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「やっぱりお母さんが作るオムライスは絶品だね! 幸せの味って感じがする!」
もぐもぐと口一杯に頬張りながら笑みを浮かべるユイ。その頬にはケチャップが付いている。しかし、本人はそれに気づくことなくまた一口と頬張った。
その隣の席に座るユカリは美しい所作でオムライスを口に運んだ。その後、隣を確認しハンカチで彼女の頬を拭う。その姿は面倒見の良い姉そのものだった。
「ついてた? ありがとう!」
突然頬に触れられたユイは驚きながらもスプーンを置いて御礼を告げた。
「あら、嬉しいわ。ところで棚に置いてあったティーセットは誰のかしら?」
「私じゃないよ?」
「私でもないわ」
「可笑しいわね。間違えて買ったのかしら。でも何かあったら怖いし捨てましょうか」
「うん。それがいいよ」
彼女らは皆覚えていなかった。
それがもう1人の家族のものだと。
彼女らは皆幸せだった。
何も知らないから。




