こ、これが…世に言うガールズトークってやつか…
前々回のあらすじ
ニートが告白してぶっ倒れた。
人物紹介
萩山レンジ (ニート) 告白して逃げたり、告白してぶっ倒れたり…ヘタレ。
月宮カグヤ (JK) 果たして引きこもりは解消されるのか?。
塩入凪沙 (腐女子) …まぁ、こいつは過去のカグヤのこととかなんにも知らないし、仕方ないよね。
腐女子「…ニート?。大丈夫?」
カグヤの家の前で突然倒れたニートを気遣う腐女子。
しかし、ニートには反応が無かった。
まだまだ残暑が厳しいこの季節の熱中症にでもやられたのか、それともまた別な理由があるのか…理由はともかく、どこか安静に出来る場所に移さないといけないと考えた腐女子は呆然と立ち尽くすカグヤの方を見て口を開いた。
腐女子「悪いけど、ニートをあんたの家で寝かせてやってくれない?。どこか安静に出来る場所が必要なの」
カグヤ「え…いや、それは…」
しかし、カグヤは少し困った顔をした。
腐女子「嫌なの?。あんたがこいつのことをどう思ってるのか知らないけど、こいつはあんたのことをずっと考えてて、あんたのためにここまで来たんだよ?。あんたにどんな理由があるかは知らないけど、状況も状況だから、せめて家で寝かせてあげるくらいさせてあげてもいいんじゃない?」
カグヤ「だけど…」
腐女子「まだまだ残暑も残るこの時期だ、熱中症の可能性だってある。もしこいつが熱中症とかで倒れたのならすぐに処置しないと大変なんだよ!?。それとも、あんたはこいつを見捨てるっていうの!?。あんたのために頑張ってたこいつを見捨てるっていうの!?」
カグヤ「…わかった。でも、落ち着いたらすぐ出て行って」
腐女子「恩にきるよ。あと悪いけど、こいつを運ぶの手伝ってくれるかな?」
カグヤ「…わかった」
こうして、気絶したニートはカグヤの家に侵入することが出来た。
腐女子「一つ貸しだからね、ニート」
腐女子は気絶したニートに小さな声でそう呟いた。
腐女子はニートをカグヤの家に運んだ後、カグヤから氷を貰い、ニートの首筋と脇の下に氷をあてがい、ニートの体を冷やした。
腐女子「んー…呼吸も安定してるし…とりあえずは大丈夫そうね」
町が封鎖されて病院もまともに機能しない今、救急車を呼ぶなどのことは出来ない腐女子は素人目でニートの容態を判断した。
腐女子「悪いね、邪魔しちゃってさ」
腐女子は家主のカグヤも気遣い、労いの言葉をかけた。
カグヤ「………」
しかし、カグヤの返事は無かった。
腐女子「…そういえば、自己紹介がまだだったね。私は塩入凪沙、由緒正しき腐女子だ」
カグヤ「私は…月宮カグヤ」
部屋の隅の方で腐女子の方を見向きもせずにカグヤはボソボソと小さい声で呟いた。
腐女子「なんでも話を聞けば、ニートとは幼馴染らしいじゃん。でもその割には冷たいよね」
カグヤ「…知らない。私には記憶が無いから」
淡々とぶっきら棒に答えるカグヤ。
腐女子「あぁ…記憶喪失なんだっけ?。それにしたって幼馴染に対して冷たいよね?」
カグヤ「別に幼馴染とか関係無い。…私は人と関わりたくないの」
腐女子「人と関わりたくない?。…なんで?」
カグヤ「それは…人と関わるのが、怖いから…」
腐女子「人と関わるのが怖い?。…だからってこのまま一人っきりで生きて行くわけにはいかないでしょ?」
カグヤ「…それでもダメなの。私は人と関わっちゃダメなの…」
腐女子「だからなんで?」
終始話をはぐらかすかのようによく分からず、ハッキリした答えを得られない腐女子は少しイライラしながらカグヤに質問した。
カグヤ「それは…記憶が無いから分からない」
腐女子「はぁ?…私には理解出来ないね。私の目にはあんたがヒステリー患ってるイカれたメンヘラにしか見えないよ。これだから女は…」
カグヤ「…別に、共感なんて求めてないよ」
腐女子「まぁ、あんたがどう生きようと私の知ったこっちゃないから良いんだけどさ、他の人を巻き込むのだけは止めて。こうやってあんたを思ってくれてる人を巻き込むのだけは止めて」
腐女子はそっとニートの肩に手を置いてカグヤに言い放った。
カグヤ「…私だって、別に巻き込みたいなんて思ってないよ」
腐女子「そう、それを聞いて安心したよ。…本当はさ、ニートの恋愛を後押ししてやろうとここまで付いて来たんだけどさ、あんた見てたら気が変わっちゃったよ。これじゃああんたなんかに振り回されるニートが可哀想だ」
カグヤ「………」
腐女子「別にニートの期待に応えろって言ってるわけじゃないよ。ただ単に中途半端に期待を持たせてニートを振り回すのは止めて欲しい。あんたが本気で人と関わりたくないと思うなら、ニートのためを思うのなら『迷惑だからもう二度と私に関わらない』ってニートにきちんと言ってやってやれよ」
少し嫌悪感の混ざった威圧感のある声で腐女子はカグヤにハッキリとそう言った。
カグヤ「…それもそうだね」
腐女子の説得に頷いたカグヤ。
ニートが目を覚ましたのはちょうどそんな時だった。
ニート「…ん?。ここは…」
気絶していたため状況をまるで把握できて無いニート。そんなニートに追い打ちをかけるかのように向かってカグヤが淡々と語り出した。
カグヤ「私は誰にも関わることなく一人で生きなきゃいけないんです。救いも助けもヒーローもいりません。ただただ一人で生きていく必要があるんです。だから学校も友達も青春もいりません、必要ありません。そんな私を執拗に学校に誘いに来られても困ります。手を差し伸べられても困ります。あなたの親切が、あなたの想いが、迷惑なんです。だから…」
ニートをまっすぐ見つめながらそこまで語ったカグヤの脳裏に突然、無くなったはずの記憶の断片が映り出す。
いつも一人で泣いていたところに手を差し伸べてくれた少年。一人で悩んでいる時にそばにいてくれた少年。そして…島で一緒に笑って過ごしたヒーローの姿…。
いまこの言葉を告げてしまったら…もう二度と失われてしまうことをカグヤは直感した。
だけど…思い出に甘えるわけにはいかない。記憶には無いが、私にはどうしても一人で生きなきゃいけない理由がある。
だから…だから…
突然に胸にこみ上げてくる気持ちを抑え、どうしようもなく溢れそうになる涙を隠し、止めようもなく吐き出したくなる想いを飲み込んで、カグヤはニートに言葉を告げた。
カグヤ「だから…もう…もう二度と…私に関わらないで…」
カグヤの必死の言葉を受け取ったニートはなにを言うでもなく、その場を立ち上がり、玄関の方へ歩いて行った。
玄関の扉を開けて、カグヤの元から去ろうとした時、一言だけ小さく呟いた。
ニート「…ごめん」
そして…扉を閉じて、その場で周りに構わず泣き始めた。
好きな人にハッキリと拒絶されることがこんなにも辛いことだなんて知らなかったニートは玄関の前で声を荒げて泣き続けた。
あの日の楽しかった出来事も、島でくれたあの言葉も、所詮、彼女にとってはそんなもので、こんなものが大切なものだって思っていたのは自分の思い上がりで…そして、その大切な人にもう会えないことに、ニートはひたすらに涙を流した。
そうしてずっと扉を隔てて、二人は泣き続けたとさ。
おまけ
裁判官「これより、裁判を始める。被告人、腐女子は前へ」
腐女子「…はい」
裁判官「あなたは、作者的には『ニートとカグヤのこの関係もマンネリして来たことだし、もうカグヤを復帰させてもいいだろう。家に侵入する口実も出来たことだし、さすがにカグヤとの仲を進展させるか』と考えていたにもかかわらず、あなたの心無い言葉によって進展どころか、二人の間にどうしようも無い溝を作ってしまいましたね?。これに対してなにか弁論することはありますか?」
腐女子「裁判官、確かに私は二人の溝を深めてしまいましたが、私は無実です。なぜならば私は正論しか言っておりません。私は二人のためを思って厳しい言葉を述べただけです。私の提案は二人の相互利益の関係を追求した結果に過ぎません。だから私は悪くありません!!」
裁判官「確かにあなたが言ったことは二人のことを考えた故の正論だったかもしれない。だが、結果はご覧の有様です」
腐女子「だ、だって、泣くとは思わなかったもん!!。いや、振られたニートは泣くだろうな、とは思ってたけど!まさか振った方も泣くとは思わなかったもん!!。あんなに冷たく接していたのに、ここぞという時に泣くとは思わなかったもん!!」
裁判官「過失とは言えど、罪は罪です。そして罪には罰が必要です。よってここに判決を下す。被告人、腐女子…有罪!!」
腐女子「そ、そんな!!」
裁判官「処罰は…読者に考えてもらうこととする。なにか腐女子に対していい罰があれば感想なりなんなり意見を求める」
腐女子「わ、私は悪くない!。私は無罪だあああああ!!!!!」
と、いうわけで、なにかこいつに罰を与えたいと思った人は感想やらなんやらでご意見をどうぞ。
みなさんの意見を参考に罰を与えようかなと思います。




