新入部員2
というわけで、祢子はテニス部の門をたたいた。
男子テニス部はないらしい。
藤堂先輩みたいな人と会える可能性はゼロだったのか。
ちょっとがっかり。
まあ、藤堂先輩も、丸刈りだったら、いまいちだったかも。
テニス部に入部申し込みする一年生女子は、多かった。
みんな「エースをねら」っているのだろう。
ライバルだ。
祢子は名簿に学年組と名前を書いて、入部希望者向けのプリントをもらって帰った。
「スコート、ってなあに、母さん」
準備するものの中に、スコートというものがあった。
ラケットはまだ準備しなくていいのに、スコートは要るらしい。
よほど重要なものなのだろうか。
「テニスする女の人がはいている、短いスカートよ」
そんなものをはかなくてはならないのか?
「でも、パンツが見えるんじゃない?」
「アンダースコートっていう、見られてもいいパンツがあるのよ。……お休みの日に、買いにいこうか」
そうして、一緒に行ったスポーツ用品店で母さんが手に取ったのは、真っ白な、超ミニスカートみたいなスコートと、おしりに真っ白なフリフリフリルが何段にもついた、アンダースコートだった。
「それはちょっと……」
「だって、これしかないじゃない」
「でも…… これって、はかなくちゃだめ?」
自分がこれを着けて走り回ることを考えただけで、祢子は冷や汗が出てきた。
見せるためのパンツとしか思えない。
スコートがひらっとめくれる度に、パンツのフリルがちらちらする。
それを見て喜ぶのは、男子だろう。
なんでそんなことをしなくちゃならないんだろう。
テニス以前の問題が、祢子の前に立ちはだかっていた。
「みんながはくんだったら、仕方ないでしょ」
母さんは、スコートとアンダースコートを持って、レジに向かった。
母さんは、やけに積極的だ。
祢子のための買い物だと思われることさえも恥ずかしくて、祢子はレジから離れていた。
そして迎えた、テニス部の練習第一日目。
一応いやいやながらスコートを持ってきていたものの、普通の体操服でいいと言われた時は、芯からほっとした。
「じゃあ、準備体操ね」
人数が多いので、広い円陣を二重に作る。
内側は先輩たち。外側に、入部する一年生たち。
部長の先輩が一、二、三、四、五、六、七、八、と声を上げながら体を曲げる。
他の先輩も同じように体を曲げながら、二、二、三、四、五、六、七、八、と続けた。
「一年生も声を出して」
振り返った先輩に促されて、祢子たちも体操しながら二、二、三、四、と声を張り上げる。