、遠方を見つめた。
モブ木「…いる。近くに『ただしイケメンに限る』がいる」
モブ藤「なに!?まさかモブ木の『ただしイケメンに限る』レーダーが反応したというのか!?」
モブ山「なに!?まさか半径5キロ以内に存在する『ただしイケメンに限る』を誤差2ミリ以内で所在を特定するモブ木の『ただしイケメンに限る』レーダーが反応したというのか!?」
モブ川「誤差2ミリ以内とか、最新のGPSよりずっと正確だぞ?」
モブ木「いるぞ、近くにいるぞ。逃がすものか…逃がすものか!逃がすものかああああああ!!!」
野獣のごとく雄叫びを上げ、珍獣ごとく4足歩行で、猛獣のごとく走り出したモブ木。
その目は充血によって真っ赤に染まり、口からは溢れんばかりのヨダレを垂らし、レーダーを頼りにまっすぐリア男の方へと駆けるその姿は異常そのものであった。
…っていうか、あれ?こいつなんかに感染でもしてるのかな?。そんじょそこらのゾンビよりもゾンビしてねえ?。
そんなゾンビモブ木に続いてモブゾンビ共がリア男の方へと駈け出す。
モブ木「み"つ"け"た"ぁ!!!!」
リア男「え?なに?」
リア子「キャアアアア!!!!!化け物オオオオオオオオ!!!!!」
突如現れたケダモノの姿を見たリア子は驚き、リア男を置いて走り去ってしまった。…やったぜ。
モブ木「イ"ケ"メ"ン"…イ"ケ"メ"ン"?」
『ただしイケメンに限る』レーダーに反応したリア男にモブ木は詰め寄るが、微妙にパッとしない顔をしているのでイケメンと判定していいかよく分からず困惑していた。
モブ島「イケメン審査員の皆様、審査をお願いします!!」
判別に困ったモブ島がそう言うとどこらからともなくイケメン審査員のモブ原、モブ部、モブ谷が1から10の数字が書かれたプラカードを携えてやって来た。
モブ原「1点」
モブ部「4点」
モブ谷「2点」
モブ島「…合計7点」
モブ女子高生3人の審査員による審査により、リア男の顔は7点であることが判明した。…いまさらだが、モブ原、モブ部、モブ谷は女子である。JKが3人もいるとか…やったぜ。
モブ山「けっ、たった7点のゴミが…」
ボブ沢「俺らと大差無いくせに壁ドンなんて許されざることしてるんじゃねえよ」
モブ藤「調子乗ってんじゃねえよ、顔面7点男」
リア男「………」
突然現れた謎の集団からこぞって自尊心を傷つけられたリア男はただただ涙目になっていた。…やったぜ。
ちなみにだが、平均8点の合計24点以上でイケメン認定される。
モブ木「…む"こ"う"に、新たなは"ん"の"う"か"…」
モブ木のレーダーに新たな反応があったらしく、またまたゾンビの如くどこかへ駆けて行った。
そんな感じでイケメン狩りを始めたモブ共はレーダーを頼りに、またある時は人伝をたよりに夜通しイケメンを探しまくった。
イケメンを探すためなら例え火の中、水の中、草の中、森の中、土の中、雲の中、あの子のスカートの中でさえも、容赦なく飛び込んだ。
その結果…
モブ島「この町に、イケメンはいなかったよ」
ニート「そうか…探してくれてありがとう」
檻の中に閉じ込められたモブ共から牢屋越しにイケメン捜索の結果を受け取ったニート。…やはりあの子のスカートの中はまずかったんやな。
ニート「イケメンはこの町にいないのか…。イケメンっことだけが、あいつを見つける唯一の手掛かりだったのにな…」
腐女子「さすがにヒントが少なすぎるでしょ」
檻に閉じ込められたモブ共はさておき、イケメンを探すための手がかりが尽きたニート達は途方に暮れていた。
腐女子「なんか、他に手がかりってなかったっけ?」
ニート「なんかあったかな…」
犯罪者「…テイラーD、だ」
イケメンを探すためにニート達と合流した犯罪者はそんなことを口にした。
ニート「テイラーD?それってイケメンのコードネームかなんかだっけ?それって手がかりになるのか?」
犯罪者「コードネームを付けるのにはっていうのは二通りの理由がある。一つは呼びやすい名前をつけるため、もう一つはその人物を別のふさわしい呼び方で呼称するため。…いわゆる二つ名ってやつだ。今回の場合はおそらく後者の理由だ。呼びやすい名前にするなら『テイラー』だけならまだしも『D』までは付けないだろうからな」
腐女子「まぁ、確かに『テイラーD』なんて二つの言葉が含まれるくらいだから、単純な命名
ってわけじゃ無いでしょうね」
ニート「えっと…つまり?」
犯罪者「このコードネームには何かしらの意味があるってことだ。イケメンに繋がる何かしらの意味がな」
ニート「なるほどね」
犯罪者「で、その肝心の意味だが、まずわかりやすい『テイラー』の方は…これは人名なのか?」
腐女子「少し発音が違うけど、似たような単語に『tailor』っていうのがあるよ」
犯罪者「『tailor』…仕立屋、か」
ニート「じゃあ『D』の方は?」
犯罪者「おそらくは何かの略称だろうな。殺し屋で、『D』から始まる単語でまず連想されるものといえば…」
腐女子「…『DEATH』、とか?」
ニート「じゃあ『テイラーD』っていうのは、さしずめ『死の仕立屋』ってことか?」
犯罪者「まぁ、そういう解釈も出来るだろうな」
腐女子「…でもさ、例えこの解釈で合ってたとしても、このヒントを頼りにどうやってその殺し屋を見つけるの?」
犯罪者「うーむ…葬儀屋でも当たるか?」
腐女子「確かに葬儀屋なら、『死の仕立屋』って感じがするね。他にヒントも無いんだし、ひとまず葬儀屋にでも行こうか?」
ニート「葬儀屋ってここから近いの?」
腐女子「うーん…歩きだと30分くらいかかるかな?」
ニート「遠いな。…家で休んでていいかな?」
腐女子「こんなところでクズ発言するなよ。カグヤを守るためだろ」
そんな感じで、一行が葬儀屋へと行く空気になったところで、ニートの携帯か鳴り出した。
ニート「誰からだろ?…また田中かな?」
ニートは電話の相手を田中さんと予想したが、電話越しに聞こえて来たのは田中さんのおっさんボイスではなく、女性の声であった。
アパレル「えっと…もしもし?ニートですか?」
ニート「その声は…もしかしてアパレルか?」
アパレル「うん」
ニート「おお!久しぶりじゃん!どうしたのさ!?」
アパレル「えっと…田中さんっていう人が良さそうな人から携帯を貰って、『時間がある時にニートに電話をかけてあげて』って、言われたから電話してみたんだけど…」
ニート「そういえばこの前田中さんがアパレルとビッチに携帯渡したって言ってたもんな。ところで、もしかして記憶の方はまだ忘れたまんまだったりするの?」
アパレル「うん…なんかモヤッとなら思い出せるんだけどね…」
ニート「まぁ、大丈夫大丈夫。そのうちコロッと思い出すからさ」
アパレル「そんなものなの?」
ニート「そんなもんだよ、経験者だから分かる。いやぁ、それにしても久しぶりだな…いろいろ積もる話はあるけど、いまはそれどころじゃ無いからな」
アパレル「ごめん、電話をかけるタイミングが悪かったかな?また今度連絡するよ」
ニート「悪いな、また今度ゆっくり。…いや、ちょっと待って」
アパレル「どうしたの?」
ニート「せっかくだから聞いてみるけど、『テイラーD』ってなにか分かる?」
アパレル「…え?ごめん、よく聞こえなかったからもう一回言って」
ニート「『テイラーD』だよ、『テイラーD』」
アパレル「『テイラーD』って言ったのね。別の言葉に聞き間違えちゃったよ」
ニート「ん?別の言葉?」
アパレル「いや、関係無いから気にしないで」
ニート「いや、思い当たることならなんでも聞いておきたいからさ、とりあえず言うだけ言ってみてよ」
アパレル「そう?関係無いとは思うけど、聞き間違えたのは私の職業柄、よく聞く言葉なんだけど…」
一方、所変わってこちらは田中さん。
昨日発覚した新事実によって寝ている場合じゃないと考えた田中さんは研究やら対策やらが重なり、寝る暇もなかったため徹夜6日目に突入していた。
徹夜6日目ともなると、さすがにもはや見れた顔ではなくなっており、思わず顔面にモザイクを入れて修正してしまいたくなる領域へと突入していた。
そんな田中さんはとあるビルの最上階にそびえ立つボスのオフィスはと足を運んでいた。
田中「テイラーDを止めてくれないか?」
足を運んだ理由は、政府から派遣された殺し屋である『テイラーD』の殺しをやめて欲しいと直談判するためであった。
ボス「…どうしてですか?」
田中「感染の拡散はニート達の手によって食い止められている。だから、感染者を殺すなんてことはただ無駄な被害が大きくなるだけだ。だから止めて欲しい」
ボス「ニート達というと…萩山レンジのことですね」
田中「ああ、あいつなら必ずパンデミックを食い止めてくれる。だからテイラーDを…」
ボス「結論から言いましょう。答えはNoです」
田中「なぜだ!?」
ボス「確かに彼らの潜在能力は素晴らしいものです。なんせあのデスゲームをひっくり返すほどの能力がありますからね。…ですが、彼は所詮はただのクズなニート。そんな彼に賭けて町を丸ごと一つ、天秤にかけるわけにはいきませんからね。感染者は殺す…残念ながら、これが今現在最も手っ取り早くて、最も安全な策なんですよ。リスクを最大限回避すること…指揮官として優先すべきことです」
田中「そ、それはそうだが…」
ボス「思わず彼に期待したくなる気持ちも分かります。…しかし、一国の舵を任された者として、彼に簡単に賭けるわけにはいきません」
田中「で、でもだな…」
特に考えもなく単身でボスの元へと乗り込んだ田中さんだが、所詮は田中さんなので、反論の一つもろくに思いつくこともできずに、歯切れの悪い返事をするしか出来なかった。
ボス「第一、あなたにはあなたのやるべきことがあるでしょう。物を言うのでしたら、研究者として結果を出してからにしていただきたい」
田中「…くっ」
グーの根も出ない田中。
ボス「あなたのデスゲームのゲームマスターは酷いものでした。…いやはや、本当にひどかった。ですが、研究者としてのあなたは期待していますよ、田中さん」
田中「…分かった。だが、約束しろ!研究が完成した暁には、即刻テイラーDを止めて、兎歩町を解放すると!」
ボス「もちろんです」
言いたいことだけ言い終わった田中さんは研究に戻るため、そのまま部屋を後にしようとした。
ボス「…一つ、良いことを教えましょう。先の話に出てきた『テイラーD』ですが、とうとう月宮カグヤが感染者であることを特定したそうです」
田中「なに!?」
ボス「あの組織は今すぐにでも結果を求めていますからね。…死に物狂いで殺しに来るでしょう」
田中「くそっ!そんなことさせるものか!」
今すぐにでもニートにその事実を連絡するために部屋を出ようとした田中さんだが、ふとあることに気が付いてその足を止めた。
田中「そういえば…どうしてそんなことをワシに教えたんだ?」
ボス「そうですね…きっと私も期待してしまっているでしょうね、翼を託されたあのクズに…」
ニート「そんな…バカな…」
アパレルからとある事を聞いたニートは驚愕し、思わず携帯を落としてしまった。
ニート「…そんなことがあっていいのか?。…いや、確かにそれを否定できる確証は無い」
腐女子「どうしたの?」
一人でブツブツとなにかをつぶやくニートが気になった腐女子はそう質問したが、ニートは無視してブツブツつぶやいていた。
ニート「だとしたら…あの時感じた違和感はそういうことか…。やってくれるぜ…なにがイケメンだよ、あんにゃろう」
犯罪者「なにかわかったのか?ニート」
ニート「まだ確証は無い。だけど、おそらくテイラーDは…」
Q&A
Q 牢屋に入れられたモブ達はどうなったんですか?
A たっぷりお説教された後、解放された…ならいいですね。




