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兎歩に生きる人達 前編

前回のあらすじ


困った時は『お腹空いてない?』でおk。




モブ紹介


モブ崎「趣味は読書」


モブ原「春夏秋冬に恋する乙女」


モブ山「ダイレクトマーケティング」


モブ島「良い人止まり」


モブ谷「裁縫人間」


ボブ沢「陰湿なイジメが趣味」


モブ川「純然たるロリコン」


モブ部「趣味はリストカット」


モブ木「特技は藁人形作り」


モブ藤「盗撮を生業にしている」


モブ橋「グルメというよりは悪食」


モブ田「お金大好き」

10月11日、文化祭当日。


この日はまるで文化祭という祭りを祝うかのように雲ひとつ無い晴天。


そのおかげで暦はすでに10月だというのに、季節は夏であると錯覚してしまうほどの暑さだった。


しかし、暑さなど物ともせずに兎歩高校全体が文化祭で盛り上がる中、チンピラ生徒会長を人気の無いところに呼び出した犯罪者はチンピラを問い詰めていた。


犯罪者「…どうしてもこの町から出るって言うのか?」


チンピラ「当たり前じゃ。いまさらやめるわけにはいかん」


犯罪者「どうしてそこまで脱出にこだわるんだ?」


チンピラ「状況が状況じゃ、脱出を考えない方がおかしいってもんじゃろ?」


犯罪者「それはそうだが…」


それでも納得のいかなさそうな顔をしている犯罪者を見かねて、チンピラはこんなことを語り始めた。


チンピラ「…10年ちょっとくらい昔な、兎歩町で通り魔殺人事件が起きたんや。刃物を持った男が歩いていた見知らぬ女性を刺し殺したんや。刺されたのはワシの母じゃった。その日の朝、いつものように家を出て行って、病院で変わり果てた姿の母を見て、自分の無力さを実感したんや。ほんと…なんにも出来へんかった。まぁ、その時はまだガキやったし、事件現場に居合わせたわけでも無いから、何も出来んでも当たり前っちゃ当たり前やねんけどな。でもガキの頃からワシはこう見えて人一倍責任感のあってな…何も出来へんかった自分を責めたんや。責めて責めて、責め続けた結果…ワシには出来へんことがぎょうさんあることに気がついた。だから、せめて出来ることは全力でやろう…そう誓ったんや。ワシがなにかをやるって理由はそれだけのことや。それだけの理由で、私は兎歩に住む人を守るんや」


チンピラはそう語ると、犯罪者に背を向けてその場を去ろうとした。


犯罪者は犯罪者でチンピラを止める術が思い付かず、その場で突っ立っていた。


チンピラ「ああ、そや。せっかくやからあんたもワシらの演劇を見に来てな。この文化祭のトリを飾るイベントやから、なるべく多くの人に見て欲しいんや」


チンピラはそれだけを告げると、その場を去ってしまった。







一方、こちらはニート達が営ませる扶養喫茶。


まだ準備中のため、お客さんも来ていないというのに、このクラスは異様な盛り上がりを見せていた。


モブ谷「キャー!!先生かっこいい!!」


モブ部「やっぱり執事服が似合うよ!シロたん!」


シロたん「そう?。…でも恥ずかしいから脱ぎたいなぁ」


クラスの女子に勧められて男用の執事服に身を包んだ担任のシロたん。彼女は元々スタイルも良く、スレンダーで中性的な顔の持ち主であったためか、その執事服が異様に似合っており、そのかっこよさに女子達がキャーキャー騒いでいたのであった。


モブ谷「でもメイド服姿も見たいなぁ」


モブ部「いや、やっぱりシロたんは執事服だよ!」


女子の着せ替え人形と化したシロたんをよそに、ニートを含むモブの男共はメイド服に着替えた女子達の姿を眺めながら悦に浸っていた。


モブ島「いい眺めですな」


モブ山「そうですな」


ニート「やっぱりメイド服ってだけで女子力が5倍くらいに膨れ上がるものなんだな」


そんな感じであれやこれや好き勝手いい合うモブ共。ちなみに彼らの現在の格好は上から順にナース、キャビンアテンダント、ミニスカサンタである。…うん、需要無いね。


そんな中、未だに着替えてなかった腐女子にニートは話しかけた。


ニート「腐女子は着替えないのか?」


腐女子「いや、私はいいかな」


ニート「なんで?」


腐女子「だってさ、私がメイド服とか可愛い格好しちゃったら、私の隠れた可愛さが浮き彫りになって、腐女子っていうアイデンティティーが消えちゃうだろ?」


ニート「安心しろよ、そんな可愛さなどただのまやかしだから」


腐女子「ふっふっふ、私のメイド服姿を見て同じことが言えるかな?」


ニート「黙ってさっさと着替えろよ」


腐女子「仕方ねえな、今に見とけよ」






数分後


メイド服に着替えて颯爽と現れた腐女子、その晴れやかな姿を見てクラスのモブ達も思わず言葉を漏らした。


モブ島「なんていうか…普通だな」


モブ山「想定した通りだな。まさに腐女子がメイド服を着たって感じ」


腐女子「もうちょい褒めてくれてもええんやで?」


ニート「…おかしいな、メイド服を着たら女子力が5倍くらいに膨れ上がるはずなのに…女子力の値に変化が見られない」


腐女子「それはどういうことだよ?」


ニート「そういうことだよ」


腐女子「オーケーオーケー、お前らの私に対する評価はよく分かった。お前達は別に悪く無い、ただただ正直な感想を言ってくれただけだからな。でも、あえて一言言わせてくれ…そんなんだからお前ら彼女が出来ないんだよ」


モブ島「やめろよ…」


モブ山「こんなめでたい日に現実を突きつけるのは良くない」


ニート「それでも俺らは生きてるんだよ」


腐女子の発言によって一気にテンションがガタ落ちしたモブ共。


だが、教室にメイド服に着替えたカグヤが入ってくるや否や、そのテンションは一変した。


カグヤ「結構恥ずかしいね、メイド服って」


モブ島「可愛えええええええ!!!!!」


モブ山「やっべえわ、萌えるわ!!!!!」


腐女子「清々しいほど私の時と反応が違うな」


メイド服に着替えたカグヤに群がり、ノイズをばらまくモブ共。しかし、ニートは口をぽっかり開けてまま惚けていた。


カグヤ「ご主人様、私、似合っておりますか?」


そんなニートにカグヤは可愛らしいメイドの仕草で聞いて来た。


ニート「に、似合ってんじゃん」


カグヤを直視出来ないニートは視線をそらしながらそう言った。


カグヤ「はははっ、ありがと。ニートも似合ってるよ、ミニスカサンタ」


こうして、ニート達の扶養喫茶がオープンした。






扶養喫茶はその目新しさとコスプレが出来るという特徴もあってか、なかなかの繁盛を見せていた。


執事服に身を包んだ担任のシロたんは完全に執事に成り切って接客をしていた。


シロたん「それでは、只今よりオムライスに私めがケチャップをかけさせていただきます」


素早い動きでオムライスにケチャップをかけ、器用に文字を書くシロたん。


お客「なんて素早くて正確な動きなんだ…」


お客2「しかもケチャップなのに達筆だと…」


書道のコンクールに出せば金賞を貰えるくらい達筆な文字で『ご来店ありがとうございます』と書いたシロたん。


その甲斐あってか、なかなか評判が良かった。


一方、扶養喫茶の醍醐味である人を働かせるという試みも順調に機能していた。


小さな女の子を連れた親子が仲睦まじくホットケーキを焼いたりしていた。


モブ川「ハァハァ…幼女だ…幼女がいるぞ…」


純然たるロリコンのモブ川が写真に撮ったら思わず黒い線で目を隠したくなるほど危ない目でよだれを垂らしながらロリを見ていた。


ボブ沢「これは通報した方がいいのでは?」


モブ藤「どこにだよ?。いまの兎歩町は警察なんか機能してないぞ?」


モブ木「こんな犯罪者予備軍でも放置するしかないのか…」


ボブ沢「モブ川、幼女を見守るのもその辺にしておけ。これ以上は犯罪だぞ、存在が」


モブ川「あぁ、すまない。最近ロリ成分が不足していてな…思わず犯罪に走りそうになってた」


モブ藤「ロリ成分の不足って…逆にいつ補給する機会があるんだよ?」


モブ川「普段はネットを使って児童ポルノを漁ってるから満たされてるんだけどさ、いまはネットが使えないから漁れないんだよ」


モブ木「分かるわぁ。俺もネット使えないからその辺が困ってるんだよね」


ボブ沢「どっかにエロ画像を大量に収集してるやつはいないのかな…」


モブ藤「このクラスにそんなやつがいたらなぁ…モブ川も俺たちも救われるのに…」


モブ木「いないよなぁ、そんなに大量にエロ画像を持ってるやつなんか…」


モブ崎「ふっふっふ、誰か私を呼んだかね?」


ボブ沢「お前は…R18足長おじさんのモブ崎!!」



モブ藤「常日頃からエロ画像が詰まったUSBを所持しており、道行くエロに困っている人に配り歩くという聖人の鏡、モブ崎!!」


ボブ沢「しかも一目見ただけでその人の好みのエロ画像を見抜く能力【エイティーンアールアイ】の持ち主、モブ崎!!」


モブ藤「だが、その代償として女子からの好感度は底辺のモブ崎!!」


ボブ沢「『俺はエロ画像と添い遂げ、墓に入る』と豪語するモブ崎!!」


モブ藤「いつもお世話になっております、モブ崎!!」


ボブ沢「今後ともどうかよろしくお願いします、モブ崎!!」


モブ崎「ふっ、なにも言わずにこれを受け取り給え」


そう言うとモブ崎はそのにいたモブ共一人一人にそっとUSBメモリを握らせた。


モブ藤 ボブ沢 モブ川 モブ木「モブ崎あああああああああああああ!!!!!!!!」


こうして、男たちはその絆を深め合ったとさ…っていうか、こいつら文化祭になにやってんだろ?。





扶養喫茶も順調に波に乗り、繁盛しながらも落ち着きを見せていた。


パツキン「ニート、今のうちに文化祭を見て来たら?」


ニート「ん?いいのか?」


パツキン「うん、いま落ち着いてるし…行くのならいまだと思うよ。…ちょうどカグヤも今は手が空いてるし」


ニート「カグヤも?」


パツキン「腐女子から聞いたよ?。二人で文化祭を見て回るんでしょう?」


ニヤニヤしながら小声でそんなことを聞いて来るパツキン。


ニート「ま、まぁ…そのつもりだけど…」


パツキン「やるじゃない。しっかりエスコートしなよ」


そう言うとパツキンはカグヤを連れにどこかに行ってしまった。


数分後、メイド服のままどこか気恥ずかしそうにニートの元に現れたカグヤ。


カグヤ「ごめん、お待たせ」


ニート「だ、大丈夫」


カグヤ「じゃ、じゃあさっそく行こっか」


そして二人は教室を後にした。


こうして、二人の文化祭デートが幕を開けたのだった。








腐女子「あれ?もう二人とも行っちゃったの?」


パツキン「うん、初々しい感じのまま行っちゃったよ」


腐女子「…ミニスカサンタのまま?」


パツキン「うん」


腐女子「………」


教室に残された腐女子は一抹の不安を拭えなかったとさ。



おまけ


モブ島とモブ山とニートがそれぞれナース、キャビンアテンダント、ミニスカサンタにコスプレするにあたって。


モブ島「…すね毛を剃るか、剃らざるべきか…」


ニート「早まるな!いくらすね毛ボーボーのままミニスカートはマズイとはいえど、すね毛を剃ってしまえば一体どれだけの代償を払うことになるか…」


モブ島「しかし!こんな毛がボーボーの汚らしい素足を晒すわけには…」


ニート「だがこの一時の恥のために今後体育の授業とかでハーフパンツに着替えるときとか、一人だけツルッツルの足で挑むことになるんだぞ!?」


モブ島「分かってる!だが…だがしかし…」


モブ山「下らぬことで迷うでない」


モブ島「モブ山?」


モブ山「毛を剃るか剃らないか…その程度でガタガタ抜かすんじゃない」


ニート「なぜこんな非常事態にそんなに落ち着いていられるんだ!?」


モブ山「ふっ、お前らとは覚悟が違うのさ」


モブ島「覚悟だと?」


モブ山「見るがいい!こいつが俺の覚悟ってやつだ!!」


モブ山がそう言いながら制服のズボンの裾をたくし上げると、そこからは真っ白で光り輝く毛一本もない美しい足が姿を現した。


モブ島「ま、眩しい!!」


ニート「モブ山…その足は…まさか!?」


モブ山「そう…脱毛したんだよ!!全てはこの日のために!!」


ニート モブ島「モブ山あああああああああ!!!!!!!!」


結局、ニートもモブ島もすね毛を綺麗さっぱり剃り上げたとさ。

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