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漆
「ユカリやっぱり私、このキョウキ停止させるよ」
口元を拭おうと手を掛けたユイの手を阻止しユカリは告げた。
「アユカがどうなってもいいの?」
「それは……でも」
「うるさいな」
ユカリは喉元にナイフを当てがうかのように鋭い言葉を投げつけた。戸惑うユイを逃さないように。
「それなら停止させる前に無くせばいい」
「え……?」
ユカリは欲しい言葉を貰うまで引かないつもりのようだ。しかし、その言葉は一向に貰えない。けれどそれ以上に、それに気付かないほど馬鹿ではない。
「大した力を持たないのに洗脳されるということは少なからず母さんもアユカのことを恨んでたってこと」
つまりと眼帯を外してユイを見つめた。
「私は悪くない」
「これでやっと……!」
恍惚とした表情を浮かべても、その姿を確認するものは誰もいないのだった。