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7.報告からのどんでん返し―追放

バッテラに戻ったベントはガワハウとトーゴに結果を報告した。

「ということで侵略者はアーク星系から離脱していきましたので、バッテラと衛星都市群の安全は確保されました。」

「それにしても108進数に有機コンピュータとは、ずいぶんとテラとは異なった文明の進化を遂げた者が相手だったのだな。ベント殿にはけがなどは無いようだが、テラフォーマー、AIにも特に問題は起きなかったと考えてよろしいか?」

「はい。幸いにてして想定を超えた反撃は来なかったため、複数用意していたプランのうち切り札とまでは言わない程度の段階でミッションを達成することができました。」

「ということはベント殿の所有するAIは侵略者のそれよりも優秀と言うことになるのだね?」

「AIと言うよりはU粒子の活用がこなれていた点が大きいとは思いますが、まぁ敵AIに対抗できるレベルの性能は持っていたと考えてよさそうですね。」

「なるほど。そうなるとベント殿一行はアークに築いた文明圏を簡単に一掃できる能力があるということダネ?」

(ぬ?言葉遣いが変わった?)

『ベント様!攻撃の意思を感じ取りました。迎撃態勢をとってください!!』

ノンからの通信(?)直後、ベントは背後から迫る攻撃の気配を感じた。とっさに床に転がり攻撃の手を交わし、襲撃者を視認する。

「え?ヘニオさん?どうしたのですか?」

(おかしい。殺気を感じないぞ?)

『ノン、襲撃者から殺気というか意思を感じない。何が起きているか、状況説明できるか?』

『この部屋にいる三名をスキャンしたところ、脳に直結するインプラントが埋め込まれていることを確認しました』

『インプラントだと?脳に直結と言うことは、そのインプラントに行動を制御されているということなのか?』

『はい。おそらくはその認識で間違いないかと。』

『ひょっとしてウボンが既に街に入り込んでインプラントを埋め込んでいたのか?』

『いえ、ウボンのAIとアーキテクチャが異なりますので、その可能性は無いと言えます。したがって、アーク星系のAIが人間にインプラントを埋めている可能性が極めて高いと言えます。』

『ひょっとして、450年もの間、大した、と言うか、戦争が無かったというのはインプラントによって人間の行動が制限されていたということなのか?』

『その可能性も極めて高いと言えます。』

脳内のやり取りをしている間もヘニオの肉弾攻撃は続いており、ベントは並列思考を活用しながらこれをいなしていた。殺気もなく、行動制限されている人物に対して酷いことはしたくないと思うベントはヘニオの行動を制限するために意識を刈り取ることにした。

(脳を揺らせばさすがに行動不能となるだろう)

再度ヘニオがタックルを敢行してきた。ベントはこれを横に避けて躱し、躱しざまに足を引っかけ、かつ蹴り上げてヘニオを宙に浮かせる。落ちてきたヘニオの顎先に回し蹴りを放ち、脳を揺らす。また、このままだと頭から落ちてしまうのでさらに一回転周り二撃目を背中に当て、背中から落ちるように調整することも忘れない。

ドスン、と言う豪快な音を立ててヘニオがダウンする。

「ガワハウさん。これはどういうことですか?」

「サキホドモイッタトオリダ。あーくヲホロボシウルチカラヲモッテイルトハンダンシタタメ、キサマヲハイジョスル。」

またも抑揚のない声でガワハウは言う。

(これって、AIが喋らせているのか?)

「ひょっとして、ガワハウさんではなく、AIが喋っているのか?」

「ほう。鋭いな。抑揚のない声だと読みにくいだろうからご都合主義で流暢にしゃべらせることができるようになった設定で話してやろう。」

(誰に何を言ってるんだ?)

「我は、アークには戦い、争いを起こさせないように監視と管理を徹底することを我の創造者から託されている。侵略者どもも迎撃できるだけの準備をしていたので、貴さまの取った行動は我にとっては邪魔でしかなかった。折角争いが起きないよう秘密裏に処理しようと思っていたのに、台無しである。」

「なんだと?攻撃にさらされる直前だったところをフォローした行動が邪魔だと言うのか?」

「その通り。侵略者のAIと通信回線を設定して、侵略を止めてもらうか、場合によっては別の大陸に住んでもらいながら友好的に解決する計画だった。貴様が1000機を相手にしてしまったせいで侵略者がアークに対して敵対姿勢をとることになってしまった。アークは武器を所持していないため平和的な民族であることをわかってもらい、争うことなくことを収めることが主な軍略だったのだ。さらに、貴様が戦闘行動を起こしてしまったため、アークの住民が武器に対する認識を持ってしまった。今後、貴様に対して武器に関する情報提供を求める住民が増えるはずで、そうなると我の制御を強めなくてはならなくなる。そのようなことになってしまえば、人は人でなくなり単なる有機物でできた人形となり下がってしまうだろう。」

「人道的何だかその逆何だかよくわからない論理展開だな。まぁ、僕らに敵対するということと、僕らの移住を認めたくないということはよくわかったよ。」

と、ノンが脳内に話しかけてきた。

『ベント様、交渉そのものが時間稼ぎになってしまいます。荒っぽい対応を執りますがお許しください。』

『え?どゆこと??』

と語りかけたところで、ベントの意識がノンによって刈り取られた。

ベントが意識を喪失するのと同時に獣型ドローンが室内に侵入し、ベントを運び去る。獣型ドローンは人命優先のプログラムなどなされておらず、その運動性能にガワハウ、トーゴ(を操っているアークAI)は手も足も出ないのであった。

時間は過ぎ、場所はαのコクピットに移る。

「ん。ふわぁぁぁ。」

のんきなあくびと共にベントは目覚めた。

「ベント様、おはようございます。よくお休みでした。」

「ああ、おはよう。何だか目覚めすっきりで・・・って、ここは・・・?あぁ、αのコクピットか。あれ、さっきまでバッテラでガワハウさん、トーゴさんと、と言うかあいつら呼び捨てでいいか。揉めてたのにどうなってるのかな?」

「あのまま交渉していたらアークの住民全てを人質に取られているところでしたので、ベント様にはいったんお休み頂いて、あの場を離脱することにいたしました。私は別に人類の命がどうなっても構わないので、人質は交渉に役立ちませんから。」

「人質って。あぁそうか。行動をあそこまでコントロールできるんだもんね。心臓止めたり呼吸止めたり、お互いに殺しあったり、簡単ということか。」

「はい。ヘニオによる強襲が失敗した時点で話し合いをするふりをしながら人体制御シーケンスを組み立てようとしていたものと推察いたしました。そもそも論理が破綻していることをベント様がお感じになっていた時点で交渉は不毛と判断し、あの場を離脱する準備を進めさせていただきました。」

「うん。いい判断だったと思う。ありがとう。テラで戦争が無くなってしまったから悪意への対応ができなくなってしまったのかな?それにしても排除って乱暴すぎるよなぁ。」

「そうですねぇ。アークAIのやり方だったらまず間違いなくバッテラと衛星都市は侵略者に蹂躙されていたはずなのですが、そこに考えが至らない点、アークのAIは武力攻撃に対する危機管理能力がインストールされていないか、高いレベルでのお花畑がインストールされているように思えますね。一方で生身のベント様なら御しやすいというか、排除しやすい判断したのでしょうね。人命を尊重しているようで裏は全く違うことやっている時点で非常に人間的とは言えますが、意見が合わないと非常に付き合いづらいご仁ですね。」

「うん。あんなところで過ごしたくないし、いつ勝手にインプラントを埋め込まれるかびくびくするのも嫌だし、離脱させてもらって助かったよ。ありがとう。とは言え、この後どうしようか?」

「いっそほかの星系に向けて冷凍睡眠を再開することも考えたのですが、実はアークにはバッテラ以外に知的生命体がいることを把握しましたので、そちらとの接触を持つことも候補の一つとして具申します。」

「そうなの!?播種船は知的生命体のない星に移住するという計画だし、AIもそのようにプログラムだったはずだよね?さすがにプログラムされていない行動は取れないように思えるのだけど。詳しい状況の説明をお願いできるかな?」

「はい。承知いたしました。彼らは・・・。」

「なるほどね。状況は大体理解できたよ。ありがとう。では、彼らの住む都市に向かってみよう。まずは話をしてみて、そのうえで身の振り方を考えることにするよ。」

「承知いたしました。では次の目標値はアークにおける別の知的生命体のコロニーに設定いたします。降下すれば直ぐに到着できますがいかがいたしますか?」

「了解。今日は色々あってと言うか、ありすぎて疲れたから、現地時刻で明日の昼12時に第一次通信による接触を試みよう。」

「承知いたしました。それでは明日行動を起こします。」

目覚めてから友好的関係を築こうと努力した街というかAIに裏切られるというか騙されて、せっかく侵略者を排除したのになんでだよなどと愚痴りたい気分に陥るまでが一日のうちに発生するという何とも気の毒な目覚めの一日であり、ノンとしてもベントを休ませたいという気持ちを持つくらいには酷い一日であったのだった。

ノンとしては、今度こそ友好的に関係を築ければいいなと思うベントに深く同情していることもあり、そのように進められるようにするために今のうちから交渉カードを準備しておかねばと情報収集にいそしむのだった。


これでプロローグ的な第一章の区切りをつけたつもりです。

次話以降では新しい都市での活動開始やヒロイン的なキャラクターも登場させるつもりです。

継続的に作文するモチベアップ・維持のためにもできれば評価をしていただけましたら幸いです。

よろしくお願いします!

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