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8.接触

新章的扱いです

「こちら、テラ星系発播種船の元クルー、テラ―フォーマーTFM05ZZ。交信チャネルのオープンを求める。」

複数の周波数をスキャンしながら一方送信して反応を待つことしばし。返信が無い状態が続く。

「こちら、テラ星系発播種船の元クルー、テラフォーマーTFM05ZZ。昨日、バッテラ街長ガワハウ氏及び、アークAIとの面談において友好関係を築くことができないと判断し、バッテラを離脱してきた者である。交信チャネルのオープンを求める。」

返信が無いので、少し、自分の状況を追加して回答を求めるが、相変わらず無線通信の応答は得られない。

「やっぱり警戒されているのかな?」

「はい。その可能性が極めて高いと考えます。そもそも、インプラントの埋め込みを嫌い、AIの異常性に気づいて支配から逃れるようにしてコロニーを作った人々の子孫ですから、できる限りアーク支配権から隠れるように生活しているはずですので。」

「まぁそうだよなぁ。あいつら、グローバリズムと言いながら一つの思想を受け付けるカルト集団みたいな連中だったから、話が合わなかったら最悪だし、トラウマも強烈だろうから、簡単に接触してもらえることは期待できないかぁ。とりあえず干渉地域を設定して、そこに着陸して出向いてもらうことを期待してみるか。」

「はい。現状安易に彼らのAIに直接接触することはむしろ警戒させることにつながると思いますので、少し時間を置くことは良策だと思います。」

「うん。わかった。

再度一方送信する。こちら・・・。貴殿達との接触を求めるが、警戒されていることは承知しているため、街の南50Km地点に当機は着陸し、防衛機能は発動させるがそれ以外の活動を停止させる。貴殿達からの接触を求めるものである。なお、当機の遠隔攻撃により街の機能を不全にすることは容易であることは貴殿らのAIによって分析してもらえば明らかだと考える。そのような行為に及んでいないことが、当方に貴殿達と有効に接触したい意思の表れであると解釈していただくことを希望する。また、当方は無線チャネルを常時開放しておくので、無線通話による接触も歓迎する。」

それからほどなくしてαは街の南50Km地点に着陸した。ここで、バッテラに目的の街(ちなみに、センガキという。)が捕捉されていない理由などを説明したい。街そのものはバッテラ及び衛星都市群から西5000km程も離れた地点に作られており、センガキからの侵攻などは全く行われないため、バッテラ住民はその存在を考える必要もないため、住民においてセンガキは認知されていなかった。アークAIはセンガキ住民がバッテラを対比するときにその動きを察知していたが、住民への建前で監視衛星を打ち上げるわけにもいかないため、その探知範囲は電波式レーダー程度のもので、5000Kmも離れてしまうと位置を認識することができなかった。この事実は、先ほどのようにベントが無線で呼びかけたとしてもバッテラとつながらないほどに距離が離れているので、位置を探知される懸念は無かったということにもつながるのである。

さて、待機である。散々働いた挙句の酷い扱いに病みかけていたベントは、せめて今日はのんびりしようと一人キャンプで癒されようと考えて、テントやらテーブルやらのキャンプ用具一式を作り出してもらうのだった。

なんだかんだとドタバタしていた昨日はレーションを齧りながら戦っていたといまさらながらに思い至ったベントは、今日はまともな食事にありつきたいと考えた。実は、そのことを通信中から考えていたので、なんとも都合のいいことに湖のほとりにキャンプを設営していたりする。

最悪、レーションでも仕方ないかと思いながら、キャンプと言えば釣りだ!とワクワクしながら釣竿を用意してもらい、魚釣りを始めるのであった。

テラでいうところのニジマスのような魚を3匹ほど釣り上げた後は、湖のほとりにある森の中からキノコやら野草やらをかき集める。ノンちゃんにお願いして、毒があればU粒子の物質変換機能で無毒化。苦味やら灰汁やらが酷い野草についてはいい感じに不通に食べられる程度に刺激物質をこれまたいい感じにハーブな風味へと変換してもらうのであった。炭水化物はレーションから代用するしかなかったものの、メインディッシュはニジマスのハーブ焼き、キノコ添えに加えてキノコのスープが食べられたことでかなり満足したベントだった。

実は、センガキからは偵察用ドローンが発信しており、ベントの様子は概ね監視されていた。ベントとノンはこれを想定していたので、どこに機体がいるのかも把握していたが、別に反応したところでむしろ索敵能力の高さを知られて警戒される恐れがあるし、そもそも見られて困ることは何もないので、あえて放っておくことにした。のんびりキャンプしているところや、おいしそうに魚をほおばる姿を見せれば年相応に若いだけの少年と思ってもらえたらむしろ儲けものなので、見るならどんどん見てね、という感じである。

そんな気の抜けた時間を過ごしていた時に、草むらからガサっと音がした。

(獣って、もっと慎重に襲い掛かってくるものじゃないのかな。随分と大雑把な動きだけど、仮に慣れていない個体なのかな?)

等と思いながら襲撃者を待ち受けるベント。次の瞬間大きな影が草むらから飛び出し、ベントの首めがけて突進してきた。そして、

ガキン!ドス!!

「グァ・・・」

ということで、クマのような獣がベントの足元に倒れるのであった。何があったかと言うと、感応波を使って身体を高質化したベントにかみついた獣が動きを止めたところに、ベントの重い一撃が獣の頭を揺らしたということである。

「おぉ。肉が手に入ったね。これ、街の人たちへのお土産にできないかな。ノン、食用に適しているかどうか、確認してみて?」

「はい。食用可能ですね。もともとアーク星系はヒトの居住には適さなかったので哺乳類系の生物は存在していませんでした。今倒したクマ系の獣は播種船に載せて連れてきた生物の子孫であり、食用とすることに問題は無いですね。」

「あ、そうか。言われてみればそうだったね。じゃぁ血抜きと内臓の処理をチャチャっとやってしまおうかね。」

と言って、殺生しないように気絶させたクマの首筋にナイフを通し、サクッと絶命させてから、血抜き、解体と作業にいそしむベントの頭の中はセンガキの住民はお土産に喜んでくれればいいなぁという無邪気な感情に占拠されていた。

夜が明けた。

もう一頭くらい獣の襲撃があっていいかな、程度に危ないことを考えていたベントだが、残念ながらその願いはかなわず、この夜もぐっすり眠ることができてしまった。実はノンが気を利かせて、---と言うのはやっぱりベントの精神状態が若干不安定と思われる節があることから、あまり殺生に関わる事態に振れさせたくないと考えたことなのだが、---獣型ドローンによる周囲警戒と、状況によっては排除行為を行うことで、キャンプ周辺半径1Kmに大型の獣が入り込めないようにしていたというのが真相ではある。

さて、朝である。監視用ドローンは昨日よりも接近してきていた。と言うか、キャンプ直上まで飛来してきていた。随分と大胆なことではある。頭上に飛来物を寄越すとは、場合によっては敵対行為と取られかねないというのに。ベントはここで、ノーガード戦法が良いだろうと判断する。

昨日の魚の残りを焼き始め、朝食の準備をする。折角だからクマの試食もしてみるかと、クマ肉の薄切りをキノコ、ハーブとソテーする。朝から魚とクマ肉の野菜炒めってかなりヘビーだぞ?と思いながら、残ったら昼に回せばいいかと思い直し、手際よく食事の準備を進める。そこでふと思いついて、

「朝食が結構ボリューミーなので、もし良かったら一緒に食べないか?ドローンも撃ち落とそうとすれば可能な戦力を保有していることは判っているだろう?ドローンがその位置で撃墜されていないことが、こちらに戦闘の意思がないことの証左と思ってほしいのだが?」


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