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運命の前夜祭

前回のあらすじ


湯気さん「他の女なんか見ないで!!お願いだから私だけを見ていて!!」

10月10日、夜。


いよいよ待ちに待った文化祭を明日に控えるこの日の夜、ニートは発酵室で頭を抱えていた。


腐女子「…どうした?」


ニート「いや、その…いよいよ明日は文化祭だから…憂鬱で…」


腐女子「なんで憂鬱なの?」


ニート「だってさ…カグヤと二人で文化祭回らなきゃいけないじゃん」


腐女子「それのなにが憂鬱なのさ?」


ニート「いや、その…女の子と二人っきりとかなに話せばいいか分かんないし…」


腐女子「一応カグヤは幼馴染でしょ?。それなら話すこともいっぱいあるでしょ?」


ニート「でも向こうは記憶を失ってるんだよ!?。俺のことなんて覚えてないんだよ!?。それなら赤の他人と変わらないよ!!」


童貞をこじらせたニートはカグヤとのデートを目前にナイーブになっていた。


腐女子「あのさ、そんなこと言ってるけどさ…島でデスゲームしてた時、ニートはカグヤのこと覚えてなかったんでしょ?。それなのにカグヤはニートとまた仲良くなれるように頑張ってたんでしょ?…まぁ、私もその辺は詳しく知らないけどさ。それで今度は立場が逆転しただけじゃん。だったら今度はニートが頑張る番じゃないの?」


ニート「でも…女の子と二人きりとか…」


腐女子「うだうだ言ってんじゃねえよ。こっちはお前らの仲に命掛けてんるんだぞ?。あとさっきからスルーしてたけど、私も戸籍上はニートの言う女の子のはずなのだが?」


ニート「…ごめん、女性フェロモンすら腐ってるせいで忘れてた」


腐女子「謝るなよ。頼むから冗談で流してくれよ、普通に傷付くだろ」


ニート「でも不安だよ。いきなりデートとかちょっとハードル高すぎるよ…」


腐女子「そんなに言うなら…シミュレーションしとくか?」


ニート「シミュレーション?」


腐女子「私が相手の女役をやるから、ニートがしっかりエスコート出来るかシミュレーションするんだよ」


ニート「それって意味あるの?」


腐女子「やらないよりマシだろ。それじゃあ早速やってみようか。take1…スタート」


そう言うと腐女子は全身から溢れ出す腐力を抑えて、声のトーンを一段上げてニートに話しかけた。


腐女子「待たせてごめんね。まずはどこのお店に行こうか?」


ニート「え、えっと…どこがいい?」


普段とは違い、限界まで腐力を抑えた腐女子からは微かだが、女子の断片が感じ取れた。


そのせいか、女子耐性の低いニートは少したじろぎながらの返事をしてしまった。


腐女子「えっと…どこでもいいよ。レンジはどこに行きたい?」


ニート「…別にどこでもいいよ」


腐女子「そっか…」


ニート「………」


腐女子「………」


ニート「………」


腐女子「アウトォォォ!!!!」


数十秒続いた沈黙に耐えきれなくなった腐女子は声を荒げてそう叫んだ。


腐女子「開始10秒しか会話が持たないってどういうことだよ!?もうちょいなんか話すことあるだろ!?」


ニート「もうなんも言うことなんてねえよ。今のが俺が出せる最大のポテンシャルだよ」


腐女子「お前の潜在能力低過ぎるだろ!?。デート中は5秒以上沈黙させるな。相手が不安になるからなにかしら話せ」


ニート「5秒以上黙っちゃいけないって…テレビ番組の放送事故の並の基準の高さじゃねえか」


腐女子「そのくらいの意識でいろってことだ」


ニート「じゃあこういう時なんて言えばいいんだよ?」


腐女子「困った時はとりあえず『お腹空いてない?』って聞け!!。デートで女の子のお腹を空かせたままにするなんてナンセンスなことだが、女の子的にも食い意地張ってるって思われたくないから自分から『お腹空いた』とは言ってくれない。そこを察してやるのが紳士ってもんだろ」


ニート「うわぁ、女ってめんどくせえ」


腐女子「私もそう思う。まぁ、そういうわけで困った時はとりあえず『お腹空いてない?』って聞け」


ニート「なるほどね、困った時は『お腹空いてない?』ね」


腐女子「じゃあそれを踏まえた上で、take2行こうか。…どこか行きたいところある?」


ニート「いや、別にないよ」


腐女子「そっか…」


ニート「ところで、お腹空いてない?」


腐女子「うん。レンジはお腹空いてる?」


ニート「うん、まぁまぁお腹空いてる。じゃあなにか食べに行こうか?」


腐女子「うん、そうしよう」


ニート「何か食べたいものとかある?」


腐女子「うーん…特にないかな。レンジはなにか食べたいものある?」


ニート「いや、特にないな」


腐女子「そっか…」


ニート「………」


腐女子「………」


ニート「…ところで、お腹空いてる?」


腐女子「ツーアウトォォォ!!!!」


ニート「え?なにがアウトなの?。困った時はとりあえず『お腹空いてる?』って言えばいいんじゃないの?」


腐女子「お前それ絶対に本番でやるなよ!?。頼むからボケジジイみたいなことしないでくれよ!?。あと困るの早過ぎるんだよ!!」


ニート「じゃあどうすればいいのさ?」


腐女子「こういう時は幾つか具体的な食べ物の候補を挙げて、その中から女の子に食べたいものを選ばせるのがベストだ。具体的には『焼きそば、クレープ、たこ焼き、フランクフルトの中ならどれがいい?』みたいな感じだ。ポイントは候補の中に甘いものを入れておくこと。あと同時にどこかで飲み物を入手しておくこと」


ニート「ごめん、ちょっと待って…」


腐女子「どうした?」


ニート「めんどくさい」


腐女子「このくらいで根を上げるんじゃねえよ。まだこれは入門編の序章だよ」


ニート「そんな馬鹿な…ここまで出来てるならもうホテルにお持ち帰りくらいできるだろ」


腐女子「そんな尻軽女、私はお断りだけどな」


ニート「で、その後はどうすればいいの?」


腐女子「この後はお店の場所まで移動することになるんだが…移動する際に気をつけることはなにか分かるか?」


ニート「そのくらい知ってるぞ。男が車道側を歩けばいいんだろ?」


腐女子「残念ながら、校舎に車道はない。一番大切なのは歩くスピードを合わせることだ。やっぱり男の方が足が長い分、歩くのも早い。その点を考慮して、相手の歩くスピードに合わせてやれ」


ニート「…俺は自由に歩くことすらままならないのか」


腐女子「まぁ、人と人が付き合うのって、それ相応の譲歩が必要でしょ」


ニート「等身大の自分じゃダメなのか?」


腐女子「等身大でいいのは、心がイケメンなやつだけだよ」


ニート「どうして心までイケメンになることを強要されるのか…」


腐女子「それでシミュレーションの続きだけど、目的のお店に着いて食べ物を買うとき、無理して奢らなくていいから。たかが何百円って単位でも人によっては気がひけると思うし、奢るとしてもさりげなく奢ること。でもケチだと思われるのもダメだから、足りない端数分は出すとか、お金を積極的に出す姿勢を見せること」


ニート「…ごめん、ちょっと待って」


腐女子「どうした?。めんどくさいは無しだぞ?」


ニート「いや、それ以前にお金を持ってない」


腐女子「は?」


ニート「だって俺、無一文でここに来たし…」


腐女子「この前、お父さんからぼったお金は?」


ニート「ほとんどはお米代に消えてるし、もうとっくのとうに使い切った」


腐女子「オウ…マジかよ」


ニート「まぁ、もう一回ぼったくれば大丈夫かな。三番目のお父さんもちょろいし…」


腐女子「うーん…実の父親がチョロいよばわりされるのは嫌だが、カグヤとの関係を応援したい気持ちも相まって、複雑な気持ちだ」


ニート「それで、他に気をつけることはあるか?」


腐女子「細かいところで気をつけるべきことはいろいろあるけど、一番気をつけるべきなのは相手の心情を察することだな。そのためにも相手の細かい仕草や表情を観察する必要があるのだが…まぁ、これは一朝一夕で出来るようなことではないから無理にやらなくてもいい。その代わりに相手の心情を分かってないことを自覚して、思い込みや押し付けはやめろ。そうやって無難にやっていけばデートくらい乗り越え…」


くどくどと説明していた腐女子はここでニートがベットの上で寝落ちしているの見た。


腐女子「寝てやがるし…」


夜も更けて来たので眠ってしまうのは無理は無い。


しかしこのままで無事にデートを乗り切ることが出来るのか…そういう疑問が尽きない腐女子であったが、時間が時間なので明日に備えてもう寝ることにした。


そして時は流れ…文化祭当日の夜明けが訪れた。


CBKSの感染者、その感染者の暗殺を目論むテイラーD、兎歩町からの脱出を誓う生徒会。


様々な思惑が蠢くこの兎歩高校の一大イベントが幕を開けようとしていた。


果たしてニートたちはこの日を茶番にすることが出来るのか…。


そして、無事にカグヤとのデートを乗り切ることが出来るのか…。





…たぶん、デートの方は無理だな。



運命の日、10月11日が訪れた。

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