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果たして腐女子とラブコメはできるのか?

前回のあらすじ


え?ニートが女の子の部屋で寝泊まり?。いつからラブコメになったんだ?。





登場人物紹介


萩山レンジ(ニート) ニートからヒモにランクアップしそう。


塩入凪沙(腐女子) リアルの恋愛とかめんどくさいとか思ってる腐女子。


田中 ありとあらゆる面でポンコツっ振りを発揮しているが、実は研究者としては有能だったりする。


天城ショウタ(ショタ) おっさんを手玉に取るのがうまい小悪魔系天使。


鬼塚ケイ (犯罪者) かつてニートと共に島でのデスゲームを過ごした仲間。現在も記憶を失っているが、島でのデスゲームの前に独自で調べていた資料から田中さんの所在を掴み、なんとかデスゲームに参加することが出来た。いろんな人から住所を特定されている田中さんのセキュリティーはガバガバである。


朝、鳥のさえずりでニートは目を覚ます。


見慣れないその部屋にいることに少し寝ぼけながら、徐々に頭を回転させて行く。


やがて、自分がここに寄生していたという事実を思い出し、ついでに辺りをキョロキョロと見渡す。


部屋には一人の少女が机に突っ伏してスヤスヤと寝息を立てていた。


机の横から見える朝日に照らされた彼女の横顔をしばらく見つめ、そっと掛け布団を彼女の肩にかけた。


そんなニートに気が付いたのか、彼女はゆっくりと目を覚まし、寝ぼけた頭でニートの顔をぼうっと見つめる。


ニート「そんなところで寝てたら、風邪引くぞ」


ニートは優しく、そしていつになく爽やかに彼女に声をかけた。


朝日に照らされて、いつもより輝いて見えるニートに、彼女は言葉を返した。


腐女子「お前がベットを占領してたせいだろ、ボケ!!」


ニート「なんだよ?。布団かけてもらったのにありがとうも言えないのかよ?」


腐女子「どの口が言うか!?。っていうか、お前こそ養ってもらってるくせに、ウチに来てから一度もありがとうなんて言ってないだろ!?」


ニート「養ってもらうことを当然と思わせることがニートの基本戦術だからな、それなのにありがとうなんて言うわけにはいかないだろ?」


腐女子「薄々気がついてたけど、ほんとゴミ屑だな!!」


ニート「それはそうと…同じ部屋で一夜を共にした朝の女の子の横顔のはずなのに、お前の横顔になんのときめきも感じなかったのはなんでだ?」


腐女子「気持ちは分かるけど、お前それ女の子に絶対言っちゃダメなやつだからな!?」


そんな感じで朝から痴話(?)喧嘩をしていると、ニートのポケットから携帯の着信音が聞こえて来た。


それはここに来る前に田中さんから受け取った黒いガラパゴス携帯であった。


腐女子「携帯の着信音?。いまは通信が制限されているから通話なんて出来ないはずなのに…」


ニート「とりあえず、応答してみるか…」


電話越しに聞こえて来たのは、楽しい、仲良し、かわいそうで有名なあの人からの電話であった。


田中「もしもし?ワシだ、田中だ」


ニート「どうした?総一」


田中「当然のように下の名前で呼んでじゃねえよ。馴れ馴れしい」


ニート「俺とパパとの仲じゃないか、そんなの気にするなよ」


田中「金輪際、パパなんて呼ぶんじゃねえ。すりつぶすぞ?」


ニート「そんな悲しいこと言うなよ。あともう少しで完璧に田中家の一員になれてたのにさ」


田中「さすがのワシも家庭の異物混入には気がつくわ」


ニート「そんなこと言ってるけど、気がつくまで30分くらいかかってたからね、田中さん」


田中「たった30分で気が付いたんだから、そこは褒められるところだろ?」


ニート「え?…お、おう。田中さんがそう言うならそうなのかもな…。でも、俺もあのときは手を抜いていたからな。俺が本気を出してたら、お風呂で背中を洗いっこした後に、湯船で『お前が生まれた頃はどうのこうの…』っていう思い出話に一緒に浸るくらいのことは出来たけどな」


田中「なんかお前ならそこまで出来そうな気がしてしまう辺り怖いんだよな…」


ニート「それで、何の用だよ?田中さん」


田中「お前、結局デスゲームに参加することにしたのか?」


ニート「ん?ああ、バッチリ参加してるぞ。田中さんに頼まれたしな」


田中「そうか…結局参加してくれたのか…。それで、進捗はどうなってる?。お前はいま、デスゲームでなにをやってるんだ?」


ニート「えっと…見知らぬ腐女子に拾われて、その家族に養われながらも、発酵室で一夜を過ごしたってところだな」


田中「お前なにやってんの?。…いや、ほんとなにやってんの?」


ニート「養ってもらってんだよ」


田中「なにしにデスゲームに参加してんだよ?」


ニート「え?そりゃあ、養ってもらうためだぞ。…帰る家も無くなったし」


田中「ほんとなにしに来たんだよ?」


ニート「っていうかさ、このデスゲームも全然殺伐としてないし、やるべきことも無いんだよね」


田中「平和なのは初めだけだ。デスゲームというよりも、今回はゾンビパニックと捉えた方が分かりやすいかもしれんな。例の病気の感染が少しでも広まると、鼠算的に感染は進行する。そうなれば、もう兎歩町は地獄のような世界になるだろう」


ニート「なるほど、俺はそれを食い止めればいいってことだな?」


田中「そうだな。感染を食い止めるのがベスト…だが、問題はそれだけでは無い。兎歩町の住人の中には、どうにかして町を脱出しようとするものも出て来るはずだ。だが、政府は一人も逃すつもりは無い。…理由は言わずともわかるな?。だから、なるべくそういう犠牲者が出ないようにもして欲しい」


ニート「要は、なるべく全てを穏便に済ませってことだな?」


田中「そういうことだ。例の病気はこちらで研究も進んでいる。だからいずれは治す方法も分かるはずだ。それまで、お前には兎歩町を守って欲しい」


ニート「…オーケー。俺もヤバイことになってもらっちゃ困る。もしかしたら養ってくれなくなるかもしれないしな。それに、俺も死にたくねえ」


田中「頼んだぞ。これはお前なら…いや、お前にしか出来ない出来ないことだ」


ニート「まぁ、任せろ。伊達にデスゲームで二回も白星掴んで無いからさ」


田中「まったく…お前ほどこういうときに頼もしい奴がいないのが困る」


ニート「もっと素直に褒めてもいいのよ?」


田中「遠慮しておく。…それと、実は犯罪者のやつも兎歩町にいるようなのだ」


ニート「…え?犯罪者が?」


田中「奴は記憶が戻っていたわけでは無いが、島でのデスゲームに来る前に、それまで調べたデータが残っていたようでな。そのデータを頼りに、ニートがワシの家から帰った後に、ワシの所までやって来たんだ」


ニート「…へぇ。それで、田中さんから話を聞いて、この町に来たってことか?」


田中「そうだ。あいつならお前に協力してくれるだろうし、まずは合流することを勧める。奴にもこの黒い携帯電話を渡しておいたから、いまからその番号を教える」


ニート「それは頼もしいぜ。田中さんもたまには良いことするよな」


田中「一言余計だ。それと、もう一つ」


ニート「え?まだなんか用件あるの?。随分通話長くなってるけど、通話代とか大丈夫?。あとなんで通話できるの?」


田中「此の期に及んで通話料なんて庶民じみた心配してんじゃねえよ。その携帯はな、専用の衛星を経由して通話をしているんだ。その衛星は政府によって規制されて無いから、その携帯なら兎歩町でも連絡が出来る」


ニート「へぇ…それで、用事って?」


田中「ショタ君がお前と話したいそうだから、いまから電話を代わるぞ」


ニート「え?ショタが?。っていうか、良いのか?ショタが電話しても」


田中「いまはワシしか研究所におらんからな、誰も咎めたりせん」


ニート「さすが、田中さん。自慢のパパなことはある」


田中「はははっ…すりつぶすぞ?」


そんなこんなで田中さんはショタに携帯を渡した。


ショタ「もしもし?お兄ちゃん、元気?」


ニート「おぉ!ショウタ!お前こそ元気だったか!?」


ショタ「うん、田中のおじちゃんがいろいろよくしてくれるから元気だよ」


ニート「ごめんな、お前だけそんな目にあわせて…」


ショタ「お兄ちゃんが他人の心配とか…変なものでも食べたの?」


ニート「馬鹿野郎、そこは素直に心配されとけよ」


ショタ「というか、僕の心配よりも自分の心配をするべきだよ。お兄ちゃんはこれから大変になるよ」


ニート「らしいな。…正直、あんまり実感は無いけど」


ショタ「お兄ちゃんらしいね。多分お兄ちゃんがそう思うなら、それで良いと思うよ」


ニート「そうだな、俺は俺なりのやり方でやってみるよ。だから、お前もお前なりに頑張れよ」


ショタ「うん、僕も頑張るよ。だから…一緒にお母さんとの約束を守ろうね」


ニート「あぁ…全てを茶番に変えてやるよ」


ショタ「うん。それじゃあ、田中のおじちゃんに電話を代わるよ」


ショタがそう言うと、再び電話からは田中さんの声が聞こえて来た。


田中「ニートよ、お前に託したからな」


ニート「田中さんこそ、ショウタをよろしくな」


ようやく通話が終了したところで、ずっと隣で話を聞いていた腐女子が話しかけてきた。


腐女子「随分と長話だったけど…田中さんって誰なの?」


ニート「田中さんは…2番目のパパかな?」


腐女子「え?なにその複雑な家族構成は?」


ニートの養われし冒険は、まだまだ続く。




おまけ


凪沙家の父の苦悩






最近、ウチの家族が一人増えました。


娘の凪沙が拾って来たという彼はニートだそうです。


それ以外はなにも知りません。


ニート「お父さん、なにも聞かずにお小遣い頂戴」


さらに図々しいです。


そんな彼に、年頃の娘を持つ私としては警戒心を持たざるを得ません。


娘と妻はなぜか彼に懐柔されてしまったようだが、私までこんな屑に心を許すわけにはいかない。

おまけにこいつは娘の部屋で寝泊まりしてやがるし…。でも、妻も娘も当然のようにあしらうから、強く否定もできないし…。


ニート「ねぇねぇ、お金頂戴よ、お父さん」


父「お前なんぞにお父さんと呼ばれる筋合いは無い」


ニート「そんなこと言わないでお金頂戴よ、3番目のお父さん」


父「やらんと言ったらやらん!!。…ってか、3番目のお父さんってなんだよ!?」


ニート「お願いだよぉ〜、お金頂戴よぉ〜」


父「第一、そのお金でなにを買うんだよ?」


ニート「なにって…お米だよ?」


父「米だと?。なぜそんなものを…」


ニート「こんな状況だし、いつお米が買えなくなるかも分からないから、長持ちする食料を確保したいんだよ、この家のために。それに重たいから、俺が率先して買いに行きたいんだよ、この家のために」


父「…そういうことなら、仕方が無いか」


ニート「ありがとう、お父さん!!。お米たくさん買ってくるね!!」


父「だから、お父さんだなんて呼ぶんじゃ無い」


彼のことはなにも知らない。


だが…どうやら彼は、悪いやつでは無いようだ。


こんな状況じゃあ、いつ男手が必要になるかも分からないし…少しだけならこの家に置いてやっても良いのかもな…。





ニート「やったぜ、3人目のお父さんから軍資金をチョロまかしたぜ」


腐女子「ほんと、お前屑だよね

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