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国境の橋  作者: 西山鷹志
13/14

国境の橋 13

 あの夜、若者達が祐輔の言葉を思い出していた。戦後日本が経済大国になったのも分かるような気がする。

 祐輔は必死でクレーン車を流されないように濁流の中で、命がけで戦っている。

 あの時、裕輔が熱く語った言葉が再び蘇った。それを言葉通り実証している谷津の姿を見た。


 俺達もラオス人もベトナム人も、仕事に対する姿勢の違いが今更に分かるような気がする。

 我々も日本人のように仕事に取り組んでいたら、もっと豊かな国になっていただろうと。

 俺達を無理やり働かせる口実だと思っていた。

 だが必死で働いている姿に感じるものがあった。彼等は言った。誇りをもって仕事すると。

 それがいま目の前で実証されている。自分の国の為ではなく遠い異国の地でも損得抜きで必死に働いている。

 それも豪雨の危険な中で。これが彼等の仕事に掛ける誇りなのか……。

 三十数名の作業員は互いの顔を見た。少し遅れて数十人がやって来た。

 責任者のジオレードは、なにか胸から込み上げてくるものを感じた。そしてジオレードが叫んだ。


「おい! 俺達だって誇りはある。俺達の造った橋を守ろうでないか。見ろ! 谷津の勇気を!」

 全員が橋に向って走り出した。一緒に現場に来たビオランは黒髪を雨に濡らしながら、願いが通じたことを喜んだ。

 彼等は平井監督の所に集まった。

「監督、橋を守りましょう。俺達の橋を」

「おう来てくれたか、クレーン車が危ないんだ。いま谷津が……」


 そう言った時だった。祐輔が乗っていたクレーン車がスローモーションのようにゆっくりと傾いていった。

 危ない!! 誰かが叫んだ。クレーン車は濁流の中へ倒れていった。

 谷津! YATSU! 全員が叫んだ。ラオス人、ベトナム人達がロープを体に巻き付けて川に飛び込んだ。

 母なる川が悪魔になった。数台あるブルドーザーのライトを横倒しになったクレーン車に向けた。

 だが祐輔の姿が見当たらない。ビオランは泣きながら濁流に消えた裕輔に向って叫んだ。

「いやぁ~~ユウスケ! 死なないで!!」


 それから十五分ほどしてクレーン車の下敷きになっていた祐輔が作業員達によって引き上げられた。

 だがかなりの重症だ。胸が圧迫され肋骨が折れているようだ。呼吸も浅いし危険な状態だ。

 平井監督が駆け寄ってビオランを呼んだ。

 ビオランが祐輔の側に駆けつけて祐輔を抱きしめた。祐輔が荒い呼吸をしながらビオランを見つめる。

「ユウスケ死なないで、いま救急車が来るから。貴方が必死で働く姿に皆が感動して貴方を助けたのよ。だから死なないで」

 祐輔はビオランに抱かれている事に気付いたのか、何かを言っている。

「は……橋はどうなった」

「何を言ってるの? 自分より橋が心配なの? 橋は大丈夫よ。ユウスケが命懸けで守った橋だもの」


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