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田舎のドレス

 僕はついに気づいてしまった。ずっと前に貰っていたAxiom Vergeをクリアして、とうとうメトロイドヴァニアの面白さに気づいてしまった。このジャンルはほんとうに際限なく量産されているから、もうしばらく帰って来れない気がする。今は悪魔城ドラキュラの月下の夜想曲をやっていれば絶対にハッピーだ。正直ゲームに対して飽きを感じ始めていたのに、ここにきてメトロイドヴァニアなんだ。以前までならすごく嫌いなジャンルだったのに不思議なものだ。コーヒに砂糖を入れた。混ぜ終えたスプーンをそのままテーブルの上に置いてみせて、これを目の前にした相手の反応をうかがう。すると相手が生まれ育ってきた環境をだいたい把握できてしまうのだった。今回の彼は私の行動に対しまったく反応を示さなかった。家で酒を飲んでそのまま口からこぼすし、家族に呼ばれるとテーブルの上の皿を蹴散らしながら駆けつけてくる、そんな国の映画があった。その映画は外国でつくられたのだけれど、視聴するさいに決して日本語字幕は必須ではない、そんなハイテンション続きの映画だった。ストーリーについては2時間付き合ったうえでよく知らない。でもアクション映画ではないことは確かだ。あれは彼らの生活を描いている。

 目の前の若者がリクルートスーツで、ついにしびれを切らして発言した。

「あの、それでどうなんでしょうか。」

「ん? ああ採用。」

「ありがとうございます!」

 僕はセーブ部屋で一息ついていた。死にかけだったアルカードが一気に息を吹き返す。別に彼の人柄がどうだろうと、机に直置きしたスプーンをみてどう思おうとどうだってよかった。ただなんか、人を見抜いた感じが欲しかっただけなんだ。だってどちらかといえば僕はふだん鈍感な方だから。

 僕はどんな状況だろうとコントローラーを決して手離さない。そんな次の方どうぞだった。

「次の方どうぞ。」

「失礼いたします。」

 真緑のゴーヤみたいな恐竜が部屋に入ってくる。しかも丁寧に喋れるときた。時には人間以外の人材が入った方がアイデアにも革新が起こるというものだ。しかし人の言葉を学びすぎて退屈な奴になっていないか? アルカードが螺旋階段をぴょんぴょん跳ねて渡っている。モニターに映るその動きを操作しているのは紛れもなくこの面接官たる私だった。6:4という意識配分ではあるが、そのていどではマルチタスク世代の操作精度は落ちようもなかった。

「ええ、大学ではですね」

「うん、採用。」

「ありがとうございます!」

 いいんだ。今はとりあえず数が必要だからな。人件費削減と叫ばれる世の中ではあるが、まあ逆のシチュエーションもあった方が夢見心地だろう。そんな会社を目指している。僕はメトロイドヴァニアもしているし、立派に社長もしていた。

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