陸
「ごめん、2人とも久しぶり。委員会で忙しくて……」タッタッタとリズム良く此方に近寄るユカリは私の姉だ。しかし、私はそんな彼女が嫌いだ。
「大変だね……! お疲れ様」
「それだけじゃない癖に」
「ごめんねユカリ。深い意味はないからね……!ただ寂しかったみたいで。ほら、ユカリ委員会に所属したせいか、交友関係が広がったでしょ? 私たちと一緒にいる時間も減っていったからそれで……!」必死になって誤解を解こうとするのも私の姉。アユカだ。彼女のことは好きだ。優しくて頼りになって何よりずっと私のそばにいてくれる。
「そんなことより行こう。アユカ」
アユカの手を無理矢理引っ張りユイの元から一刻も早く離れようと早足にその場から立ち去った。(ユカリなんて見ないで。ユカリなんて気にしないで。ユカリなんて、ユカリなんて……!)
「……ユイ」
私の髪をそっと撫で戻ろうと促すアユカ。
(嫌だ嫌だ、アユカ……アユカ……!)
「お願いだから笑いかけないで!!」
「あんな顔しないで、本当にお願いだから……!」
「……分かった」
私の必死さが伝わったのかアユカはただ一言そう言った。しかし、アユカは私の元から立ち去って行った。
(アユカ……?)
「どうして……全て頑張ってきたのに。母さんが愛してくれなかったからこそ」
壁を叩きその場にズルズルと座り込む。
手は赤く染まっているが、それ以上に心が赤く黒く染まっていた。
「それなのに……! 姉にまで嫌われるなんて」
「全部全部、あの女が悪い!」
廊下にはただ一つ私の声だけが響いた。
「母さんに愛されて、それだけじゃなく姉にも愛されて……」
(羨ましい……憎い……あの女が……!)