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異界の帝国  作者: 赤木
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第五話

 7月2日 10時00分

バルアス共和国首都タレス

大統領宮殿


共和国大統領 テルフェス・オルセンは出陣式で読み上げるスピーチを考えていた。


今日からカール大陸侵攻作戦が開始される。


陸軍第十五師団と海軍第二艦隊は準備を完了しており、出陣式終了後はカール大陸へ向けて出撃することになっている。


陸軍偵察隊と情報部員が行方不明であることは伝わっていたが、大統領の頭は作戦開始の喜びで満たされ、行方不明者の事など既に忘れていた。


「戦争は三十年ぶりか・・・建国から千年、我が共和国は一度も負けたことがない。東方の新興国などに負けるようなことはないだろう。」大統領はダレン・ディビス防衛大臣に向かって自身ありげに呟いた。


「当然です大統領。この戦争は共和国の圧倒的勝利として歴史に刻まれるでしょう。」


「新兵器を使う機会がこんなにも早く訪れるとはな・・・ミサイルの威力を試すには絶好の相手だろう。」


「しかし第二艦隊は輸送船団の護衛に戦力を割いておりますが・・・」


「護衛など必要なかろう。第二艦隊の任務はニホン艦隊への攻撃だ。」


「それでは最小限の護衛を残して、主力艦をニホン艦隊へ向けることにしましょう。すぐにドレイク中将に伝達します。」


タレス軍港

巡洋艦セレス


ジャックス・ドレイク中将は艦橋の指揮官席に座り込み、何かを考えていた。・・・『カール大陸近海へいち早く進出し、ニホン艦隊を撃滅せよ』・・・


その命令が届いたのは一時間前のことだ。


―最初からそのつもりだったがな―


ドレイクはニホンとの戦闘を楽しみにしていた。

「いざ出撃となると不安になるものだな。だが私はここへ戻ってこなければいかん。」


「ドレイク閣下、出陣式が始まります。我々も行きましょう。」


「うむ、行こうか。艦長、今回の作戦では空軍の支援を受けられない。陸軍上陸後に臨時の飛行場を設営するらしいが・・・それまで空軍の戦闘機は進出できないようだ。」


「私としましては、空軍の支援がなくとも作戦を完遂できると考えております。それにニホンが戦闘機を持っているという情報はありませんので、心配には及ばないでしょう。」


「そうだといいんだが・・・」


二人は出陣式の会場となる司令部前へと向かっていく。


 7月2日 17時25分 タリアニア領海内 


原子力空母飛龍・・・満載排水量10万トン超の巨艦は、タリアニア臨時軍港を出港したばかりであった。


艦載機の烈風は平成五年から調達が開始された、帝国海軍空母航空団の主力戦闘機だ。


飛龍航空隊の飛行隊長 松尾 和雄中佐は格納庫にいた。


「この戦い・・・お前の出番があるだろうか。」松尾は烈風の傍でくつろぎながら、これからの作戦について考えている。


「中佐殿、こんな所で何をされてるのですか?」


声を掛けてきたのは、最近この飛行隊に配属されたばかりの大尉だった。


「まぁ色々と考えていたところだ。」


「こいつはいい戦闘機ですよ。」


その大尉は烈風を見上げながら呟く。


烈風は可変エアインテークを持ち、外観的には空軍のF-15に近いものがある。


開発の段階でF-15を参考にしたと噂されており、それは事実だった。


主翼を折り畳まれた状態ではあるが、それを広げれば頼もしく堂々とした姿に変貌することは容易に想像できた。その逞しい外観と卓越した機動性で、ロシアの領空侵犯機から恐れられ、アメリカからスーパーゼロと呼ばれ畏怖の対象となっている。


「河野大尉だったな?俺の部下になったからには、しっかりやってもらうぞ。」


「全力を尽くします!」


艦隊は哨戒海域へ向けて航海を続ける・・・そしてバルアス艦隊もまた、決戦の場を求めて突き進んでいた。


7月3日 カール大陸中部地区 


草原地帯が広がるこの場所に陸軍の大陸派遣軍司令部があった。


現在も戦力の集積が続いており、その中には10式戦車の姿もある。


大陸派遣軍司令官の住田 孝次中将はその光景を眺めていた。


「それにしても・・・よくこんなに早く展開できたもんだ。海軍さんの輸送力は伊達じゃないな。」


「今後さらに増強される予定であります。」


「まだ増えるのか。とりあえず今は防衛線の構築を急がせろ。敵は待ってくれんぞ。」


住田は部下にそう命じた。


上空を中島飛行機製攻撃ヘリ、隼の三機編隊が航過する。


「敵さんも驚くだろうな。まさか我々が待ち受けているとは予想すらしてないだろう。」


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