茂夫の言い分13
しめたって、そ
のとき思ったね。だってよ、女ナンパできるんだぜ。これで!・ なんて思って金はらって英ちゃんをお
んぶしてそのままキャバレー入ったんだよ。一〇分間寝たのち英ちゃんゆっくり起き上がって、
「ここは?」
「キャバレーですよ。英太君」
「キャバレー? なんでぼくがこんな所にいるんだ!・ えっ? なぜなんだ」
「英太君はわけあって、ぼくがここへ連れて來たんです」
「ぼくが?」
「そうです。そのわけは後で話しますから、どうかここから出ないで下さい。お願いしますよ」
「…………」
英ちゃんだまってうなずいてくれた。さびしそうに、やっぱりこういうことしていいのかなあって、
俺、このときつくづく思ったね。そうしているうちに俺は、後悔の涙が出てきちまいやかってボロボロ
泣いちまったよ。我ながらいつも、英ちゃんの前で泣いてばっかりで女みてえだなあ、なんて思ってた
ら、横合いからキャバレーの女が英ちゃんの前によって栗で口々に
「キャーカッコイイー
「私のタイプだわ」
「さっ、あたしと飲まない?」
なんてもてちゃって……俺は横から、
「英ちゃんさ、わけはもういい事になったんです。さあ帰りましよ。英ちゃん好きじゃないでしよ、こ
ういう店」
女たちが、
「まっ、こういう店とは何よ。くやしかったらどんどん頼みなさいよビールをさあ」
なんて酔っ払った女がぬかしやがる。俺も頭に來て、
「頼もうじゃねえか! 今日は陽気にやるために來たんだぜ。それをおまえみたいな女に用はねえんだよ!」
女は、
「そうかい。それじゃ私たちの分とそれからビール一箱一ダースね!」
なんて頼みやがるこの女、俺を飲めねえと思ってるなんて思ってむかついて、
1ケース !飲んでやるからな!・」
って英ちゃんに同意求