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1.目覚め

初めて投稿します。

それは、何らかの乗り物のコクピットだった。室内灯が点灯し、計器類のバックライトも点灯した。

そして、

「ん?着いた?」

生物の独り言が誰にともなく紡がれた。

「おはようございます。ベント様。」

「え?だれ?」

「当機、テラフォーマーα型の頭脳となるAI、自称ノンです。」

「α?ノン?テラフォーマーって量産型でそもそも識別は番号じゃなかったっけ?しかもAIに名前?」

「話せば50年程の歴史となりますが、播種船が本惑星に到達してから、ベント様が目覚めるまでの間に私は自我を得るに至り、ベント様のお好きだったペットの名前を自称することにいたしました。なお、本惑星はAIコアのテイストにより、アークと名付けられました。」

ベントは眠る前には全く想定していなかった事態にただ驚くばかりではあった。

しかしながらノンの説明により、少なくとも食事を摂り、お茶をたしなむ程度には落ち着きを得るに至っていた。

ベントが生まれ育った星、テラは増えすぎた人間を養うことができなくなった。テラ連邦は人類とテラ圏に生息する動植物を移住させるために移住させる生物が活動できる星を探し、そこで居住区を作ることを目的としたコロニー政策を決定した。

不確実性の高い政策ではあるが、このままテラにしがみついても食糧難、増えすぎた人口によるストレスに起因する紛争と、良いことは何もないと思った人々はこのコロニー政策に賛成するのであった。

ベントも主観時間で500年前にテラを出発し、目的となる星に到着してから50年後の現在、冷凍睡眠から目覚めたということである。

ここで、想定と異なる幾つかがあった訳である。

すなわち、

・テラフォーマーに固有識別できる型式は無い

・AIが自我を持つとア〇ベドのように面倒なことになるので、自我が無かったはずで、自我を持たせないように設計されていた

・AIがベントの記憶を把握することはあり得ない

・播種船が目的となる星に到着したならばすぐに冷凍睡眠は解除されるはずである

ということである。

その後、ノンが語ったことによると、

「今から50年前に播種船はアークに到着したのは間違いがありません。冷凍睡眠を解除する前にAIコアがテラフォーマーを衛星軌道から投下させ、テラフォーミングを開始しました。

え?テラフォーミングに失敗したらどうするかですか?冷凍睡眠が継続されるに決まってるじゃないですかぁw。ベント様がそれに近いっしょ。

さて、当機は大気圏突入時に突入角度が浅く、弾かれそうになったため強制的に軌道を変えることにより過負荷が発生し、ベント様の肉体に重篤な障害を与えてしまいました。テラフォーマーは搭乗者のバイタルを確認しながらテラフォーミングを行うのですが、ベント様のバイタルはいわゆる瀕死状態だったため、当機はベント様の回復を第一優先としてテラフォーミング作業から離脱しました。

エネルギーのほとんどをベント様の肉体と当機の修復に充てたのですが、アーク及びアーク周辺の星系にはテラでは確認されていない素粒子が見つかりました。便宜上、無限の粒子ということでU粒子と名付けましたが、元素変換、エネルギー生成、空気中というか、真空中であっても外部から無限に収集可能ということでほぼ永久機関が成立しているような状態であることが分かったので、U粒子を取り込みフルに活用するようαを改造いたしました。その後、αはまずU粒子を取り込み、破損個所を修復し、その次にベント様の肉体修復を行いました。ただ、ベント様は冷凍睡眠状態だったため、破損した肉体を補修するには効率が非常に低い、と言うよりも、肉体修復が不可能な状態でした。そのため、すこーしだけU粒子による肉体改造を施し、修復作業が進むようにさせていただきました。

肉体改造する中で、ベント様の脳とAIがリンクすることになり、ベント様と私が脳を完全共有できるようになりました。そこで判明したベント様が罹患していた「色々と大変な病気」を鑑み、ベンド様の望みをかなえるようにαも色々と改造したというわけです。」

「はい?突っ込みどころしかないのだけど、僕の記憶が共有されている?病気に罹患??」

その後、ノンの説明にベントは悶絶するしかない黒歴史を開陳されるのであった。

共有されてしまったものは仕方が無いと開き直り、どのような魔改造が行われたのかを確認したベントは、持病が大いに刺激され、悶絶したことなど忘れるほどには大いに盛り上がったのだった。

ノンの説明によると、テラフォーマーα型の外殻、骨格は搭乗者の望み通りに変形できる形状変形金属に変更しているとのことである。形状変形には搭乗者の感応波(この度の肉体改造により放出できるようになったそうだ)が必要なので、搭乗者がいないと変形できないとのことである。これは、テラフォームのために無理やり人員を搭載する設計としていたテラフォーマーは本来、搭乗者がいなくても稼働できていたものが、搭乗者がいないとその性能を存分に発揮できないというデメリットではあったが、形状を自由に変えられるというメリットとは比較にならないものであるとベントは感じたようである。そもそも、バイタルを確認しながらテラフォーミングするとは、人体実験とさほど変わらないのでは?と思っていたベントなので、実質的な差はさほど生じていないということかもしれない。

ベントには知らされていないのだが、U粒子をその体内に取り込んだベントは思考、再生、運動などの各種能力が人類のそれを大幅に凌駕していた。

思考能力はノンと脳がリンクすることにより並列思考が可能となり、また、ほぼ無限に拡張できる記憶力とありとあらゆるCPUの力を借りることができるという既に人間をやめているような状態。再生能力、運動能力はU粒子の元素変換機能を利用することによる再生、筋繊維の強化などが可能となっており、これまた人間をやめてしまった状態となっているようである。


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