新米教師6
枯井先生は女子のバレーボール部の顧問もしながらだから、非常に多忙であった。
休日の出動も残業もいとわず、学級の生徒とバレーボール部の生徒について、一人一枚の記録簿を作り、日常で気づいた些細なことも記録しており、理想的な教師になろうと努めている様子だった。
実家住まいの独身といえども、なかなかできることではない。
現に、同じ立場の衛藤は毎日へとへとに疲れて、せめて野球部の方はなんとか勘弁してもらえないかと下手な策を弄している。
だから、衛藤は年下だが先輩と思って接していた。
つもりだった。
しかしこっちが色気なしのつき合いのつもりでも、向こうからしたらそうではないことは、多々ある。
そのことに気づいたら、もうおしまいだ。
ましてや、生徒たちの噂に上るようになっては、もうどうしようもない。
残念でしかたないが、安全なところまで距離を取るしかない。
毛野祢子への扉が一つ、失われてしまった。
井下田を、どうやって牽制したらいいのだろう。
直接、あの子に注意してやりたい。
だが、新任教師がいきなりそんなこと言っても、警戒されるだけだろう。
自分はあの「トドさん」だと白状したなら、信じてくれるだろうか。
それもだめだ。
トドさんは、あの子を怖がらせた男なのだから。
来年、二年生の担任になる。
もはやそれしかないのだろうか。