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つまり末永く養ってくれるってことですか?  作者: なおほゆよ
学園じゃないラブコメ編
29/57

月明かりとカグヤ姫

前回のあらすじ


生徒会の企ては阻止したし、感染者のタケシはタケシだし…これでハッピーエンドだぜ!!…とはならないよね。




人物紹介が必要そうな人物紹介


シバ先 兎歩高校の教師。教師陣も何人か必要だろうなと特に用途も考えずに生まれた結果、モブ以上にモブしているモブ。


シロたん ニート達のクラスの担任といういいポジションにいるのに、地味に影がうすいモブ。


田中 モブ。



少し厳しいところはあるけど優しいお母さんと少し親バカなところはあるけど私のことを第一に考えてくれていたお父さん。


二人に囲まれた私は幸せに暮らしていた…あの日までは…。


血に支配され、真っ赤に染まった部屋で私の手には鈍い銀と血の赤が混ざりあった一本の包丁…そしてピクリとも動かなくなった横たわるお父さんの姿。


どうしてそんなことになってしまったかと聞かれたら…私はただ怖かったからとしか答えようがない。


私の帰りが遅くなったことを心配したお父さんがしつこく私に問いただしてきたことに恐怖を感じてしまった私は…気が付けばこうなってしまっていたのだ。


あまりに突然で、残酷な惨劇を目の当たりにしたお母さんは、なにを思ったか私から包丁を奪い取り、そして…私に何度もこう言い聞かせた。


「忘れなさい…このことは、忘れなさい…」


そしてにっこりと笑ってみせた。


私の将来と心的外傷を考えたお母さんとった行動は…身代わりであった。


その時のお母さんの頬を伝う涙を…今の私は鮮明に思い出せる。


それから数日間、私とお母さんは何事もなかったかのように日々を過ごした。


今思えばそうしたのは、私がやったという証拠を消すための時間稼ぎだったのだろう。


ただ、時々あの日のことを思い出し、突然暴れ出す私をお母さんは無理やりに抑え込むことが何度かあった。


そのせいか、その当時の私の身体には至る所に傷跡や打撲痕のようなものが見られ、マスコミはそれを虐待の跡だと報じた。


夫を殺害し、子供を虐待する母親。


それが…人から見た私のお母さんの姿。


だけど…だけどそれは…。







カグヤ「お母さんは悪くないの。悪いのは…私なの」


ニート「………」


幼馴染の打ち明けた衝撃の過去にニートはなにも言えずにただただ黙っていた。


カグヤ「…ごめん、引いたよね」


ニート「いや、そういうわけじゃなくて…なんていうか…その…」


カグヤ「あぁ…ごめん、いきなりこんな話されても困るよね」


ニート「…うん、なんて言えば良いか分からない」


カグヤ「そうだよね…」


ニート「その…そのことはいままで誰にも言わなかったの?」


カグヤ「ううん、事件の当時は私も主張したんだけど…当時は幼かったから、誰も信じてくれなくて…。子供の虐待、夫の殺人、それでも母親をかばう健気な悲劇のヒロイン…それが世間から見た当時の私」


ニート「………」


カグヤ「それからの私は、ずっと一人で生きていこうって思ってた。もうこんな悲劇を二度と繰り返さないために…私自身への戒めのために…」


ニート「…一人で生きていくなんて、つらいだろ」


カグヤ「そうだね。でも、私にはレンジ達がいてくれたから…なにも怖くはなかった。だから、レンジにはすごい感謝してる」


ニート「別にいいよ、お互い様だから」


カグヤ「そう言ってくれたらありがたい」


ニート「…カグヤは、これからどうするの?」


カグヤ「どうするって?」


ニート「その…死んだりしないよね?償いとか称して」


カグヤ「ははっ、そんなことしないよ。そんなことしたらお父さんとお母さんに申し訳ないし。…二人のためにも生きたい」


ニート「それなら良かった」


カグヤ「でも…向き合うって決めたんだから、なにか償わないとね。…まぁ、償うなんて絶対に出来ないんだけどね」


カグヤはそう言って自分への皮肉のように笑って見せた。


ニート「本当はつらいくせに…無理に笑うなよ」


カグヤ「そういうわけにはいかない。この笑顔は私なりの償いその1だからね」


ニート「………」


見せつけるかのようににっこりと笑ってみせるカグヤの笑顔をニートは少し不安に感じてしまった。


カグヤ「さて…話してたら眠くなってきちゃったよ…」


ニート「そっか、それなら俺はそろそろ帰るよ」


カグヤ「うん、いろいろとありがとね、レンジ」


ニート「別にいいよ。じゃあ、おやすみ、カグヤ」


カグヤ「うん、おやすみ」


そう言ってニートが病室から出ようとした時、カグヤが思い出したかのように口を開いた。


カグヤ「あと…今日は楽しかったよ、レンジ」


月明かりに照らされたカグヤの顔は少し照れ臭そうであった。







腐女子「元気そうで良かったじゃん、カグヤ」


病室から出たニートを待っていたのは、腐女子であった。


タケシとともにお化け屋敷に行ったは良かったものの、突然で走り出し、こけて気絶し、病院に搬送されたタケシに付き添っていた腐女子はしばらくしてカグヤも同じ病院に搬送されたと聞いて、ここまで来たのである。


ニート「もしかして、話聞いてた?」


腐女子「…二人の恋路を野次馬根性で病室の外から見守ってたんだけどさ…突然カグヤがあんなこと言い出すから…悪いとは思ったけど、話は聞かせてもらったよ」


ニート「そっか、だったら話は早いな。腐女子はどう思う?」


腐女子「カグヤの話を盗み聞きしてて、私は一つ思い当たる節があるよ」


ニート「やっぱり?。俺もその可能性がありうると思うんだ」


腐女子「もし、私達の予想通りだったら…事態は最悪なことになりかねないわ」


ニート「そうだな、どうにかして真実を確かめないと…」


腐女子「あんたの二番目のパパ…えっと、名前なんだったっけ?」


ニート「田中」


腐女子「そうそう、田中田中。あの人に聞けばなにか分かるんじゃないの?」


ニート「それもそうだな。早速電話してみるわ」


そう言って電話を取り出し、田中さんに連絡をとるニート。


田中「…もし…もし…」


携帯からは田中さんの消え入りそうなか細い声が聞こえてきた。


ニート「…なんか元気なさそうだけど…大丈夫か?」


田中「ここ4日くらい寝ずに徹夜で研究しててな…それがひと段落して、いまからようやく寝ようと思ってたところなんだ」


ニート「そうなんだ、ご苦労様。悪いけどもう一仕事頼むわな」


田中「…今何時だと思ってるんだよ?」


ニート「まだ21時だろ?」


田中「ワシは普段、この時間に寝てるんだよ」


ニート「小学生みたいな時間に寝てるんだな」


田中「ちなみに、朝は4時起きだ」


ニート「違った、ジジイみたいな睡眠時間してるな」


ちなみに補足として述べておくと、現在の兎歩町は封鎖されているため、本来ならば病院はまともに機能していないが、町に住んでいた医者や看護婦が有志を募って現在のこの病院を経営している状態にある。そのため、面会などの決まった規則も緩く、こんな夜遅くでも面談が可能になっている。…以上、補足でした。


田中「それで、こんなに眠いのに何の用だ?」


ニート「そう言わずにもうひと働きしてくれよ、田中」


田中「頼むから寝かせてくれよ…」


ニート「まぁまぁ…今夜は寝かせないぜ、総一」


田中「マジでやめろよ、そういうの。…一体誰得なんだよ」


ニート「それで、田中さんって例の病気の感染者のリストとかって把握してたりする?」


田中「あぁ、現在確認されている感染者のリストのデータは持っているが…それがどうかしたのか?」


ニート「調べて欲しい奴がいる。今から10年ちょっと前に、兎歩町で起きた通り魔事件のことなんだが…」


こうして、田中さんの5日目の眠れぬ夜が幕を開けた。






一方、こちらは兎歩町の治安を守るために設置された兎歩委員会の会議。


兎歩委員会のメンバーは委員長の犯罪者の招集によって集められ、今日の前生徒会長のチンピラの脱出劇が失敗に終わったことの連絡を受けていた。


シバ先「くっくっく…やはりチンピラの脱出劇は失敗に終わったか…」


シロたん「だが、奴は四天王最弱。次はこう上手くは行くまい…」


犯罪者「…なにやってんだ?」


シバ先「いや、一回やってみたかっただけ」


シロたん「やっぱり会議って言ったらこのくだりを一回や二回はやっておかないと…」


犯罪者「いい大人が揃いも揃ってこれか…」


シバ先「それで…チンピラは生徒会長をとうとう引退したのか?」


パツキン「はい。後は私に任すとのことで…」


シロたん「彼は今どこにいるの?」


パツキン「それは分かりませんが…おそらくは一人でまた別の脱出方法を探していると思います」


犯罪者「あいつも諦めが悪いな」


パツキン「そういう人ですから、あの人は」


犯罪者「…お前も前生徒会長みたいに脱出を考えてるのか?」


パツキン「私は…脱出よりもまずは現状をしっかり把握することから始めるべきだと思ってます。その上で、対策を考えたいです」


犯罪者「お前が慎重派で良かったよ」


パツキン「…まぁ、あの人に比べたら慎重でしょうね。だからといってなにもしないわけにはいきません、今後このようなことが起きないためにも、そろそろどうして兎歩が封鎖されているかを話してもらえませんか?」


犯罪者「………」


パツキン「今回の文化祭で、生徒たちは焦燥感に駆られています。今にもあの演劇で見たような悲劇がこの町で起きるんじゃないかと…みんな不安に思ってます。なにか変な噂が広まって、いたずらに情報に踊らされるよりも、ここはハッキリと真実を伝えて冷静に行動してもらうことも必要だと思います」


犯罪者「………」


言うのが吉か、言わないのが吉か…犯罪者は迷っていた。


ここで真実を言えば、ここにいる人達はきっと協力してくれるであろう。しかし、町の人達が真実を知れば、町はパニックになることは間違いない。


そうなってしまえば…もはやこの町は…


犯罪者「…ダメだ、これは話せない」


パツキン「そうですか…残念です。…でしたら、私達兎歩高校の生徒会はこの委員会を抜けさせてもらいます」


犯罪者「なに!?」


パツキン「とは言っても、治安の維持のための協力は惜しみません。ただ、我々は我々で動くというだけです」


パツキンはそう言って、他の生徒会メンバーを引き連れて会議室を出て行った。


兎歩高校との大きなパイプ役である生徒会メンバーを失ったことに動揺を隠せない犯罪者に向けてシバ先は口を開いた。


シバ先「生徒が自立してなにかをやるというのは、教師としては嬉しいことです」


シロたん「だけど、それが悲劇の幕開けにならなければいいのですが…」








田中「…調べ…終わった…ぞ」


徹夜5日目の夜の明けごろ、今にも天に召されそうな田中さんの声が通話口から聞こえてきた。


ニート「…ん?ようやく終わったのか…ファァ…」


田中さんが命を削って調べ物をしている間、ニートは容赦なくグッスリと眠っていた。


ニート「悪いな、寝てたわ」


田中「構わん。お前なんか起きてたってうるさいだけだし」


ニート「せやな」


田中「それで…結果だが…お前の予想通りだ」


ニート「…そうか」


田中「12年前、兎歩町で起きた通り魔事件…その加害者は、CBKSの感染者だ。これは加害者が逮捕された後、政府の極秘の検査で判明したことだ。CBKSの感染者による通り魔事件、政府は他に感染者がいないか疑ったが、公になっていた被害者は一人だけで、しかもその事件によって死亡していた。だから、政府の見解では他に感染者はいないとされていた」


ニート「だけど…公になっていない被害者がもう一人いた」


田中「そうだな。記録としては残っていないが、お前の証言が正しいのならば、被害者はもう一人いた。それが…当時4歳だった月宮カグヤだった…。つまり…この話が正しければ月宮カグヤは…」


ニート「…CBKSの…感染者」


夜が明け、兎歩町話があらたな朝を迎えた。



おまけ


Q&Aのコーナー


Q、ニートの今の服装ってどうなってるの?


A、そういえば、いろいろあって着替える時間は無かったから…あっ(察し)。

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