玖
「愛しているわ」
そう誓ったあの日。左手にはめられた今もなお輝きを保つ指輪。それをそっと指から外してポケットの中に仕舞い込む。ニコリと笑みを浮かべて何も知らないフリ。
目の前にいるのは誓い合った男なんてそんな甘い話あるわけがない。
悪魔が天使と恋をするなんて初めから無理だったのよ。何もかもうまくいかなくて、始めは幸せだったはずなのに。
……だから諦めた。
彼と似た男性に会って浮気して。
でも、私は本当に彼のことを愛していたの。
だからこそ、諦められなくて。
そんな時、ふと考えが浮かんだ。
何度も何度も上手くいくまでやり直す。そうすればきっと、いつかは幸せになれるって。
両手を重ね、ぎゅっと握りしめた。
視界が赤色に染まる。
前々回なんて悪い結末を迎えた以外覚えていない。それよりも前なんてもっと覚えていない。でも前回は後少しだった。後少しのところで失敗に終わった。キーポイントになるのは、やはりアユカ。それに、3人一緒じゃなきゃこの結末は幸せにはならない。
前回は結局仲直りできずに終わってしまったからアユカは彼をここには呼んでくれなかった。なら、仲直りさせたらいいのよ。
その為なら私は何度だって……。
そして、私は巻き戻る。
次の自分へバトンを繋ぐために。