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異界の帝国  作者: 赤木
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第四話

帝国が色々とメチャクチャです・・・。

駄文失礼

 6月7日 22時57分 カール大陸北部海岸

 

今にも吸い込まれそうな暗闇の中を、一つのボートが進んでいた。十人の人間を乗せたそのボートは、ゆっくりだが確実に海岸を目指して進む・・・

「まもなく海岸に到達する、装備の確認をせよ!」

一人の男が周りの男たちに指示を出すと、銃の確認を始める。

「よし!到着だ、あの茂みに移動する。静かに行け。」

男たちは姿勢を低くして移動を開始する・・・共和国陸軍第五偵察隊の十名は偵察と同時に、潜入している情報部員との接触が目的である。

何故接触する必要があったかというと、情報部員から直接来てほしいと連絡があったからだ。

「例の情報部員とは昨日から音信不通みたいです。」「捕まったのでは?」

「とりあえず俺たちは任務に集中しよう。」

偵察隊は茂みからゆっくりと出ていく・・・この時彼らは、監視されていることに気付いていなかった。



「今村、お客さんが動きだした。」

暗視装置越しに近藤軍曹の指差す方向を見ると、不審な男たちが小走りに移動している。

「いた!」 今村は直感的に銃を向ける・・・89式小銃に取り付けられたドットサイトで狙いを定める・・・

「まだ撃つな!隊長らしき人物を捕まえる。」

「よし・・・今だ!」

次の瞬間、辺りに89式小銃の射撃音が響き渡る。

共和国陸軍第五偵察隊長 トリアス・ローセン少尉は、突然の銃撃に驚愕する。

周りの部下たちは、正確な射撃の前に次々と倒されていく・・・

 「くそっ」

トリアスは先程まで隠れていた茂みへ向かおうとするが、 誰かに肩を叩かれ思わず振り返る・・・

そこには見たこともない兵士が立っていた。

「少し眠ってもらうぞ」

次の瞬間、トリアスの首に屈強な腕が巻き付く・・・

必死に抵抗を試みるも、締め付ける力は増していき、徐々に意識が薄れてくる・・・

「空挺なめんなよ」

そんな言葉を聞いた気がした。

トリアスはこの後、治安維持部隊本部へ連行され、取調べを受けることになる。

彼にとって不運だったこと・・・それは近藤軍曹が空挺レンジャーだったことだろう。

6月17日 広島県 呉

ここ呉は海軍の町として栄え、多くの軍艦を生み出してきた。戦艦『大和』・・・就役から七十年以上が経過した今でも、帝国海軍の象徴として君臨し続けている。

最大の特徴である46cm主砲、艦橋側面にはフェイズド・アレイ・レーダー、マストには衛星通信アンテナ等の各種電子装備が並ぶ。

かつて装備されていた機銃や高角砲の姿はなく、速射砲と対空ミサイルやトマホーク、ハープーン等の発射機が並んでいる。

この武装からも分かるとおり、アメリカの影響を大きく受けていることは言うまでもない。


現在、大和は出港に向けて準備を進めていた。

カール大陸より北に1200Km。そこには別の大陸が存在している。

その動きを監視していた偵察衛星が、大陸南部に戦力が集結しているのを捕捉したのだ。

監視を始めたきっかけは、カール大陸治安維持部隊が捕縛した二人の人間からの情報であった。

二人が話したバルアス共和国の存在と、カール大陸への侵攻計画は即座に本土へ知らされた。

総理大臣の山村は、帝国軍統合司令部にカール大陸防衛を指示する。


戦後の軍事改革により、陸海軍を統合運用する目的で帝国軍統合司令部が設置された。後に空軍も設立され、そこに加わわっている。

司令部は国防大臣と陸海空軍の各軍より選出された司令部要員で構成され、作戦立案から軍の運用までを任されている。

また、戦後の日米同盟では兵器の取引が積極的に行われており、その過程で帝国空軍はアメリカの戦闘機を多数導入している。

それ以外では、ミサイルや軍艦の兵装システム等も積極的に導入された。



第二次世界大戦で、中国大陸からは早々に撤退。

南方の資源確保と対米戦に力を傾けた帝国は、マリアナ沖で行われた大規模な艦隊決戦で勝利した。

この勝利の後、帝国から停戦交渉をもちかけ、アメリカ側が応じることになる。もはや日本との戦争は意味がないとの判断からだった。

交渉は有利に進み、南方の資源地帯と朝鮮半島(韓国)は帝国領として認められる。有利な条件での講和・・・帝国にとっては勝利と同じであり、講和条約が締結された日は戦勝記念日となった。

その後帝国はアメリカと同盟を結び、その関係を強固なものにしてきた。


話は戻る・・・

大和のCICは、艦橋直下の分厚い装甲に覆われた区画に存在する。この薄暗い空間を照らすのは、所狭しと並んだディスプレイと機器類が発する赤い光のみ・・・。


大和艦長 武田 政信大佐はこの空間が好きだった。

他の帝国海軍艦艇のそれよりも広いが、機器を詰め込み過ぎて逆に狭く感じる・・・

「この狭さがちょうどいいんじゃないか。」

「艦長は狭い場所がお好きだとか?」

「あぁそうだとも。この巨体の割にここは随分と狭いからな。」武田はCICの主と呼ばれる 高橋 健二少佐と妙な話題で盛り上がっていた。

「艦長、第二空母戦闘群司令部より通信です!出撃は明朝0700。以上です。」

第二空母戦闘群は航空戦隊と打撃戦隊で構成されており、この大和は打撃戦隊の指揮艦艇である。旧世界では世界最強のバトルグループとして、各国海軍に恐れられていた。

しかし何度も退役の話が持ち上がったのも事実だ。が、大和は今も現役であり、帝国海軍に居座り続けている。

「こりゃ全艦放送の一つでもしておくべきか。」

武田は艦内放送のマイクを掴む・・・

「あ〜、艦長の武田だ。明朝0700、我々は遂に出港する!カール大陸を狙う敵勢力に、この老兵の力を見せ付けてやろう。」

「いよいよ始まるのか。」

副長の 宮野 洋中佐は、自室で艦長の放送を聞いていた。

「総員、出撃に備えて準備をしておくように。以上!」


 朝霞駐屯地 陸軍第一軍団

戦後の創設以来、数々の戦場に兵士を送り込んできた第一軍団は、今回も多数の兵士を送り出そうとしていた。

戦後数十年で帝国陸軍の編成は様変わりした。

第一軍団に属する第三師団は、先遣隊としていち早く大陸へ進出することになっている。また、90式戦車と新鋭の10式戦車を装備する第五機甲師団は、第二十五師団と共に大陸中部へ展開する予定だ。


カール大陸への派兵は継続的に行われ、最終的には八万人に達する予定である。


統合司令部陸軍部では、今も作戦会議を続けていた。

「要するに敵を大陸北部に上陸させ、中部の防衛線で叩くと。」

統合司令部陸軍司令官 矢沢 要一大将が作戦計画を見ながら言う。

第一軍団長の 住田 孝次中将は頷いた。

「よし、この作戦でいく。住田中将、現地軍の指揮は君に任せる。」

「しっかり働いてみせます。それではすぐ準備に取り掛かります。」

住田は敬礼をすると部屋から出ていった。


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