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続編に入ってから新キャラの増え方が尋常じゃない…でも、半分くらいはモブなんだよなぁ

前回のあらすじ


…ニートのイケメンが1話で治らなかった。これ、下手すれば元に戻すタイミング無くなっちゃうな。




人物紹介


ストレンジ(ニート) イケメンが治らない。


塩入凪沙 (腐女子) 罰が未だに決まらない。…でも、ある意味罰を受けている状態。


月宮カグヤ (JK) ヒロイン力が腐女子に負けてる気がする。よりにもよって腐女子に負けるのはちょっと…。


モトコ (パツキン) 髪が金髪なこと以外、特に述べることもないが、何かと出番の多いキャラ。


モブ原 恋に盲目なサークルクラッシャー系女子。…こうして見ると、女の子増えたなぁ。


チンピラ 兎歩高校の生徒会長。生徒からの人望は厚いらしい。

10月1日


気がつけば9月が終わっていた。


兎歩町が封鎖されてから2ヶ月、特に何が起きるでもなく、平穏な日々がただただ過ぎていた。


しかし、相変わらず兎歩町を封鎖している理由の説明も無いため、住民達の不満が積もり、いつしかそれが爆発するのは目に見えていた。


だからと言って、なにか出来ることがあるかというとそんなことも無く、私は何事も無く過ぎていく平和な日々にただただ甘んじているだけだった。


…いや、正確にはそれどころではなかった。


禁呪によってイケメンという仮の姿を手に入れてしまったニートことストレンジ。やつが家にいる限り、私は腐れない毎日を過ごしていた。


腐活動を封印されてだいたい3週間…中毒症状なのか私の目には時折、BLの幻覚が見えるようになってしまった。


三次元男子の普段の絡みがBLに見えてしまうことはもちろん、ノーマルのカップルの女の方を脳内でデリートし、代わりにそいつを男に置き換えて見えたり、果ては椅子(♂)を机(♂)にしまう様子ですらBLに見えてしまったり、黒板(♂)にチョーク(♂)で文字を書くことさえもBLに見えてしまったりするのだ。


とにかく、人であろうが物であろうが、二つのものが接触したり、組み合わせとして存在しているものが全て、BLに見えてしまうのだ。


腐女子「あははははは…右側のカーテン(♂)と左側のカーテン(♂)で『ピー』出来るじゃん。学校でこんな堂々と『ピー』してるなんて凄い凄い。あははははは、あははははははははははははは!!!!!!」


焦点の定まらない目で虚空を見据えながら、カーテンをカシャカシャしながら、力無く笑い続ける腐女子の後ろから、カグヤが話しかけて来た。


カグヤ「だ…大丈夫?」


腐女子「あははははは!!!凄い凄い!!。『ピー』だ!!。カーテンが『ピー』してるじゃん!!。ほらほら!カグヤも見て見て!カーテンが『ピー』してるよ!」


カグヤ「…これ、アカンやつだ」


腐女子がカグヤを学校に連れ出してからというもの、すっかり腐女子と仲良くなったカグヤは日に日に狂っていく友人の姿を見てられなかった。と、言うのも…友人の発狂はニートをストレンジにさせた自分に責任があるということが分かっていたからである。


だからと言って、なんとか彼と接触を試みようとしても、何かにつけて用事があると言ってまるでカグヤを避けるかのようにどこかに逃げてしまうのだから、どうしようもなかった。


仮に、彼とちゃんと話せたとしても、一体何を話せばいいのかも分からないため積極的に関わることもできず、ただただ悪戯に時が流れるばかりであった。


腐女子「見て見て!!。床(♂)と天井(♂)って向かい合うだけで触れることも出来ないもどかしい関係のBLに見えない!?。見てよ見てよ!!これ絶対BLだよ!!」


カグヤ「…そ、そうだね…ははははは。…さすがに床(♂)と天井(♂)は末期だね」


…早くなんとかしないと。







一方、悪魔と契約したことによって魂と引き換えにイケメンの力を手にしたニートこと、ストレンジは文化祭の準備で忙しそうにしていた。


モブ原「レンジ様、レモンの蜂蜜つけを作ったので、よかったら如何ですか?」


耳障りなくらい甲高い声でそんなストレンジに這い寄るモブ原の手にはタッパーに入れられたレモンの蜂蜜つけがあった。


ストレンジ「ありがとう、モブ原さん」


モブ原「進捗のほどは如何ですか?」


ストレンジ「うん、今で出来ることはほとんど終わっちゃったかな…」


ストレンジの活躍のおかげか、今の所できる文化祭の準備はほとんど終わっており、もうやることも少なくなっていた。


パツキン「ニート、今日はもう仕事しなくていいよ。おかげでほとんどやること終わってるし」


ストレンジ「そうかい?。本当に他にやることはないのかい?。なんでもいいから僕にやらせてくれないか?」


パツキン「そんなに仕事がしたいの?」


ストレンジ「うん、なんでもいいから何かをやっていたいんだ。…何もやってなかったら、嫌なことばっかり考えちゃうからさ」


何もやらないことを恐れているかのように振る舞うストレンジを見兼ねて、パツキンはストレンジにこんなことを提案した。


パツキン「だったら、私たちの演劇の練習を見学に来ない?」


ストレンジ「演劇?」


パツキン「実は兎歩高校の生徒会で出し物として演劇をやる予定なんだよ。これからその練習があるから、よかったら観に来ない?。客観的に見てくれる人がいたら私達も参考になるし…」


ストレンジ「生徒会で演劇を…ぜひ見学させてくれ」


パツキン「それじゃあ生徒会室に案内するよ」


生徒会室に向かって歩きながらストレンジはパツキンに聞いてみた。


ストレンジ「クラスの出し物に加えて、生徒会としての出し物もするのは大変じゃないかい?。よく文化祭にそこまで心血を注げるね」


パツキン「…生徒会は、文化祭が終わった後の10月の半ばくらいに次の世代に引き継ぎがされるの。だから、いまの三年生の生徒会のメンバーはこの文化祭が最後の仕事になるの。私には、その最後の仕事を最高の形で終わらせてあげたい人がいる」


ストレンジ「それって…まさかあのチンピラ生徒会長?」


パツキン「うん。私のこの金髪を認めさせてくれたのがあの人なの。見た目はあんなのだけど、凄い人なんだよ。知恵も勇気も行動力もあるし、なにより人望が半端ない。この学校にも、あの人を慕っている人はたくさんいるの」


ストレンジ「見た目はただのチンピラなのにね」


パツキン「ははっ、そうだね。…まぁ、恩返しというわけではないけど、私はこの文化祭を最高の形で終わらせたいんだよ。あの人のためなら、どこまでだって頑張るさ」


ストレンジ「ふふっ、その一途さはまるで恋する乙女みたいだね」


パツキン「い、いやいや!別にそんなんじゃないからね!」


ストレンジの発言を少し恥ずかしそうにしながら慌てて否定するパツキン。


そういえば、こんな露骨なツンデレは島でのニート以来だな…。女性では初だな。


そんなこんなで生徒会室にやって来たストレンジの目の前には、パツキンの他に4人の人がいた。


パツキン「紹介するね。知ってると思うけど、この人が生徒会長のチンピラ」


チンピラ「何の用じゃ?ワレ」


生まれつきの恐ろしい形相と先天性の鋭い目つきで睨みつけるチンピラ。


以前のニートなら恐怖で固まっていただろうが、イケメンの仮面をかぶったストレンジは爽やかで嫌味ったらしくない笑顔を返した。


パツキン「こっちが会計の水島さん。私たちと同じ2年生よ」


水島と呼ばれた大人しそうで物静かなその女性は深々とお辞儀をすると、口を開いて小さな声でこう言った。


水島「…おっぱい」


ストレンジ「…え?」


パツキン「あ、気にしないで。水島さんは小学生が喜んで言いそうな下品な単語以外の言葉を言うと吐血しちゃう体質なだけだからさ」


ストレンジ「…え?何その呪い?」


水島「うんこうんこ」


ストレンジ「え?ほんとにこのキャラで行くの?。このキャラいろいろとヤバくない?」


パツキン「大丈夫、私たちが温かく受け止めてあげればいいのよ」


水島「ちんちん」


ストレンジ「…受け止めきれる自信がない」


パツキン「次は会計補佐の一ノ瀬。一年生の期待のホープよ」


一ノ瀬「初めまして、一ノ瀬です」


パツキン「彼には会計の水島さんの補佐よりも、主に水島さんの通訳をやってもらっているわ」


ストレンジ「通訳?」


水島「ちんちん電車」


一ノ瀬「『一ノ瀬君は優秀な通訳で、いつもお世話になっております』と、水島さんは言ってます」


ストレンジ「…よく今ので分かるね」


パツキン「最後に、三年生の会計監査のモブ島(兄)よ」


モブ島(兄)「弟がいつもお世話になってるぜ」


パツキン「でもこいつはモブだから覚えなくていいよ」


ストレンジ「扱いが雑!!」


パツキン「以上、5人で今の生徒会をやっているわ」


ストレンジ「そうなんだ。…っていうか、5分の3が会計系の役職なのか」


パツキン「ついでだから、これから見てもらう劇の配役も教えるわ。まず、生徒会長のチンピラが主人公」


チンピラ「この学校を先導する身としては当然のことじゃ」


パツキン「それで、副生徒会長の私がヒロイン役。そして、会計の水島さんがゾンビ役」


水島「乳首」


ストレンジ「…ゾンビ?」


パツキン「ちょっとしたゾンビパニック物の演劇だからさ。…それで、一ノ瀬が車掌さん役」


ストレンジ「…え?車掌さん?」


一ノ瀬「僕、昔から車掌さんに憧れてて、電車のことには詳しいんです」


ストレンジ「そうなんだ。…でも、ゾンビ物に車掌さん?」


パツキン「まぁ、そういうこともあるよ。それで、モブ島(兄)の配役が木」


モブ島(兄)「立派な木を演じてみせるぜ!!」


パツキン「以上が配役の紹介よ」


ストレンジ「…ナチュナルにモブ島(兄)の扱いが酷い。5人しかいないんだからもっとマシな役を与えてもいいのでは…」


パツキン「それじゃあ、早速見てもらおうか」


そうして、生徒会メンバーによる演劇は幕を開けた。


ストーリーの内容はとある町を舞台にしたゾンビパニック物だった。


どことなくこの兎歩町に酷似しているその封鎖された町で感染して数を増やしていくゾンビたちから逃げて、主人公とヒロインが生き延びていく話。


話自体はよくあるB級物だったが、生徒会長のチンピラの危機感溢れる演技、思わず見ていてハラハラしてしまうヒロインのパツキン、森を感じさせる一本の樹木、下品な単語しか言えないがよく出来たメイクも相まって逆それが演出に拍車をかけているゾンビの水島さん、一人佇む一本の大きな木、たいして出番もないが裏方として舞台を支える車掌の一ノ瀬、舞台を彩る一本の大木、高校の文化祭にしては意外と凝っている舞台の装置、不自然なほど出番の多い緑の生い茂る一本の巨木。


粗末な点も多いが、それが気にならないくらいの魅力にストレンジは引き込まれた。


特に木がよかった。


そして舞台は終盤に差し掛かり、ヒロインをかばって感染してしまった主人公をヒロインが自らの手で引導を渡し、舞台はバッドエンドで幕を閉じた。


ストレンジ「うん、素晴らしい。感動したよ」


生徒会のキャラの濃いメンバー紹介にツッコミ役をやらざるを得なかったせいで、いつものニートっぽかったストレンジも、この時はイケメンで爽やかな拍手を送った。


ストレンジ「良かったよ。特に木が良かった。なんて言うか…言葉ではうまく表せないけど、マイナスイオン的なアレを感じることが出来て素晴らしかった」


モブ島(兄)「ふっ、ありがとう。練習した甲斐があったぜ」


ストレンジ「最初はただでさえ人数が少ないのに、なんで木なんかに人員を割くのか分からなかったけど、まさかあそこで木があんな活躍を見せるなんて思わなかったよ。木無しではこの舞台は成立しなかった」


モブ島(兄)「そんなに褒めるなよ。照れるじゃないか」


ストレンジ「まさかあの時、左胸のポケットに一本の樹木を入れていたことが伏線になるとは思わなかったよ」


モブ島(兄)「そんなに褒めたってなにも出ないぞ」


結局、ストレンジは終始、木をべた褒めしていたとさ。








そして、ストレンジが生徒会室を去った後、生徒会メンバーは片付けのために生徒会室に残っていた。


後片付けもほとんど終わり、その日の仕事がひと段落した時、生徒会長のチンピラが生徒会メンバーに声をかけた。


チンピラ「みんなに、今一度確認しておきたいことがある」


いつもよりも重みのある声で突然語りかけた生徒会長に生徒会メンバーに思わず緊張が走った。


チンピラ「兎歩町からの脱出の話についてだが…これは誰かがやらなきゃいけないことじゃ。この兎歩町を悲劇で終わらせるわけにはいかんからな。だが、分かっているだろうが、これは危険が伴うことだ。最悪の場合、殺させれる可能性だってある。…それでも、ワシについて来てくれるか?」


モブ島(兄)「俺は覚悟は出来てるぜ、生徒会長」


一ノ瀬「僕も大丈夫です!。一緒に行きます!」


水島「ちん毛」


パツキン「私は…どこまでもあなたについて行きます」


チンピラ「…お前らの覚悟はよく分かった。それじゃあ、見せてやろうぜ…この生徒会メンバーによる、最初で最後の最高の演劇ってやつをよ!」





決戦の日である文化祭まで…あと10日。

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