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ヒロシのぱらぱらぱらしゅーと

芽出たし愛でたし

掲載日:2015/07/14

 洗面台の前にいました。

 自宅の、いつもの、洗面台。

 周りは日の光で明るい。

 だから、多分、昼間。


 鏡に映った自分もいつもどおり。

 鏡に映った顔もいつもどおり。


 ……ん?


 なにか違和感がありました。

 なんとなく顔を右に向けて、横目で眺めてみました。


 ……あれ? 何か生えてる?


 後頭部から真っ直ぐ上に向かって芽が出ていました。

 明るい緑色をしたグラジオラスのような芽でした。

 そう言えば、グラジオラスは小学校一年生の時に育てました。

 きれいな紫色の花が咲きました。

 ……それはさておき。

 

 え? 頭から芽が出るってどういうこと?

 そんなことってあるの!?


 私は慌てて病院に行きました。

 ごく普通の個人病院です。

 どこの街にもあるような病院です。

 診察室にいたのは、50代くらいで銀ぶちの眼鏡を掛けた優しそうな先生でした。

 先生は、私の頭から生えた芽をみても落ち着いていました。


 「それじゃあ、手術ですね」

 「え? やっぱり手術しないといけませんか?」

 「はい、これからやりましょう」


 見ると、先生はすでに青い手術着に着替えていました。

 準備万端です。

 私の方は、当然ながら、心の準備なんてできていません。


 「あの、今からですか?」

 「はい、今からです」

 「あの、麻酔は?」

 「部分麻酔をしますから」


 え? 頭の手術って部分麻酔でできるんですか!?

 知らなかったです。結構簡単なんですね……


 ということで、いきなり手術が始まりました。

 手術台はベッドでしたが、上半身を起こしたような形のままでした。


 やっぱり、芽が上を向いてるから体を起こしておく必要があるんだろうか……


 そう思っていると、ちょっと年配のシスターのような看護師さんが、私の頭に注射針を刺しました。部分麻酔の注射でした。

 すると、先生がよくわからない小さいノコギリのようなものでギコギコと。

 後頭部のあたりで作業しています。

 でも、部分麻酔のせいか痛くはありません。


 けっこう簡単な手術だったから、すぐにやることになって、しかも部分麻酔なんだ……

 まあ、芽を切るだけだからなぁ……


 そんなことを考えていました。

 すると先生が、「よし、これでいい」と言いました。

 手術が始まってほんの数分しか経っていません。でも終わりました。

 

 すると、シスターの看護師さんが、私のところに鏡を持ってきました。

 かなり大きい鏡でした。

 それを私の左横に構えました。


 !!!


 見ると、私の頭はタマネギの上の方だけ剥いたような形になっていました。

 っていうか金魚鉢のような状態です。

 そして、その中央から立派な芽が天に向かってそびえ立っていたのです。


 あれ? 後頭部の頭蓋骨はどうしたんですか?

 ホントに手術は終わったんですか?

 ……どう見ても、中身がむき出しなんですけど?

 っていうか、そもそもノコギリで芽を切っていたんじゃないんですか?


 そう思って先生の方を見ると、先生はシスターの看護師さんと一緒に満足そうな顔をしていました。

 先生が言いました。


 「大丈夫。何も問題ないよ」

 「あの、頭蓋骨は……」

 「あれはなくても大丈夫」

 「でも、頭蓋骨がないと。脳とかは大丈夫なんでしょうか?」

 「特に問題ないから触ってごらん」


 そう言われたので、おっかなびっくり頭から生えた新芽を触ってみました。


 ……あれ? 触っても特に痛くない……


 ついでに頭の中も触ってみました。

 私の脳は、ブヨブヨしていました。

 そして何となくですが、大きな球根のような形をしているのがわかりました。

 あと、頭の中には、水みたいなものが少し溜まっていました。


 へえ、これが養分なんだ……


 そう思うと、何となく納得できました。


 え、いやいや。

 こんな頭じゃ仕事に行けないよ。

 っていうかどうやって生活するの、これ?

 外を歩けないよ。

 こんな頭の人いないよ!?

 ホントにどうしたらいいの?


 心配になって先生に聞きました。


 「ホントに大丈夫なんですか?」

 「いや、普通ですよ」

 「いや、だって」

 「日常生活には支障ありませんから。ごく普通です」

 「あ、そうなんですか?」

 「はい、大丈夫ですよ」


 先生にそう言われているうちに。


 ……そっか。普通か。

 ……まあ、普通ならいっか。

 ……人の頭に何が生えていたって、自分のことじゃなきゃ誰も気にしないし。


 そう思いました。

 まあ、いっか。

 めでたし、めでたし。


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