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ある日、目が覚めたら記憶と借金が無くなってた件について

前回のあらすじ


当たって砕ける前に倒れたニート



人物紹介


西谷マキ (アパレル)

かつてニート達と共にデスゲームを過ごしたデス友の一人。農家の娘で今は記憶を無くしたただのアパレル店員。


黒崎サナエ (ビッチ)

同じくデス友の一人。財布としてタケシを携帯しているビッチ。だが、条件を満たすことで超絶美少女のヴィッチに転生する。


タケシ MARCⅡ

今回の財布役。詳しくは前編の番外編にて。


目が覚めた時、私の中にはなにも残っていなかった。


住み慣れたどこか分からない部屋、使い慣れてた目新しいスマートホン、そして親い知らない誰かからのたくさんの着信履歴。


これが記憶喪失だと気がつくまで時間が掛かった。


残された情報、友人や知人からの話を紡いで行き、私は少しずつ私へたどり着いた。


私の名前は西谷マキ、両親は借金を残してすでに他界していて、現在はアパレルショップに勤務していたが、人から聞いた話によれば、1ヶ月ほど前から一人で旅行に行っていて、そこで事故にあって記憶を失ったとかなんとか…。


なんでもカナダに一人で旅行していたそうだが…まるでそんな実感がない。


そしてなにより気になるのが…家に届いた借金の返済を確認したという書類。


何千万という借金が最近になって一括で完済されたらしいのだ。


もちろん、私にそんな当てはなかったはず…それなのに、一体なにが…。


空白の1ヶ月、借金の返済、記憶喪失…それらから連想されるもの…これが気にならないわけがない。


しかし、それを突き止める手がかりもなかったため、私はただただアパレルショップで働く日々を過ごしていた。


幸いなことに、記憶に無くても身体が覚えていたので仕事に大きな支障は無く、忙しい毎日を過ごしていた。


そんな中、最近世間を騒がせているのはとある町の封鎖の話だった。


突然なんの前触れも無く、政府がいきなり非常事態宣言を発令し、自衛隊を使って兎歩町を封鎖し、一切の通行と通信を遮断するという事態。


なんの説明も無く突然行われたこの異常事態に説明を求める市民が連日のように国会に押し寄せ、デモ活動をしていた。


その規模はどんどん大きくなっていくにも関わらず、なんの反応も示さない政府に国民の不安と怒りが日々膨れ上がっていた。


しかし、自分のことで手一杯な私はその件がどうも他人事にしか思えなかった。


そして、記憶喪失から1ヶ月が過ぎようとしていたある日、私は勤務先で一人の女性客と出会った。


サナエ「すみません、これのSサイズってありま…す…か?」


男を引き連れて、後ろからそう話しかけて来た彼女を見た瞬間、電流のようななにかが全身を駆け巡った。


私は驚きのあまりなにも言えなくなり、ただただ黙って彼女をジッと見つめていた。


彼女も彼女でなにか思うところがあるのか、ただただ黙って私を見つめていた。


彼女のことは知らない、分からない。それなのに目と目が合って離れない、まるで出会うことが運命だったかのように…。


ただ一つ、分かることがある。それは…これが恋ではない、ということだ。


とりあえず、男と一緒にいる彼女を邪魔しないように、私は自分の連絡先が書かれてある名刺を彼女に渡すだけでことを済ました。


彼女がなにか知っているなら、多分これで十分。きっと彼女から連絡してくれると分かっていたから。


その後、彼女は普通にショッピングを楽しみ、幾つか服を購入してくれた。


マキ「お会計は現金ですか?カードですか?」


サナエ「お会計はタケシで」


タケシ MARCⅡ「はい、よろこんで」








後日、彼女から連絡を受けた私は再び彼女と喫茶店で会うことになった。


なんでも、聞けば彼女も記憶喪失なのだとか…。おまけにこの1ヶ月ほど、私と同じくカナダにいたらしい。


もしかしたら…私達はそこで出会ったのか?。しかし、確証となるものはなにも無かった。仮にそこであったとしても、借金の返済は一体なんなのかが分からない。


サナエ「まぁ、気にしたって仕方ないよ。記憶喪失の間に借金が出来たならまだしも、借金が無くなったのなら別にいいんじゃない?」


マキ「それもそうなんだけどね…額が額なだけに気になるのよ」


サナエ「へぇ、いくらくらいなの?」


マキ「5千万くらい」


サナエ「5千万っていうと…100タケシか…。確かにそれはすごい額ね」


マキ「カナダで埋蔵金でも掘り当てたのかしら…」


サナエ「きっとそのうち思い出すでしょ」


二人がそんな話をしていると、店員が十数種類のケーキを運んできた。


マキ「え?こんなにいっぱい頼んだの?」


サナエ「気にしないで。奢りだから」


マキ「ケーキなんて食べるの、もしかしたらそうとう久しぶりかも」


サナエ「そうなの?」


マキ「ずっと借金でお金に余裕が無かったから貧乏生活を強いられていたらしいのよね」


サナエ「そっか…それなら、今日はいままで食べられなかった分、食べていいよ」


そして二人はたらふくケーキを食べた後、店を後にした。


…会計?もちろんタケシで。





サナエ「それじゃあ、今日はここで解散にしようか」


店を後にした二人と財布は話しがてらいろいろ歩き回り、遊び歩いき、時間もいい頃合いになったのでお開きとなった。


マキ「ありがとう、今日は楽しかったわ」


サナエ「いいのよ。それより、力になれなくてごめん」


マキ「ううん、いいのいいの。もういいかなって思うし。…でも、また会いましょ?」


サナエ「もちろん」


そして解散した後、マキはサナエに一つ言い忘れていたことがあったことを思い出した。


それは二人がカナダに行っていたと言われている期間にカナダでボイコットが起きていたという関係が無さそうなことだったが、一応サナエにも教えておこうと思い、マキはサナエの後を追いかけた。


そして、サナエに追いつくその時、足元のなにかに躓いてサナエを後ろから押し倒すように二人して倒れてしまった。


マキ「イテテ…ごめんなさい、サナエ」


マキが申し訳なさそうに倒してしまったサナエを見るが、そこにはサナエの代わりに超絶美少女が倒れていた。


超絶美少女「イタタ…でもおかげで元に戻れましたわ」


マキ「あ、あれ?人違い?ごめんなさい!!」


超絶美少女「いえいえ、私です、ビッチです。…正確に言うなら、ヴィッチです」


マキ「え?ビッチ?ヴィッチ?」


ヴィッチ「お久しぶりですね、アパレル」





おまけ


1タケシとは、タケシ一人当たりから一年間で搾り取れる平均限度額のこと。みんなも会計をタケシで済ますときにはこの数値を参考にしよう。

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