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報復  作者: 晴彦
2/3

2 書けない

 ライターズブロックの酷いものにかかった満は、呆然とパソコンに向かって絶望していた。色々なことを試した。手書きに移行したりもした。小説とは関係の無いことも色々やった。筋肉トレーニングや有酸素運動。他にも気に入りの曲を朝から晩まで流すなど。色々やった。旅行もした。

 無駄だった。全てが無意味だとわかると空虚な気分になった。書き掛けの小説をぼんやり眺めながら、満はどうしようかと思案した。

 セミプロのようなものだろう。小説を書店に出したことはあるが、大した売れ行きにはならなかった。早まったことをしたと今でも思っているがもう遅い。

 小説を書ければそれでいいと思っていた。いつかきっと傑作がかけるし、書店に並ぶ。印税で食べていける。それが段々と目標が下がって行き、今では副業としてささやかな収入になればいいと思うほどになっていった。

 最低だと思うときもある。しかし満は最近小説のことを忘れるようになっていった。前までは努めて、仕事中に降り注ぐアイデアを打ち消すようにしていた。そうしないとまたパソコンの前に立ち、キーボードに手を置きたくなるからだ。しかし、どうアイデアがあろうとキーボードを打つ手は止まってしまう。何も書けない。アイデアがあろうと手がキーを叩く気になれない。

 怖かった。もう小説のことは忘れないと人生取り返しがつかないことになる。それが怖かった。

 物書きとしてやって行くつもりだった頃はバイトで食いつないでいた。週五日、六時間のシフトだ。見入りは少なかった。ほしいものも買えなかったが車以外は無欲な彼は引きこもって何もなくても、小説さえ書ければいいと我慢していた。ライターズブロック、それに伴い彼女ができたときに満は小説の世界に片足を突っ込んでいたが、それを引っ込め、すっぱりとやめることを決意した。

 最初は抵抗しかなかった。会社の歯車になるなんて嫌だった。定時ですら八時間、休憩も入れて九時間も拘束されるなんて。大学を出たときに二年間社会人をしていたがそのときの経験で一般的な仕事などろくなものではないと感じてしまった。再び会社員になる。残業もあるし、土曜日出勤もときとしてある。しかしそれも次第になれていくといつしか満は会社を楽しいとさえ感じ初めていた。自分の能力が通用し、職場仲間も増えて行く。人間関係は疲れるものの、社会人としてやっていけるのではないかと思った。時折降り注ぐアイデアも単なる妄想として最近は片付け始めていた。

 しかし、電車の中で満は涙を流していた。それが何の涙なのか、満はわからなかった。ただ激しい思いが体の中にくすぶっており、それが何なのか満自身わからなかった。

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