1・記憶の混濁
ーバチッ
軽い音が鳴ったと思ったら、自分の手がじんじん、ピリピリする
衝撃で目をギュッと閉じるその瞬間膨大な記憶が流れ込んでくる。
僕はその記憶に飲み込まれて、倒れてしまった。
あぁ、今、何か手がかりを掴みかけてたのに
夢を見た。
不思議な物体が高い建物の間をすごい速さで通っている。そうだ、たしか不思議な物体は車で高い建物はビルだ。まるで誰かの記憶のような夢だ。
夢に出てくるこの人は高等学校というものに通って2年目、つまり17歳。記憶は物心ついてからそこまでしかない。性別は男で、両親は早々に事故で亡くなり親戚の家を盥回しにされていたようで、愛嬌をを駆使して親族と虐待などがあるような家庭になってはいなかったが、お金がなかったり歳をとって面倒を見きれなかったりと理由は様々だ。
そんな環境で育ったからか猫を被っていたので心の中は中々擦れていた。小中学まではしっかりやっていた勉強も、高校ではあまりやらなくなっていった。不思議なのは最後の記憶がない。というか思い出せない。考えを逸らされているように感じる。果たして死んだのか、生きているのか。
「レーーーー様、おーーーござーー」
いつものように、メイドが僕の事を起こしに来たようだ。
「おはよう。」
そのままいつものように目を覚ました。長い夢をみた。夢を見てる時は脳がずっと動いているから、あまりスッキリ起きられないと聞いたことがあるけど、それが嘘のように感じるほどいい目覚めだ。しかも、普段忘れる夢を今の夢はまるで元からあった記憶のように思い出せる。
「レオナルド様、お体加減如何ですか?」
普段はそんなこと聞かれないので少し困惑する。メイドは心配そうに様子を窺ってくる。
「別に普通だよ。どうしてそんな事を?」
「最後に何をしていたか、思い出せますか?」
最後にした事か、たしかあの謎のふわっとしたくっつく力のことが知りたくて調べてたんだよな。今はあれがただの静電気だと知っているが。さっき僕が作っていた瓶に金属箔を巻いたやつはコップに口をつけたらビリっとくるドッキリで使われるやつか。僕が自力で作ったそれはもしかしたら歴史に残るすごいものなのかもしれない。つまり、僕は「感電」の衝撃で気を失ったのか。
「レオナルド様?」
「あぁ、すまない。少し考えていた。ちゃんと思い出したから安心してくれ。」
「何日眠っていたかわかりますか?」
「聞くと言う事は1日じゃないのか。」
「えぇ、5日間お眠りなさっておりましたよ。」
五日間か。夢は記憶を整理するためにあると何かで知った気がする。つまり17年分の夢を整理していたのか。それは五日間の寝たままも理解できる。
「あと、ご主人夫妻が話をしたいと。」
「わかった。準備するから、着替えと湯を頼む。あと飲み物を。」
「かしこまりました。」
さぁ、親に呼ばれてしまった。今まで色々やらかしてるが、あまり叱られた事は無い。同じ親鳥から産まれた受精卵を等期間で一つ一つ割って中の成長を調べてみたり、いろんな動物を捕まえては腹を割いて血塗れで帰ってきたり、テコの原理を使って物がどこまで飛ぶか調べて離れの建物を壊してしまったりと、大分酷い事をしているかもしれない。寛大な両親に感謝だ。
先ほどメイドに呼ばれたように僕の名前はレオナルドだ。家名はモルティア、所謂貴族だ。家族は、父、母、そして妹。妹と僕は3歳離れていて、僕が8歳、妹が5歳だ。父はライナルディ、母はマイラティ、妹はレティシア。
父は頭が良く、知識が豊富だがそれ以上に新しい発想や心身掌握術に長けている。自身の武芸はそこまででも無いが、人を指揮する力や作戦などを立てるのが上手い。所謂参謀タイプだ。切れ長の緑の目に金髪より濃いがやわらかいカフェオレのような色の真っ直ぐな髪をしている。一見堅物にしか見えないが、真面目なだけである。滅多に笑わないのがそのような印象を持たせているのだが。
母もこれまた心身掌握に長けている。父にはこの人についていきたいと感じ仕える者が多いが、母には支えたい、この人のためなら文字通り身も心も捧げてしまえる、狂ってしまうような者が多い。母はそれを理解して操っているから侮れない。愛嬌で相手を破産させることができる人だ。プラチナブロンドの緩くカールがかかっている髪に色素の薄いブルーの目。優しい目の形に鼻筋は通っているが小さい鼻、そして可愛らしい形の唇。愛嬌のある顔だ。
妹は5歳と信じられないほどしっかりしている。父に似たのだろう。まだ表情豊かでしっかり笑うが成長するとどうなるか。髪も目も父と同じ色で、髪が直毛なのも切れ長の目も父そっくりだ。僕は父と同じ髪と目の色で髪や目の形は母に似ている。骨格は普通に男なので今まで性別を間違われた事は無いが。考え込む癖があるので、ぼんやりしていると言われることが多い。もしかしたら表情も乏しいかもしれない。
この国での貴族の家格は上からクワロ、パミル、パイル、カミル、カイル、ナミル、ナイル、ライル、ラミル、バイン。王家はこの世界ではクウォントと呼ばれ、クワロは王家から出てただの貴族になった三男や四男がなる。つまり叔父などの養子になるって事だ。バインは一代だけの貴族だ。他の家格は説明すると大変なので、また機会があったらで。
ちなみに我が家はカミルだ。なので僕の正式な名前はレオナルド・カミル・モルティアで、家格が間に入ることになる。日本だとどう言えばいいかわからないが、ただの男子高校生が西洋の貴族のことについて詳しく知っているわけでも無いので、致し方ない。
そしてこの世界には魔法が存在する。属性は火、水、風、土、光、闇の六種類だ。この世界の住民は差はあれど誰しもが魔力を持っている。が、属性が使えるのはその力が『開花』したものだけで、その他の者は祈りを捧げるくらいしか使い方はない。
魔石と言うものや魔道具なんかもある。隣の国では研究が盛んらしいがこの国だと攻撃魔法の研究ばかりされている。軍国主義なので致し方ない事もあるが。光と闇の属性は本当に希少で大体の人が自然四属性の、火や水、風や土属性だ。僕はまだ開花してないが選べるとしたら土属性がいい。土属性は錬金術と相性が良いからだ。
謎の記憶は僕に新しい常識を与えてくれた。このまま電気を研究するにあたって金属の研究は必ず通る道だろう。やりたいことができた。心は信じられないほど好奇心と期待に満ちている。
小説を始めて書くので何かお見苦しい点があったら申し訳ありません。もっともっと精進してまいりますのでどうか私の世界を楽しんでください。
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