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14.ユーノス

また時間は10年前にさかのぼる。

ユーノス連邦議会において。

「星防省からの報告です。

ユピタにおいて、宇宙空間の動きが活発化しております。砲門のようなものを装備した人工衛星が少なくとも5機ユーノスに向けた静止軌道上に配備されています。また、人工衛星に対して補給機のような機体が定期的に接近していることも確認できています。一方で衛星軌道上への飛行物体の打ち上げ行動が確認できておりません。打ち上げ場所が星裏であったとしても、物体の軌道は周回軌道を描くため、認識できないということはあり得ないため、打ち上げとは異なる方法で軌道に物品を運ぶ方法を実用化しているものと推定しています。」

「ふむ。それは、過去科学技術省の研究員が提唱していたマスドライバーや軌道エレベータと言った技術の開発が進んでいるということかね?」

「はい。マスドライバーは結局周回軌道を飛行しますので、この場合は軌道エレベータが実用化されたのではないかと考えています。」

知ったかぶっちゃったよと会議出席者の顔に出ない失笑を買ってしまったが、質問した連邦議会長であるシンチョーは気にすることなく質問を続けた。

「なるほど。軌道エレベータが実用化したということは拠点となる宇宙ステーションも建造されている可能性が高いと判断してよいか?」

「はい。その通りです。恐らく星裏にそれらを建造しているものと思われます。強行偵察用にドローンを飛ばすことも可能ですが、以前衛星軌道上に到達させたド監視衛星が破壊されたことを考えますと、目標地点に到達する前に迎撃される懸念があります。むしろ、迎撃されることを前提に計画を立てた方が良いと考えているほどでして、偵察は必要ですが失敗する確率の方が高いと判断しています。」

「星裏で色々と画策しているとして、現時点で予測できている相手方の軍事行動を教えてほしい。」

「はい。星裏での隠密行動と言うことは攻撃力のある武装兵器の開発・建造が行われている可能性は低いでしょう。便宜上、先ほど報告した人工衛星を砲門衛星と呼びますが、砲門衛星を堂々と我々の目につく位置に配備しているということは、攻撃力がある兵器が作られているならば隠す必要もないという意思が感じられます。

これらのことから、現状は二通りの戦術行動を想定しています。一つは、砲門衛星によりユーノスの監視衛星を潰し、監視機能を消失させたところで重爆撃用の輸送艦をユーノス衛星軌道上に派遣し、軌道上からの艦砲爆撃を行うというものです。もう一つは、輸送艦は爆撃用途ではなく、ドローンなどの制圧部隊を運ぶ目的として経戦能力の高い舞台による長期制圧作戦です。この場合、ドローンの物量が星一つを制圧できるレベルでないと意味がありませんので、砲門衛星の使い方は主要都市への爆撃が妥当となります。」

と言った感じで、ユーノス上層部はユピタの動きをほぼ完全に読み切っていた。この会議を契機に、砲門衛星から発射される弾頭の解析、軌道をずらす方法の検討、輸送艦の予想軌道とその攪乱方法について検討がなされることとなった。この時点での唯一予想が外れた点は、砲門衛星の配備が完了していたので軍事行動はすぐにでも起こされると予想していたが、それが起こされなかったことである。

ユーノスのさらなる監視によって分かったことは、①砲門衛星はそれぞれ10発程度の弾頭しか有していない②砲塔はレールガンで、口径は1000mm、であった。これでは都市爆撃用途としては球数が少ないことから準備不足によってユーノスへのけん制目的での砲門衛星配備ではないかなどの予想も立てられたが、相手が攻めてこないのであれば引き続き戦術予想をしながらの警戒体制維持が決定された。


さて、10年後に時間は戻る。

連邦議会にて。

「星防省からの報告です。

ユピタに明確な軍事行為を確認いたしました。今から1時間前に、砲門衛星からの発砲を確認。約10分間隔で逐次発砲しています。弾道の予想軌道はユーノス大気圏内への爆撃コースです。弾速は11km/sです。砲門の口径が1000mm程度ですので、大気圏におけるアブレーションを避けるために弾速は現状を維持したまま最浅角度での大気圏突入を計画しているものと推察しています。」

「ついに始まったか。だが、予想の範囲内での軍事行動のようだな。ユーノスには無いような硬質の弾頭だった場合はアブレーションの懸念をあまり考慮することなく深角度で突っ込ませることも可能だったからな。最浅角度であれば迎撃ドローンによる軌道妨害作戦が機能しそうなのだな?」

「はい。ご理解の通りです。弾頭の到着はおよそ70時間後ですので弾頭の大気圏到達時刻を予想して順次迎撃ミサイルを発射します。敵の弾数ですが、最低でも1000発くらいは用意するかと思われましたが、500発を大きく上回らない程度であると報告に上がっております。当方の準備したミサイルは2000機ですので、機数の観点では、迎撃は十分余裕をもって対応できる予定です。」

「初撃対応は理解した。第二次攻撃はどのようなものとなるか、判明している情報はあるか?」

「はい。以前ご報告いたしました通り、5年前に第5惑星を探索すると見せかけた調査衛生を飛ばすことに成功しており、星裏の状況を確認しています。星裏には軌道エレベータ、宇宙ステーションが建設されています。宇宙ステーションの周囲には輸送目的と思われる艦船が20隻観測されています。5年前の情報ですので、現在はさらに増やしている可能性が十分に高いと考えられます。」

「うむ。こちらについても想定通りに動くかどうか、引き続き注視するということだな。奴らの第二次攻撃がドローンによる降下作戦だったとして、動力は何を使っているか、予想できそうか?」

「この点は、残念ながら把握できておりません。最悪のケースを想定して、核分裂炉を用いているものとしています。従いまして、大気圏侵入を阻むための迎撃が最も有効なのですが、砲門衛星の配備は戦術的に得策ではないと総合的に判断されておりましたため進んでおらず、この方法は採用できません。計画通り、地上に降下したドローンを駆逐戦により行動不能にしていく戦法を採用いたします。物資の補給がままならない中での降下占領戦ですから、当然弾数も大した量は持っていないですし、動力炉の破損にさえ気を付けていればそれほど面倒なことにはならないとの想定です。ただ、空戦能力のあるドローンの迎撃方法については精密射撃のみでは対応できない可能性があります。ドローンが弾の補充に地上に降下したところを鹵獲する計画ですので、当初しばらくの間は『石の雨』が降ることを覚悟する必要があります。この点については、住民への説明を行うべく総務省に通達しています。

攻撃方法については地面の土や砂、鉱物などを溶融して榴弾化させることで弾数をほぼ無限に確保する戦法をとってくるものと考えてはおりますが、我々が実用化できていない光学兵器などがあるかもしれません。その場合、我々の想像を超えた技術による兵器ですので、手も足も出ない可能性は否定できません。安心材料としては、砲門衛星が光学兵器ではないことから、レーザー等の出力はさほど高くないので兵器としての実用化が進んでいない状況である可能性が高いという点が挙げられます。」

「承知した。敵のステルス機能については何かわかっているか?」

「これも想像の範囲を越えませんが、砲門衛星をこちらに晒していることから、我々も実用化できていない光学迷彩機能は所有している可能性は低いと考えられます。電磁波吸収塗料はその開発にそれほどの技術を必要としませんので、普通に所有している考えた方が良いでしょう。いずれにしましても、当方を大幅に上回った技術を有しているケースも考慮して対応に当たります。」

「よし。想定できる範囲であれば対応はすべて完了しているということだな。それでは迎撃作戦を開始してくれ。」

ユピタの動きは、割とバレバレの中、ユーノスの迎撃作戦が開始されるのであった。


そろそろストックがやばくなってきました(汗)

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