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出会い




プレイヤーでできた壁の中に生まれた俺はもみくちゃにされ、壁の中心へ押し流されている。全員が何かを喋っているので非常にうるさい。




「ッすみません!通してください!」




騒いでいる奴らの中でも、一際大きな声が耳元で聞こえたかと思うと、急に壁が割れた。




人の波に運ばれていた俺は、人が分かれるとポイッとでもいうように放り出され、道に思いっ切り腰を打ち付けた。




「ッ痛ッッたぁ!!」




ゲームなので痛みは軽減されているが、思っていたより痛くて思わず腰を抑えてうずくまってしまう。




「大丈夫ですか?」




うずくまっていると、さっきの大きな声と同じ声が話しかけてきた。




彼は翡翠のような翠の眼に、墨につけたように真っ黒の髪を後頭部のあたりでくくり、黒い和服を着ていた。


こいつ!このゲームのPVで使われてたやつじゃないか!!PvPで準優勝だったヤツだ!




「ッ、はい。まあ…大丈夫です。思ってたより痛くて驚いただけですし。」




「すみません。私がなんの対策もせずにここに来てしまったのが問題で…。…見たところ初心者の槍士の方のようですし、詫びになるかは分かりませんが、一応これを。」




ピロンッ♪という音と共に、トレードの画面が表れる。


内容はハイポーションが10本に取得経験値上昇の腕輪。


こけただけの、しかも初心者に渡すにはかなり不相応なものだ。


お人好し過ぎないかこいつ…


チラッと周囲を見ると、少し話しただけなのにさっきまで彼を囲んでいた連中がハンカチでも嚙みそうなすごい顔をしている。


でも、このゲームである程度自由に初心者が行動するためにはトッププレイヤーとの繋がりが少しでもあったほうがいいか。


他のやつらの嫉妬なんかはあるかも知れないが、メリットのほうが大きいな…




「こんないいもの、わざわざ有難うございます。でも、あの、いいんですか?俺はただこけただけですよ?HPが減ったわけでもないですし。」




「いいんです。そこまで使うものでもないですし、Lv差が大きいので街の中でなければきっと大けがしてしまっていたでしょうし。」




彼は優しそうではあるが有無を言わせないような笑顔で言う。




「そういえば自己紹介もしていませんでしたね。私はライと言います。あなたの名前を聞いても?」




「俺はレイです。」




「レイ、ですね。覚えておきます。…すみません。これから用事があるのでこれで。本当に申し訳なかったです。」




チラッと周囲をかくにんしたあと、彼はそう言って丁度数秒前に現れた、新たなプレイヤーの壁を作っている集団のほうへ向かい、人に紛れて見えなくなった。












_______________________________________________












???視点


始まりの町ベンナから遠く離れた森。

巨大な木々の間に出来た広場、その中心には倒れ伏したキマイラと恐らくソレを倒したであろう青年がいた。


「丁度あのタイミングでベンナに彼等が行っていたとはいえ、まさかアレに会うとか。運がいいのか悪いのか。まあ顔を彼等に知ってもらうにはいい機会だったかもしれないけれど…ま、トップと会ってレイが動きやすくなるなら大丈夫か。マズそうならこっちで何とかすればいいしね。」


キマイラの死体をテキパキと解体しながら、彼は先ほど起こったベンナでのちょっとしたイベントについて思いをはせる。


その時急に



-------=====⋘ワールドアナウンス⋙=====-------


メインストーリー第一章に必要なプレイヤー全員の参加が確認されました。


これにより、メインストーリーが進行します。


《転生》システムが解放されました。


〚ナイアヴェルト大陸〛への道が開けました。


-------==========================-------


という放送が全プレイヤーの頭に流れた。


彼はいきなりのことに驚いたように呟く。


「…これはちょっと早すぎないかなぁ。もうちょっとレイのレベルが上がってからのほうがいいと思うんだけど…彼らの考えてることは分からないな。…でも、私は暫くはこのままで良さそうかな。」


彼は少し考えるように手を止めたが、またキマイラの解体に集中し始めた。



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