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生贄少女の醒めない幸福な夢  作者: ばあむ。
13/25

4人で館内を歩き回る事数時間。

アヤミの顔に疲れが見え始めていた。

本人もそれには気づいていたようで三人にそっと声をかける。


「お母さん、疲れちゃったからちょっと休んでも良いかしら? 皆は先に回っていて?」

近くのベンチを指差し申し訳なさそうにするアヤミだが、ユカリは直ぐに全員の休憩を促した。それに対し、ユイはとても残念そうな表情を浮かべる。とぼとぼと効果音が聞こえてきそうな足取りにもそれは表れていた。


「いいのよ。皆は回っていて? 折角来たんだから勿体無いでしょう?」

ユイはまだまだ回りたそうだしねとユカリの背を押し、ベンチの方から遠ざけると今度はユカリが不服そうな顔をしたが、渋々頷いた。


「母さんがそう言うならそうするけど……」

そうして、ユイの隣に並ぶユカリ。それと入れ替わるようにアユカはベンチの方へと進む。


「ほら、アユカも行きなさい」

しかし、アユカはアヤミの言葉を無視し、隣に座り込む。

「私も疲れたから休む」


「えー!? 此処からがアユカを楽しませる時間なのに!?」

先程同様浮かない顔になるユイだったが、それでもアユカは立ち上がらなかった。


「ごめん。でも疲れたから」

「そっか……」


「10分。10分したら合流しにいくよ」

腕時計を2人の方に向け10分後の針の位置に指を落とす。


「じゃあ10分後、この出たところ直ぐのところで待ち合わせね! それまでにアユカを楽しませるぞプラン立てておくね! そうと決まれば早く行こうユカリ!」

調子を戻したユイは、はいはいと少々面倒くさそうな返事をしたユカリの腕を引っ張り暗闇の方へと姿を消していった。




「……疲れたの?」

アヤミがアユカに首を傾げながら尋ねた。ベンチに座っているのは2人以外誰もいない。静かな空間が続く中、アユカは数テンポ遅れて返事をした。

「まあ」


その後、会話はなく10分経ったところでアユカは立ち上がる。


「それじゃあ」

それだけ呟いてアユカも暗闇の方へと姿を消した。


それから数秒歩くと出口というなの入口に到着した。初めの方こそ、あまりの眩しさに目も開けられずにいたが、暫く時間が経つと目も慣れたようで視界が明るくなる。

あたりを見回すとそこにユカリを見つけた。


「あれ、ユイは」

「なんかアユカに向けてプレゼントを選んでるみたいよ?」

壁に背をつけ、お土産コーナーの方を見つめるユカリ。その視線を追う事なくアユカはただただユカリを見つめていた。


「そう」

「あら? 冷たいのね」



「あのさ、お母さんが失言してたけど」


世間話なんて一切無しで直球で畳みかけるアユカにユカリは驚きもせずに笑みを浮かべる。まるで、予想通りとでも言いたげに。



「失言? ふーん。それじゃあね」

さよならの合図を最後にアユカは目を閉じてその時を待った。



「やっぱりね……」


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