肆
まだ私たちの仲が良かったころ、私は今みたいに明るくなくて、どちらかと言えば今のアユカみたいにあまり喋らないタイプだった。
そんな私に対してアユカとユカリはいつも話しかけてくれて学校で友達が出来なくても2人がいてくれたから……。だから、友達なんていらないと思っていた。しかし、現実はそう甘くなく、2人は誰にでも好かれるような人気者になって私の手の届かない存在になっていった。
そんな中、立ち止まってアユカは私に微笑んだ。「ユカリ、人気者になっちゃったね」
「アユカもね。だから……私のことなんて放っておいて」(妬ましかった。確かに2人は私より明るくて可愛くて。でも、私だって本当は……!)
「放っておけないよ! 勘違いしてるみたいだけどさ、私が一緒にいたいんだもん」私の手をぎゅっと握って離さないでいてくれたアユカに私は心まで掴まれた。アユカは私のことをしっかり見てくれる、離さないでいてくれると。
それからアユカの好きなものは全て把握して、アユカが喜ぶことは何だってやった。女優だって、そう。アユカが好きだって言ったから。ただそれだけのために。それなのにどうして、こんなにも歯車は狂ってしまったのだろう。