エピローグ 光のこと
空が青い理由を、ユキは教えてくれなかった。
「大きくなったらちゃんと教える」と言っていたから。
でも俺はもう、ソラに教えてもらった。レイリー散乱という現象。光の波長と散乱の関係。青い光が特に散乱するから、空が青く見える。
それを知っても、また「なんで」が出てきた。
なんでその波長が散乱するの。なんで人間の目はその色を青と感じるの。なんで青は他の色より遠く感じるの。
止まらない。どこまでいっても止まらない。
でも今は、それがいいことだと思っている。
止まらないうちは、まだ先がある。
ユキに今度会ったとき、最初の「なんで」の話をしようと思っている。三歳のとき最初に聞いた「なんで空は青いの」。その答えが今こんなに広がっている、という話。
ユキは「大きくなったらちゃんと教える」と言っていたけど、俺がもう知っていたら、今度は俺がユキに教える番かもしれない。
それも「増える」ことだ。
俺がソラから教わって、ユキに伝えて、ユキがまた何かを考えて——
終わらない循環が、また一つ始まる。
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*了*
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###### あとがき
子どもは「なんで」と問い続ける。
それを止めようとする理由はない。止まったところに、次の「なんで」がある。止まり続けることは、知り続けることと同じだ。
レンが七年間積み上げたのは、答えではなかった。問いだった。
その問いが、ソラの中に入り、誓いの形になり、これから長い時間をかけて——何かを生成していく。
数字に入らないものが、世界にはある。それを知っていることが、すべての始まりだ。
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*終*




