碧眼の少年
申し訳ないです。結局中旬になってしまいました。
今回は結構短めです。
後半にある男の子の台詞を少し変えました。8.17
『あー! 起きたぁー! だいじょーぶ?』
「う、ん……」
『ねーねー! ねーねー! きみのお名前は~?』
ミー……もうちょっと静かにした方が……一応病み上がりみたいなものでしょ? その子。
「俺は……ルーヴェ」
『ルーヴェっていうの? じゃあルーだねっ! ルーとぼくのおなまえにてるー!!』
ルーヴェとミーヴァ、ね。
めっちゃ似てるじゃん。
え、なにこの子の親とミーに名前を付けた私ってセンスが似てるわけ?え?
なんかめっちゃ嫌なんですけど……。
「……お前は?」
私をお前呼びかよ。
もう一度、今度は私が呪いをかけてやろうか。
さっき消したから、あの型は理解したし。
人間の法律なんか知ったこっちゃないもんねー!
え、てかこれ私も名乗らなきゃいけないの? 嫌なんだけど?
人間に名乗るほど、私の名前は安くないんだけど?
『スイをお前ってよんじゃだめっ!』
「悪い……お前、スイっていうのか?」
……ミーさーん。
私の顔は今、引きつっていると思います。
『だからお前ってよんじゃだめなのー!』
「……悪い」
男の子は無表情で謝罪の言葉を告げる。
『ルー! ルーのくるしいやつね、スイがなおしてくれたんだよ!』
「そうか……スイ、ありがとな」
お前にスイと呼んでいいと許可した覚えはないんだけど?
てかこいつの顔が綺麗なのがむかつく!!
綺麗な黒髪は私から見て中央より右側でわけられていて、碧眼は海みたい。
『スイー? しゃべらないのー?』
人間相手にしゃべるわけないでしょ。
『スイ、おこってる?』
ええ、怒っていますとも。
そんな思いをこめてミーに向けてにこっと笑う。
『ごごごごごめん!! でも!! シェイルの愛し子をみつけたからゆるしてー!!』
「……え? だ、誰が?」
『ルーだよ! ぼく、あのこなかけてないもん!』
「え、ええ?! そ、そうだったの?!」
こいつが、シェイルの愛し子?
本来、人間は精霊とは話すことができない。
だけど、霊粉という精霊が作れる粉をかけてもらえれば話すことができる。
ただひとつ、”愛し子”を除いて。
愛し子。それは精霊が愛する子。
精霊が自然と守りたい、そう思う者。
そして精霊の”加護”をもらっている。
加護をもらっていると、精霊の力、いわゆる魔法をたくさん練習、訓練をしなくても最初からある程度多種多様に使えたり、変換できる魔力の量が多い者だ。
私は半分ドラゴンだから精霊と話せる。
まあ他の生き物とも話せるけど……。
なぜか人間だけ例外なんだよね。
かわいそ。
「……」
こいつがシェイルの愛し子、ねえ……。
シェイルは氷風の高位精霊。
高位精霊のなかには稀に二属性の精霊もいるんだよね。ややこしい……。
ミーが言うには、精霊同士は誰が誰の愛し子か見たらわかるらしい。
私はまったく分からないけれど。
精霊特有のものなのだろう。
他の精霊の愛し子には加護を与えられないから。
『スイ、なにルーの顔じーっとみてるのー?』
「んー? シェイルの愛し子が気になってねー」
「しぇいる? シェイルを知ってるのか?」
『知ってるよ~! ぼくねぼくね、シェイルとおともだちなんだぁ~!』
「シェイルと友達……?」
なんだその不信な目は。
しかも私に向かって!!
いやまあ私も人間に対してはなんでも疑うけど……。
『そうだよ! スイもね、シェイルのおともだちなんだよ! だからね、ぼくとスイもルーのおともだち!』
「友達? ミーとスイが? 俺の?」
え? 違いますけど?
ていうかミー! なんでそんなこと言うの?!
それにこいつ! なんで真に受けてるわけ?! 馬鹿なのか?!
いやまあミーは本気で言ってそうだけども!!
てか私の名前を呼んでいいとは言ってない!!
『うんっ! おともだち! おともだちってねったっくさんいっしょにあそんだり、あと~えっと、えっと……ずっといっしょにいるんだよっ!』
「ずっと、一緒?」
『そうだよ! ずーっと一緒なんだよ!』
「こいつ……スイは不満そうだが」
『え? スイ……嫌なの?』
不満だよ!嫌だよ!
『スイも、ルーとおともだちでしょ?』
ミーがこてん、と顔を傾ける。
ミーさん、どこでそんな技を覚えたんですか?
いや、でもそんなことで私が人間と友達になる訳が……。
『ちがうの?』
ミーの瞳に涙が浮かんだ。
「お友達です。私とルーもお友達です」
うわぁぁぁ!!
口が……勝手に……うぅっ。
「俺とスイも友達、なのか?」
うっ……。
「そ、うだよ?」
ああ、絶対今私の顔引きつってるな。
「友達……か。そうか……ありがとう。ミー、スイ」
「っ……!」
呆気にとられたような顔をした後、なぜかこいつは笑った。
……綺麗に。
全然気持ち悪くなくて。
自然と魅入るような笑みで。
……そうだった。すっかり忘れていた。
精霊の愛し子。
それは――
――優しく、心が綺麗な者。