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15.どちらにしようかな(わかってるくせに)

ベントはユーノスの上空400Km地点で周回軌道を飛んでいる。

「そろそろレールガン攻撃が届くころ合いかな?」

「はい。あと2時間程で到着予定です。介入しなくて本当によろしいのですか?」

「ノンちゃん。ダメに決まってるじゃーん。突然宇宙からやってきた明らかなオーバーテクノロジーの兵器が星を挙げての迎撃態勢を敷いている脅威に対してあっさりと対応しちゃうなんて、またまた追放されちゃうんじゃなーい?」

「ぐぬぬ。言い返せませんね。」

「あ、『ぐぬぬ』って言った。ぐぬぬっていう人あんまりいないよね、と言うか私見たことも会ったこともないよ。いい経験できた!」

『ノン。頼むから内緒にね。』

『ベント様、残念ですがこの脳内リンク、インカムを通じてサーシャ様に丸聞こえです。』

『そだよー!私もノンちゃんと頭で会話したいって頼んだらインカム作ってくれたんだよねー。ベント君に言ってなかったっけ?』

『聞いてねー。さらりとすごい技術を渡さないでほしいのだけど?』

『えー?恋人なんだからいいじゃん!』

『いつの間に恋人認定された!?距離の詰め方が強引すぎませんか?』

『ジャー私のこと嫌いなの?そもそも、ユーノスへの会見申し込みだって婚約者設定で行くことにしてるのに、そんなに距離をとる必要ある?』

『ないです。ごめんなさい。』

ワチャワチャと話を脱線させつつ今後の方針が決まっていく。


さて、現状の説明のために時間は少しさかのぼり、場所はセンガキに移る。

「どっちと仲良くするかなんて、もぉなやむ余地が無いよなぁ。」

「ケモミミ!モフモフ!!ノンちゃんから聞いたよ!ベント君が猫のモフモフ大好きだって。猫獣人だったら抱き枕サイズのはずだよね!」

「いやいや、やっぱ美人揃いと言われているエルフのお姉さまと仲良くなりたいだろ!魔法とか使えるかもしれないぜ!?」

「こらこら!政体で選ばないでどうする?どちらの政府と仲良くしたいかで決めなきゃダメだろうが。」

「またまたぁ。お父さんだってケモミミに興味津々のくせにぃ。大体、政体にしたって選ぶ余地が無いじゃない。だったら自分の欲望に従って決めたっていいでしょ。って、あれ?ベント君。もしかして性欲に従って決めてる?あたしと言うものがありながらそれって酷くない!?あたし、泣いちゃうよ!?」

「何!?ベントォォォ、私のサーシャを泣かすとはどういうことだぁ!」

と、緊張感の全くない会話がなされている横で、

『詳細情報は得られた?』

『はい。今から共有いたします。どうぞ。』

『うん。確認した。ありがとう。』

なんだかんだ真面目に仕事もしているベントであった。

「マックス、そろそろまじめな話に戻ろう。いま、ノンから情報共有があった。ユピタがユーノスに軍事侵攻を開始するようだ。僕としては、ユーノスを援助できるようにユーノス政府と交渉を開始したいと思っている。軍事侵攻の概要は・・・」

前二話で語られたことをマックスとサーシャに説明するベントだった。

「なるほど、状況は理解した。侵攻の妨害はどのように行うのだ?」

「初撃の対策はほぼ完ぺきなので介入しないことにする。二撃と言うか、ドローン降下作戦は核分裂炉を破壊してしまうとシャレにならないので、ドローンの迎撃態勢を整えるタイミングで星使として連邦議会長への謁見を求めるつもりだ。幸いにして、ユーノスはアークへの探査衛星を飛ばしているので知的生命体が存在することを把握しているはず。第3、第4惑星では実現できていない星間航行が可能な第5惑星の知的生命体が『いい案ありまっせ』と言って交渉を求めたら、話くらいは効いてもらえると思っているんだよね。」

「なるほどな。タイミングも侵攻作戦を把握できている中での助言と言うことで技術格差の違いを見せつけることができるから、相手としても無下に断りにくいということだな。」

「そうだね。あと、申し訳ないのだけどサーシャに同行してもらいたいと思っているのだけど、良いかな?」

「とーぜーん!いいに決まってるじゃーん!一人で行くって言ったら密航してでもついていくつもりだったんだよ!」

「あぁ、助かる。マックス、良いかな?」

「うむ。仕方ないだろう。この場での適任者はサーシャしかいないからな。」

と言うのは、交渉事は夫婦で押しかけて、パートナーごとに分かれて交渉することによってマウントを取れればよし、取れなかったとしても少なくとも意識の共有を複数の人数によって行えるという利点を活かす意味で昔々からテラで行われていた様式なので、ベントが単身乗り込むことにマックスは相当な問題意識を持っていて、そこまでの意識はないものの、サーシャとしても新天地となりうる土地を守る交渉を少しでも有利に進めるための手伝いができないかと考えていたという事情による。

ただ、そういった政治的事情と『僕の可愛いサーちゃん』が、昔なじみのベントの許嫁として他国に乗り込むというのは、本当に長い間に愛情を育んでいたのならまだ血涙を流してでも許せるかもしれなかったのだが、トンビが油揚げをかっさらうかのように今まで男の影がゼロだった娘の眼がたったの、本当に、たったの数分でベントに向いてしまい、あまつさえ瞳孔がハート型になっている状態など、年頃の娘を持つ男親としては納得できるものではなかった。

ベントとしては、初対面がお見合いだったこともあり、かつ、サーシャが乗り気だし、ベントもサーシャの雰囲気は大好きだったし、ついでに容姿もドストライクだったので、もぉなし崩し的にマックスをお義父さんと呼んでやろうと思うくらいにサーシャに一目ぼれだったのであった。


時を現在に戻す。

とまぁ、緊張感のかけらもないやり取りがあったうえで、冒頭のやり取りが行われていたのだった。相も変わらず緊張感という言葉を真剣に教え込んでやりたいところだが、力がいい感じに抜けているのはそれはそれでよしとするかと、誰の考えかわからないモノローグが入ってしまった訳である。

チョーオーパーツなインカムをサーシャに渡したノンに対してベントは苦言を呈したものの、現実問題としてユーノスの言語を理解できるのはノンだけである。ベントは情報共有が可能なので言語理解は問題ないが、許嫁ポジのサーシャが会話ができないのは問題なのだ。なにせ、ユーノスにもアークの言葉を理解できる人がいないのだから。したがって、インカムを使ってリアルタイム翻訳を行うことで対話を可能にするということは必須事項であるのだが、それとノンとのリンク機能をひいてはベントとの脳内情報共有機能をもりもりにすることとは話が別だろうと思うベントであった。

だがまぁ、渡してしまったものは仕方がない。ノンに対してダメともいいとも言っていなかったので、ノンの優秀なCPUが渡す方が色々と都合がいいと判断したのだろうと気持ちを切り替えるのであった。

さて、2時間後に初撃が来るのである。技術的な優位性を誇示するならば今の段階でユーノスとの交信を開通して、今後の戦局予想を披露するのがいいのかもしれないが、あまり大っぴらにやってしまうとむしろ二重スパイを疑われてしまう。

どのタイミングで交信を開始するかを三人で話し合ったところ、ノンとしてはユーノスは初撃の対応は可能と思われ、かつ、その準備はほぼ終わっているとのことだったので、初撃の対応中に交信を試みようということになった。ノンいわく、10分に一回振ってくる軌道が読めている弾を打ち落とす作業を、連邦議会の長が全て見ているはずが無いので、ちょっと対応したら飽きるはずだから、その辺りで刺激を与えればちょうどいいでしょうとのことだった。

かくして、ユピタによるユーノス侵攻初撃がユーノスに襲い掛かるのであった。


ちょっと忙しくて、本日一羽だけの投稿です。楽しんでいただけますと幸いです。

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